桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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お腹が膨れて一息つくと、待ちに待った子供達の時間が訪れる。
「はい、サラにはこれね」
シルフィアから手渡された小さな箱を、目を輝かせながら受け取るサラ。勢いよく包装紙が破られ、蓋を外すと中から出てきたのはーー。
「うっわ~! これ欲しかったの~~!」
新品のホルスターと1冊の絵本。
しかもどう見ても、サラにとって絵本はおまけだった。その証拠にサラは絵本を持ち上げはした物の、すぐにホルスターに持ち替えてはしゃいでいる。
喜び方には雲泥の差があった。
何だかな……と思いながらふと視線をシルフィアに向けると、肩を落としてがっくりとしている。どうやらあの絵本は、少しでも娘が女らしさに目覚めて欲しいという母の想いが込められていたらしい。
だがそんな想いは、サラには全く届いていないようだった。
しばしはしゃいでいたサラが、今度はアスランのプレゼントに目を向ける。
「ねぇねぇ、アスランのプレゼントは何?」
レノアから渡された箱は、小さいながらもずっしりとした重量感があった。
「早く早く。開けて見せてよ~」
まるで自分へのプレゼントかのように、サラは期待に目を輝かせている。
「分かったからちょっと待てよ」と言いながらアスランが箱を開けると、中には透明のガラスのような物が入っていた。
「これ……スノーボールだね」
ゆっくりと取り出しながら、アスランが嬉しそうに言った。
丸いガラスの中には、ツリーを模した小さな木。
そして、雪。
軽く振ると、優しく降り積もる雪が木を白く染め上げていく。この小さな空間に閉じこめられているのは、とても幻想的で美しい世界だった。
「ありがとうございます、母上」
レノアに笑顔を向け、再び吸い寄せられるようにスノーボールに見入る。ふわふわと舞い落ちる雪は、アスランの心を魅了していた。
その姿を母達は嬉しそうに見ていたのだが、ふとシルフィアが異変に気付いた。
「サラ?」
我が子の名を呼ぶ。先ほどまではとても賑やかにはしゃいでいたはずのサラが、やけに静かだったから。
サラの視線の先には、アスランの手の中のスノーボールがあった。
「どうしたのよ? サラ」
「サラ?」
シルフィアの呼びかけに、アスランも首を傾げながら声を重ねる。その場にいた全員の視線を一斉に浴びながらも、サラの視線が揺らぐことはない。ただひたすらに、スノーボールを見つめていた。
「おい、サラってば……どうしたんだよ?」
「……い……」
アスランが詰め寄り、少し強い口調で声をかけると、小さな声が聞こえた。
「え? 何?」
「聞き取れないよ」と耳を近付けると、囁くような小さな声が再び聞こえる。
「……しい……」
「しい?」
「私も……欲しい!」
「え!?」
アスランが驚きの声をあげたときにはもう、サラはシルフィアの目の前にいた。
驚くほど素早い動きに、呆気にとられてしまう。
「母さん! 私もあれ欲しい!」
「えぇ!? あれって、スノーボール?」
「うん、そう!」
「そう言われても、あれはアスラン君のクリスマスプレゼントでしょ? サラにはちゃんとプレゼントをあげたじゃない」
「でも……あれが欲しいの!」
「サラ。我が儘言わないの」
「お願い! ねぇ、母さん!」
「サラ……」
詰め寄ってくる娘に、シルフィアは戸惑いを隠せなかった。
かつて一度もサラは、我が儘を言ったことがない。何かを欲しいと口にすることはあっても、こんな風に詰め寄ってくることなどなかったのだ。
それがどうだろう。こんなにも必死になって、周りを困らせるほどに駄々をこねている。この姿には、シルフィアはもちろんのこと、アスランもレノアも驚きを隠せなかった。
「サラ……それじゃ、プレゼントの交換をする?」
あまりに凄い剣幕にしばし呆気にとられていたアスランだったが、気を取り直すと、自らスノーボールを差し出して言った。
「俺のプレゼントとサラのプレゼントを交換すれば……」
「駄目っ!」
だが間髪入れず否定される。
「交換したんじゃ駄目なの。私は私で必要なの! だから……」
「サラ……」
シルフィアの服を掴みながら必死に駄々をこねるサラの姿に、シルフィアは何かを察したようだ。その視線はレノアへと向けられ、お互い小さく頷く。
アスランの見えないところで、大人の会話は紡がれていた。
「サラ」
ビクリ。
サラの体が揺れたのが分かった。その原因は、声。
アスランが初めて聞く、とても冷たく厳しい声は、シルフィアの物だった。
「貴女の気持ちは分かるけれど、我が儘はいけないわ。……分かるわね?」
「でも……」
「良い子だから、ね?」
「……」
シルフィアはしゃがみ込むと、そっとサラを抱きしめた。
だから、見えない。
サラの視界から消えたシルフィアの顔に、苦悩の表情があったことを。
サラがどうしてこんな風に駄々をこねたのか、イヤと言うほど分かっているというのに。こんな簡単な望みを叶えてやることすらできない自分が、情けなかった。
「もう、時間なの」
最後のこの言葉は、サラの耳元で小さく囁かれた。もちろんアスランには欠片も聞こえない、小さな声。
その言葉で、サラは悟った。初めての我が儘が、決して叶えられないことを。
「は……い……」
ゆっくりとシルフィアから離れたサラはもう、完全に落ち着きを取り戻していた。
「ごめんなさい……」
謝りの言葉からも、それを感じられる。だがその落ち着きが、サラの諦めだったと言うことにアスランが気付いたのは、もう少し先のことだった。
「アスラン、ちょっと頼まれてくれるかしら?」
突然レノアに言われ、サラの取り乱しように唖然としているしかなかったアスランは、はっと意識を取り戻した。
「何ですか? 母上」
「2階のお茶室の入り口に、小さな包みを置いているの。それを取ってきてくれる?」
「え? はい」
何故急こんな事を頼まれたのかは分からなかったが、それに逆らうことは許されないような気がして。
先ほどの取り乱しようから心配になり、1秒たりともサラから目を離したくはないと思っていたものの、それでもしぶしぶとアスランは2階に向かった。
ただ荷物を取ってくるだけならすぐだから。そう思って。
アスランにしては珍しく、ドタドタと足音を立てて駆け上がる。いつものレノアなら、こんな音を聞いた瞬間に「静かにしなさい!」と叫ぶはずなのに。
自分に向けられない声が、不安をかき立てていた。
「はい、サラにはこれね」
シルフィアから手渡された小さな箱を、目を輝かせながら受け取るサラ。勢いよく包装紙が破られ、蓋を外すと中から出てきたのはーー。
「うっわ~! これ欲しかったの~~!」
新品のホルスターと1冊の絵本。
しかもどう見ても、サラにとって絵本はおまけだった。その証拠にサラは絵本を持ち上げはした物の、すぐにホルスターに持ち替えてはしゃいでいる。
喜び方には雲泥の差があった。
何だかな……と思いながらふと視線をシルフィアに向けると、肩を落としてがっくりとしている。どうやらあの絵本は、少しでも娘が女らしさに目覚めて欲しいという母の想いが込められていたらしい。
だがそんな想いは、サラには全く届いていないようだった。
しばしはしゃいでいたサラが、今度はアスランのプレゼントに目を向ける。
「ねぇねぇ、アスランのプレゼントは何?」
レノアから渡された箱は、小さいながらもずっしりとした重量感があった。
「早く早く。開けて見せてよ~」
まるで自分へのプレゼントかのように、サラは期待に目を輝かせている。
「分かったからちょっと待てよ」と言いながらアスランが箱を開けると、中には透明のガラスのような物が入っていた。
「これ……スノーボールだね」
ゆっくりと取り出しながら、アスランが嬉しそうに言った。
丸いガラスの中には、ツリーを模した小さな木。
そして、雪。
軽く振ると、優しく降り積もる雪が木を白く染め上げていく。この小さな空間に閉じこめられているのは、とても幻想的で美しい世界だった。
「ありがとうございます、母上」
レノアに笑顔を向け、再び吸い寄せられるようにスノーボールに見入る。ふわふわと舞い落ちる雪は、アスランの心を魅了していた。
その姿を母達は嬉しそうに見ていたのだが、ふとシルフィアが異変に気付いた。
「サラ?」
我が子の名を呼ぶ。先ほどまではとても賑やかにはしゃいでいたはずのサラが、やけに静かだったから。
サラの視線の先には、アスランの手の中のスノーボールがあった。
「どうしたのよ? サラ」
「サラ?」
シルフィアの呼びかけに、アスランも首を傾げながら声を重ねる。その場にいた全員の視線を一斉に浴びながらも、サラの視線が揺らぐことはない。ただひたすらに、スノーボールを見つめていた。
「おい、サラってば……どうしたんだよ?」
「……い……」
アスランが詰め寄り、少し強い口調で声をかけると、小さな声が聞こえた。
「え? 何?」
「聞き取れないよ」と耳を近付けると、囁くような小さな声が再び聞こえる。
「……しい……」
「しい?」
「私も……欲しい!」
「え!?」
アスランが驚きの声をあげたときにはもう、サラはシルフィアの目の前にいた。
驚くほど素早い動きに、呆気にとられてしまう。
「母さん! 私もあれ欲しい!」
「えぇ!? あれって、スノーボール?」
「うん、そう!」
「そう言われても、あれはアスラン君のクリスマスプレゼントでしょ? サラにはちゃんとプレゼントをあげたじゃない」
「でも……あれが欲しいの!」
「サラ。我が儘言わないの」
「お願い! ねぇ、母さん!」
「サラ……」
詰め寄ってくる娘に、シルフィアは戸惑いを隠せなかった。
かつて一度もサラは、我が儘を言ったことがない。何かを欲しいと口にすることはあっても、こんな風に詰め寄ってくることなどなかったのだ。
それがどうだろう。こんなにも必死になって、周りを困らせるほどに駄々をこねている。この姿には、シルフィアはもちろんのこと、アスランもレノアも驚きを隠せなかった。
「サラ……それじゃ、プレゼントの交換をする?」
あまりに凄い剣幕にしばし呆気にとられていたアスランだったが、気を取り直すと、自らスノーボールを差し出して言った。
「俺のプレゼントとサラのプレゼントを交換すれば……」
「駄目っ!」
だが間髪入れず否定される。
「交換したんじゃ駄目なの。私は私で必要なの! だから……」
「サラ……」
シルフィアの服を掴みながら必死に駄々をこねるサラの姿に、シルフィアは何かを察したようだ。その視線はレノアへと向けられ、お互い小さく頷く。
アスランの見えないところで、大人の会話は紡がれていた。
「サラ」
ビクリ。
サラの体が揺れたのが分かった。その原因は、声。
アスランが初めて聞く、とても冷たく厳しい声は、シルフィアの物だった。
「貴女の気持ちは分かるけれど、我が儘はいけないわ。……分かるわね?」
「でも……」
「良い子だから、ね?」
「……」
シルフィアはしゃがみ込むと、そっとサラを抱きしめた。
だから、見えない。
サラの視界から消えたシルフィアの顔に、苦悩の表情があったことを。
サラがどうしてこんな風に駄々をこねたのか、イヤと言うほど分かっているというのに。こんな簡単な望みを叶えてやることすらできない自分が、情けなかった。
「もう、時間なの」
最後のこの言葉は、サラの耳元で小さく囁かれた。もちろんアスランには欠片も聞こえない、小さな声。
その言葉で、サラは悟った。初めての我が儘が、決して叶えられないことを。
「は……い……」
ゆっくりとシルフィアから離れたサラはもう、完全に落ち着きを取り戻していた。
「ごめんなさい……」
謝りの言葉からも、それを感じられる。だがその落ち着きが、サラの諦めだったと言うことにアスランが気付いたのは、もう少し先のことだった。
「アスラン、ちょっと頼まれてくれるかしら?」
突然レノアに言われ、サラの取り乱しように唖然としているしかなかったアスランは、はっと意識を取り戻した。
「何ですか? 母上」
「2階のお茶室の入り口に、小さな包みを置いているの。それを取ってきてくれる?」
「え? はい」
何故急こんな事を頼まれたのかは分からなかったが、それに逆らうことは許されないような気がして。
先ほどの取り乱しようから心配になり、1秒たりともサラから目を離したくはないと思っていたものの、それでもしぶしぶとアスランは2階に向かった。
ただ荷物を取ってくるだけならすぐだから。そう思って。
アスランにしては珍しく、ドタドタと足音を立てて駆け上がる。いつものレノアなら、こんな音を聞いた瞬間に「静かにしなさい!」と叫ぶはずなのに。
自分に向けられない声が、不安をかき立てていた。
