君がいるこの場所へ(ムウマリュ)
ムウと出会う何年も前。まだ軍に入って間もないマリューには、最愛の人がいた。
モビルアーマー乗りの彼は、若さ故に恐い物知らずなところがあって。いつも戦場に出るたびにマリューはやきもきしていたが、それでも出がけに必ず
「行ってくるよ」
と笑顔を残して出撃し、同じ笑顔で
「ただいま」
と帰ってくる日が続いていたため、いつしかそんな生活にも慣れ始めていた。
だが戦場とは、そんな甘い場所ではない。
ある日突然彼の笑顔は消滅した。彼のモビルアーマーが撃墜された、という通信と共に。
しかしマリューは、すぐにそれを信じはしなかった。もしかしたらどこかで怪我をして、帰ってこられないだけかも知れない。何か事情があって、連絡が取れないだけかも知れない。
そんな淡い期待を抱きながら彼の帰りを待ち続けている最中、突きつけられたのは『MIA』の文字。
「行ってくるよ」
が
「ただいま」
よりも一つ多いまま、止まってしまった彼との時間。軍に入ることで、いつその命を失うことになっても仕方がない、と言っていたのは、口先だけだったのだとその身で知ることとなる。
あの日以来、マリューは想う事も期待をすることもやめようと誓った。過去を振り返ることはやめられなくても、新たな想いを生まないようにする事はできるはず。これ以上悲しみを増やすことなどしたくはない。大切な物を増やさなければ、それだけ悲しみに遭遇する確率は減っていくから。
もちろん心の底から愛していた彼のことを、忘れる気は毛頭ない。だからこそ、その誓いを常に忘れないためにも、ロケットを常に身に付けていた。
そのはずだったのに――。
「また……同じ事を繰り返してる……」
出会ってしまったことが不幸だとは思わない。むしろ彼に出会えたことは幸運だった。
あと少し。あとほんの少し生き長らえてくれていれば、二人で手を取り合って終戦を喜ぶことが出来たかも知れないのに。
ムウもまた、「行ってくるよ」という言葉を一つ多く残したまま、時を止めてしまうのか。
窓の外では、既に捜索活動が開始されている。艦長席から見える場所には、ストライクルージュの姿もあった。色は違えど、見慣れたその姿に思わず呟いてしまう。尋ねてみたところで、答えなど返っては来ないけれど。
「貴方なら大丈夫だと思った私が、馬鹿なのかしら……?」
ふと、ロケットを握りしめていたことを思い出し、手の中を見る。開いて中を見れば、そこには笑顔のムウの写真があった。
「頭では分かってる……でも……やっぱり諦めきれない……」
マリューはそっと、ムウの写真に口付けた。
「ムウ……お願いだから生きていて……!!」
モビルアーマー乗りの彼は、若さ故に恐い物知らずなところがあって。いつも戦場に出るたびにマリューはやきもきしていたが、それでも出がけに必ず
「行ってくるよ」
と笑顔を残して出撃し、同じ笑顔で
「ただいま」
と帰ってくる日が続いていたため、いつしかそんな生活にも慣れ始めていた。
だが戦場とは、そんな甘い場所ではない。
ある日突然彼の笑顔は消滅した。彼のモビルアーマーが撃墜された、という通信と共に。
しかしマリューは、すぐにそれを信じはしなかった。もしかしたらどこかで怪我をして、帰ってこられないだけかも知れない。何か事情があって、連絡が取れないだけかも知れない。
そんな淡い期待を抱きながら彼の帰りを待ち続けている最中、突きつけられたのは『MIA』の文字。
「行ってくるよ」
が
「ただいま」
よりも一つ多いまま、止まってしまった彼との時間。軍に入ることで、いつその命を失うことになっても仕方がない、と言っていたのは、口先だけだったのだとその身で知ることとなる。
あの日以来、マリューは想う事も期待をすることもやめようと誓った。過去を振り返ることはやめられなくても、新たな想いを生まないようにする事はできるはず。これ以上悲しみを増やすことなどしたくはない。大切な物を増やさなければ、それだけ悲しみに遭遇する確率は減っていくから。
もちろん心の底から愛していた彼のことを、忘れる気は毛頭ない。だからこそ、その誓いを常に忘れないためにも、ロケットを常に身に付けていた。
そのはずだったのに――。
「また……同じ事を繰り返してる……」
出会ってしまったことが不幸だとは思わない。むしろ彼に出会えたことは幸運だった。
あと少し。あとほんの少し生き長らえてくれていれば、二人で手を取り合って終戦を喜ぶことが出来たかも知れないのに。
ムウもまた、「行ってくるよ」という言葉を一つ多く残したまま、時を止めてしまうのか。
窓の外では、既に捜索活動が開始されている。艦長席から見える場所には、ストライクルージュの姿もあった。色は違えど、見慣れたその姿に思わず呟いてしまう。尋ねてみたところで、答えなど返っては来ないけれど。
「貴方なら大丈夫だと思った私が、馬鹿なのかしら……?」
ふと、ロケットを握りしめていたことを思い出し、手の中を見る。開いて中を見れば、そこには笑顔のムウの写真があった。
「頭では分かってる……でも……やっぱり諦めきれない……」
マリューはそっと、ムウの写真に口付けた。
「ムウ……お願いだから生きていて……!!」