桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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息が上がるほどに白熱した雪合戦を一時休戦し、アスランの家へと戻った時にはもう9時を回っていて。
サラの後からやってきたシルフィアとレノアは、二人を家に迎え入れながら「よくもまぁこの寒い中……」と笑っていた。
びしょ濡れになった服を着替え、アスランがリビングへと向かう。既にサラは着替えを終えてそこにいた。
「サラ……」
そう声をかけようとしたのだが、不意に言葉が詰まってしまう。目の前にいるサラが、先ほどまでのサラとはあまりにも違った印象を持っていたから。
ソファーに腰掛け、カチャカチャと手の中で弄っているのは、銃。
ここ数日でもう見慣れてしまったが、それでもやはりサラには不似合いだと思い続けているそれを、当たり前のようにメンテナンスしている姿にアスランの胸が痛む。雪合戦をしているときのサラは、自分に近い存在だと感じていた。
「やっぱりサラも子供だな……」
心の底からそう思って。
最初はあまり乗り気ではなかったのだが、気が付けば楽しくて仕様がなかった。
もっと一緒に遊びたい。
もっとたくさん話したい。
それなのに、目の前にいるサラは何故かとても遠く感じられて……。
声をかけることも、部屋に入る事も出来ず立ちつくしていると、銃のメンテをしながら振り向きもせずサラが言った。
「さっきから何してんの? 入っておいでよ。廊下は寒いよ?」
気配を察していたのだろう。当たり前のように声をかけてくるサラに驚きながら、アスランはゆっくりと部屋に入っていった。
「ちょっと待っててね。あと少しで終わるから」
何となくサラの正面に座れば、目に入るのは真剣な表情のサラと、テーブル一杯の武器弾薬。
「これ……全部サラが持ってたのか?」
「そうよ。状況によって使い分けてるけど、メンテは常にしておかないとね。ここぞって時に使えなかったら困るじゃない?」
ちらりとアスランに同意を促す視線が送られる。
「あ、あぁ、そう……かな?」
曖昧な答えしかできないアスラン。その姿に、サラはただ笑っていた。
「サラは何でこんな仕事をしてるんだ? 危険なのに」
「たまたま自分に合ってる仕事だっていうのもあるけど……やっぱり誰かを助けられるのって良いっしょ?」
あっさりと答えたサラの瞳には、一片の曇りもない。
「少々の危険はいつものことだし、大したこと無いよ」
そうあっさり言い切るサラは、とても輝いているように見えた。
「さて……と、終了!」
最後のねじを締め、弾を装填しホルスターに納めた。テーブルに散らばっていた武器弾薬の全ても、あっという間に片付けられる。
その頃には、キッチンから流れてくる美味しそうな匂いが、リビング一杯に広がっていた。
「母さん、もう良いよ~!」
テーブルの上を拭きながらサラが叫ぶと、キッチンで料理をしていた母親達が、待ちかねていたとばかりにやってくる。その手には、朝食とは思えないほどに豪勢な料理が乗せられていた。
「母上、これは一体?」
「いやだ、アスランってば。今日は何日だと思ってるのよ?」
「今日?」
言われてカレンダーを見る。
今日は12月24日。クリスマスイブ。
「まさかこれ……」
「そう。イブのお祝い用に、ごちそうを作っちゃったの」
「はぁ?」
思わず声をあげてしまう。
確かに家では毎年、ささやかではあるがクリスマスパーティーを行っていた。もちろんその場に父はいないため、いつもより少し豪華な料理とケーキがテーブルに並ぶだけの、母と二人の本当にささやかなパーティー。
だがそれはあくまでクリスマス当日の夜に行っていた。大抵イブは、軍主催のパーティーに母も呼ばれていたから。
だからクリスマスイブに、しかも朝からお祝いなど今まで考えたこともなかった。
「お祝いは分かるけど、いくらなんでも朝からこんな……」
テーブルに並んでいるのは、ターキーを初めとするクリスマスではお約束の料理ばかり。それも半端じゃない量が並んでいる。サラとシルフィアが来ているとはいえ、尋常な量ではなかった。
「食べ始めたら結構お腹に入るものよ。ほら、アスラン! 座って座って!」
「そうそう。さっきまであれだけ走り回ってたんだし、お腹は減ってるはずでしょ?」
とても嬉しそうにはしゃぎながら、テーブルの上に料理を並べていく母親達。
「は~い、私もうお腹ぺっこぺこだよ」
その料理をサラが早速つまみ食いする。
「 お行儀悪い!」とシルフィアの手から放たれたお玉を事も無げに受け止め、更にもう一口つまんで勝ち誇ったように笑うサラ。だがシルフィアと視線が合ったのか、慌ててすぐ側にあったシャンパンとジュースを開け、グラスに注ぐ。
「だ~って待ち切れないんだもん! ってなわけで……」
無駄のない動きで中を満たしたグラスを配り、アスランの横へと走り戻ってきた。
「メリークリスマ~ス!」
チン!
サラとアスランのグラスが触れて、澄んだ音を響かせる。あまりにも素早い動きに呆れていた母達も、
「メリークリスマス」
「メリークリスマス」
とすぐに笑顔となり、お互いのグラスを重ねた。
サラの後からやってきたシルフィアとレノアは、二人を家に迎え入れながら「よくもまぁこの寒い中……」と笑っていた。
びしょ濡れになった服を着替え、アスランがリビングへと向かう。既にサラは着替えを終えてそこにいた。
「サラ……」
そう声をかけようとしたのだが、不意に言葉が詰まってしまう。目の前にいるサラが、先ほどまでのサラとはあまりにも違った印象を持っていたから。
ソファーに腰掛け、カチャカチャと手の中で弄っているのは、銃。
ここ数日でもう見慣れてしまったが、それでもやはりサラには不似合いだと思い続けているそれを、当たり前のようにメンテナンスしている姿にアスランの胸が痛む。雪合戦をしているときのサラは、自分に近い存在だと感じていた。
「やっぱりサラも子供だな……」
心の底からそう思って。
最初はあまり乗り気ではなかったのだが、気が付けば楽しくて仕様がなかった。
もっと一緒に遊びたい。
もっとたくさん話したい。
それなのに、目の前にいるサラは何故かとても遠く感じられて……。
声をかけることも、部屋に入る事も出来ず立ちつくしていると、銃のメンテをしながら振り向きもせずサラが言った。
「さっきから何してんの? 入っておいでよ。廊下は寒いよ?」
気配を察していたのだろう。当たり前のように声をかけてくるサラに驚きながら、アスランはゆっくりと部屋に入っていった。
「ちょっと待っててね。あと少しで終わるから」
何となくサラの正面に座れば、目に入るのは真剣な表情のサラと、テーブル一杯の武器弾薬。
「これ……全部サラが持ってたのか?」
「そうよ。状況によって使い分けてるけど、メンテは常にしておかないとね。ここぞって時に使えなかったら困るじゃない?」
ちらりとアスランに同意を促す視線が送られる。
「あ、あぁ、そう……かな?」
曖昧な答えしかできないアスラン。その姿に、サラはただ笑っていた。
「サラは何でこんな仕事をしてるんだ? 危険なのに」
「たまたま自分に合ってる仕事だっていうのもあるけど……やっぱり誰かを助けられるのって良いっしょ?」
あっさりと答えたサラの瞳には、一片の曇りもない。
「少々の危険はいつものことだし、大したこと無いよ」
そうあっさり言い切るサラは、とても輝いているように見えた。
「さて……と、終了!」
最後のねじを締め、弾を装填しホルスターに納めた。テーブルに散らばっていた武器弾薬の全ても、あっという間に片付けられる。
その頃には、キッチンから流れてくる美味しそうな匂いが、リビング一杯に広がっていた。
「母さん、もう良いよ~!」
テーブルの上を拭きながらサラが叫ぶと、キッチンで料理をしていた母親達が、待ちかねていたとばかりにやってくる。その手には、朝食とは思えないほどに豪勢な料理が乗せられていた。
「母上、これは一体?」
「いやだ、アスランってば。今日は何日だと思ってるのよ?」
「今日?」
言われてカレンダーを見る。
今日は12月24日。クリスマスイブ。
「まさかこれ……」
「そう。イブのお祝い用に、ごちそうを作っちゃったの」
「はぁ?」
思わず声をあげてしまう。
確かに家では毎年、ささやかではあるがクリスマスパーティーを行っていた。もちろんその場に父はいないため、いつもより少し豪華な料理とケーキがテーブルに並ぶだけの、母と二人の本当にささやかなパーティー。
だがそれはあくまでクリスマス当日の夜に行っていた。大抵イブは、軍主催のパーティーに母も呼ばれていたから。
だからクリスマスイブに、しかも朝からお祝いなど今まで考えたこともなかった。
「お祝いは分かるけど、いくらなんでも朝からこんな……」
テーブルに並んでいるのは、ターキーを初めとするクリスマスではお約束の料理ばかり。それも半端じゃない量が並んでいる。サラとシルフィアが来ているとはいえ、尋常な量ではなかった。
「食べ始めたら結構お腹に入るものよ。ほら、アスラン! 座って座って!」
「そうそう。さっきまであれだけ走り回ってたんだし、お腹は減ってるはずでしょ?」
とても嬉しそうにはしゃぎながら、テーブルの上に料理を並べていく母親達。
「は~い、私もうお腹ぺっこぺこだよ」
その料理をサラが早速つまみ食いする。
「 お行儀悪い!」とシルフィアの手から放たれたお玉を事も無げに受け止め、更にもう一口つまんで勝ち誇ったように笑うサラ。だがシルフィアと視線が合ったのか、慌ててすぐ側にあったシャンパンとジュースを開け、グラスに注ぐ。
「だ~って待ち切れないんだもん! ってなわけで……」
無駄のない動きで中を満たしたグラスを配り、アスランの横へと走り戻ってきた。
「メリークリスマ~ス!」
チン!
サラとアスランのグラスが触れて、澄んだ音を響かせる。あまりにも素早い動きに呆れていた母達も、
「メリークリスマス」
「メリークリスマス」
とすぐに笑顔となり、お互いのグラスを重ねた。