君がいるこの場所へ(ムウマリュ)

『捜索隊を結成します』

 ムウの死と、戦争終結というこの状況に放心状態だったマリューにそう声をかけたのは、モニター越しのキラだった。

「え……?」
『もう戦いは終わったんです。この戦闘区域には怪我人はもちろん、消息不明の人たちがたくさんいます。捜索が早ければ早いほど、助かる人も増えるはずです』
「……」

 マリューの答えはなかった。力のない瞳からは、彼女が一体何を考えているのかを読むことも出来ない。

『マリューさん、しっかりして下さい! ムウさんを捜しに行きましょう!』
「ムウ、を……?」

 【ムウ】の言葉にぴくりと反応を見せるマリュー。虚ろな眼差しを、ゆっくりとキラの映っているモニターに移動したマリューは、しばしの間キラを見つめていた。

「ムウ……」

 再び呟いたその名と共に、ハッ、と笑いが漏れる。

「見つかるはず無いじゃない。ムウはもう……」




 目の前でその姿を消したあの人。

 自信過剰で。
 デリカシーが無くて。
 いつもちゃらけたお調子者で。

 ――でも。

 いつだって気配りを忘れないで。
 自分のことを見守ってくれていて。

 

 愛してくれていて。



 触れる度に、強くなれた。
 触れられる度に、弱くなれた。
 貴方がいなければ、きっと今の私はない。
 貴方がいたから、私は私でいられたのだから。




「ムウはもう……いないんだから……っ!」

 キラに向かって、マリューは怒鳴った。だが、キラも負けてはいない。

『どうしてすぐに諦めてしまうんですか! 貴女が諦めたら見つかる物も見つからない。あれでもストライクは頑丈です。もしかしたら緊急シャッターが……』
「対戦艦用の砲撃を受けてるのよ! たとえシャッターが下りていても助かるはずないじゃない!」
『でもムウさんなら不可能を可能に……』
「もうやめてっ!!」

 突然マリューが頭を抱え込み、叫んだ。

「もうやめてっ! それ以上言わないで!!」
『マリューさん……』
「嫌なの……私に期待を持たせないで! お願いだから……」
『……』

 再び、涙。大粒の涙は、ぽろぽろと止めどなく溢れてくる。
 いつの間にかマリューの手の中には、いつも肌身離さず身につけている、ロケットペンダントが握られていた。

「私……また……」
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