桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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相変わらずあちこちで、戦いが続いている。戦闘能力は格段に上のコーディネーター達も、圧倒的に数で勝るナチュラル達に手を焼いていた。
だがそれはナチュラル側としても同じ事。数が少ないはずのコーディネーター達からは、全く降伏の意志を感じられない。
お互いが殺し、殺され。ただ時間の経過と共に犠牲者を増やしているだけーー。
サラ達がザフトに入隊して、もう半年以上の時が経過していた。いつの間にか街はクリスマス一色に染まり、見渡す限りお祭りムードとなっている。
戦争まっただ中だというのに。
いや、そんな時だからこそ、人々は小さな幸せと、儚い願いを夢見るのかも知れない。
だがここにいる彼らは、そんな気分には到底なれるものではなく。クリスマスまでの数日間のみ降る雪を見ながら、サラは小さなため息を吐いた。
「何でこんな事に……」
再びため息を吐く。視線を横に動かせば、そこには見慣れた人物の姿があった。
大きな紙袋を抱えながら、自分の歩調に合わせて歩くその人物は……アスラン。
「仕方ないだろう。隊長命令なんだから」
「分かってるわ。そんな事くらい」
不本意ながら、二人はクルーゼの命令により、クリスマスムード一色の商店街へと買い物に来ていたのだった。
必要な物を選ぶのはサラの役目。アスランは、荷物持ちとして選出された。
別に一人でも買って帰れると主張したのだが、渡されたメモに書かれた内容は尋常ではなく、しぶしぶアスランとの外出を受け入れるしかなかった。
「買う物はあと1つ。さっさと終わらせて帰るよ」
言葉を交わせば、自分の中に押し込めている感情が出てくる危険性が高い。サラは極力交わす言葉を少なくしながら、的確に指示を出して短時間で買い物を済ませた。
両手一杯に荷物を抱えたアスランが、サラの後をついてくる。まるで我が儘な女が、男に荷物を押しつけて歩いているような光景に、サラはなんとも言えない気持ちになった。
「……貸して」
最後の荷物と、いくらかの荷物をアスランからひったくるように奪うと、歩を速める。
「別に良いよ、俺が持つから」
「これくらい平気」
「女の子に荷物を持たせるわけには……」
「私は軍人。男も女も関係ない」
「でも……」
とりつく島もない返事に、アスランが言葉を詰まらせた。
お構いなしに歩き続けるサラは、確実にアスランとの距離を離していく。慌てて荷物を持ち直し、小走りに追いかけようとしたアスランは、その時ふとある物を目にした。
サラを追いかけなければならないのは分かっているが、今目の前にあるそれから、目を離すことが出来ない。次の瞬間にはもう、足はそちらに引っ張られていた。
「アスラン?」
しばらく後ろを振り返りもせずスタスタと歩いていたサラが、薄れた気配に何かを感じ、足を止めた。振り返っても、先ほどまでずっと側にいた人物の姿がない。いくら自分が早歩きをしていたといっても、見えなくなるほどの距離を開けたつもりなどなくて。
「道草を食ったりするほど、砕けた人間でもないはずだけど」
首を傾げながら、暫く元の道を見つめていた。
案の定、数分と経たない内に、アスランが小走りにサラの方へと向かってくる。いくらかサラが引き取りはしたものの、それでもかなりかさばっている荷物をかかえているアスランは、少々走りにくそうだった。
「すまない」
「別にかまわないけど。今度姿を消したら放っていくわよ」
「分かった」
ふっと浮かんだその笑みは苦笑なのか、それともーー。
含みを感じはしたが、サラは敢えてそれを無視して訊ねた。
「で? 何か問題でもあったの?」
「いや」
「?」
「問題ではなくて……これを」
抱えていた袋から小さな箱を取り出すと、アスランはそれをサラに差し出した。
「これは?」
「開けてごらんよ」
小さい割に重みのある箱。サラはしばし探るようにアスランを見ていたが、やがてゆっくりと包みを開けた。
ふたを開けると、中には丸いガラスのような物が入っている。そっと取り出してみれば、それはーー。
「スノーボール……!」
サラに衝撃が走る。
クリスマスにありがちなプレゼントだが、サラにとってスノーボールは、とても深い意味のある物だったから。
「覚えてるか? これ」
「これ、が……何……?」
「動揺した時に右目が小さくなる癖、変わってないな」
「え……!?」
「こんなにあの時のままなのに、自分を偽れるはずないだろう?」
クスリと笑うアスランは、サラの記憶の中のアスランと寸分違わぬ笑顔を見せていて。
「二人だけの時くらい、あの頃のサラ=フユツキに戻っても良いだろう? ここは戦場じゃないんだから」
「……っ」
言葉に詰まる。
苦しげにサラは、手の中のスノーボールを見つめた。
「8年前のクリスマス……俺がスノーボール、サラが本をもらったとき、自分もこれが良いと拗ねてたんだよな。いつもは決して我が儘を言わないお前が、珍しく言った我が儘。おばさまがあんなにも困った顔をしたのを見たのは、後にも先にもあの時しかなかったよ」
「あれは……」
「じゃぁ俺が取り替えようかと言ったのに、それも嫌だと駄々をこねて。本当にあの時は困ったな」
少し遠くを見つめながら、さもおかしそうに笑っているアスラン。
サラはというと、俯きながら恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「よく……覚えてるわね」
「一緒にいた時間が短かった分、逆に忘れられないよ。それに……」
「それに?」
「初恋を忘れられるはずないだろう?」
「……っ!」
しまった! と思ったときにはもう遅い。バサリと大きな音を立てて荷物が落ちたときにはもう、サラの体はアスランの腕の中だった。
「アス……ッ」
「もう二度と会うことはないと思っていたから、桜の木の下で久しぶりに聖を見たときは気付かなかった。でも……惹かれたよ」
「駄目……私は駄目……」
「想いは変わらない。あの日のままだ」
ぎゅっと強く抱きしめられる。
「君が俺の前から姿を消した、あの日のままーー」
だがそれはナチュラル側としても同じ事。数が少ないはずのコーディネーター達からは、全く降伏の意志を感じられない。
お互いが殺し、殺され。ただ時間の経過と共に犠牲者を増やしているだけーー。
サラ達がザフトに入隊して、もう半年以上の時が経過していた。いつの間にか街はクリスマス一色に染まり、見渡す限りお祭りムードとなっている。
戦争まっただ中だというのに。
いや、そんな時だからこそ、人々は小さな幸せと、儚い願いを夢見るのかも知れない。
だがここにいる彼らは、そんな気分には到底なれるものではなく。クリスマスまでの数日間のみ降る雪を見ながら、サラは小さなため息を吐いた。
「何でこんな事に……」
再びため息を吐く。視線を横に動かせば、そこには見慣れた人物の姿があった。
大きな紙袋を抱えながら、自分の歩調に合わせて歩くその人物は……アスラン。
「仕方ないだろう。隊長命令なんだから」
「分かってるわ。そんな事くらい」
不本意ながら、二人はクルーゼの命令により、クリスマスムード一色の商店街へと買い物に来ていたのだった。
必要な物を選ぶのはサラの役目。アスランは、荷物持ちとして選出された。
別に一人でも買って帰れると主張したのだが、渡されたメモに書かれた内容は尋常ではなく、しぶしぶアスランとの外出を受け入れるしかなかった。
「買う物はあと1つ。さっさと終わらせて帰るよ」
言葉を交わせば、自分の中に押し込めている感情が出てくる危険性が高い。サラは極力交わす言葉を少なくしながら、的確に指示を出して短時間で買い物を済ませた。
両手一杯に荷物を抱えたアスランが、サラの後をついてくる。まるで我が儘な女が、男に荷物を押しつけて歩いているような光景に、サラはなんとも言えない気持ちになった。
「……貸して」
最後の荷物と、いくらかの荷物をアスランからひったくるように奪うと、歩を速める。
「別に良いよ、俺が持つから」
「これくらい平気」
「女の子に荷物を持たせるわけには……」
「私は軍人。男も女も関係ない」
「でも……」
とりつく島もない返事に、アスランが言葉を詰まらせた。
お構いなしに歩き続けるサラは、確実にアスランとの距離を離していく。慌てて荷物を持ち直し、小走りに追いかけようとしたアスランは、その時ふとある物を目にした。
サラを追いかけなければならないのは分かっているが、今目の前にあるそれから、目を離すことが出来ない。次の瞬間にはもう、足はそちらに引っ張られていた。
「アスラン?」
しばらく後ろを振り返りもせずスタスタと歩いていたサラが、薄れた気配に何かを感じ、足を止めた。振り返っても、先ほどまでずっと側にいた人物の姿がない。いくら自分が早歩きをしていたといっても、見えなくなるほどの距離を開けたつもりなどなくて。
「道草を食ったりするほど、砕けた人間でもないはずだけど」
首を傾げながら、暫く元の道を見つめていた。
案の定、数分と経たない内に、アスランが小走りにサラの方へと向かってくる。いくらかサラが引き取りはしたものの、それでもかなりかさばっている荷物をかかえているアスランは、少々走りにくそうだった。
「すまない」
「別にかまわないけど。今度姿を消したら放っていくわよ」
「分かった」
ふっと浮かんだその笑みは苦笑なのか、それともーー。
含みを感じはしたが、サラは敢えてそれを無視して訊ねた。
「で? 何か問題でもあったの?」
「いや」
「?」
「問題ではなくて……これを」
抱えていた袋から小さな箱を取り出すと、アスランはそれをサラに差し出した。
「これは?」
「開けてごらんよ」
小さい割に重みのある箱。サラはしばし探るようにアスランを見ていたが、やがてゆっくりと包みを開けた。
ふたを開けると、中には丸いガラスのような物が入っている。そっと取り出してみれば、それはーー。
「スノーボール……!」
サラに衝撃が走る。
クリスマスにありがちなプレゼントだが、サラにとってスノーボールは、とても深い意味のある物だったから。
「覚えてるか? これ」
「これ、が……何……?」
「動揺した時に右目が小さくなる癖、変わってないな」
「え……!?」
「こんなにあの時のままなのに、自分を偽れるはずないだろう?」
クスリと笑うアスランは、サラの記憶の中のアスランと寸分違わぬ笑顔を見せていて。
「二人だけの時くらい、あの頃のサラ=フユツキに戻っても良いだろう? ここは戦場じゃないんだから」
「……っ」
言葉に詰まる。
苦しげにサラは、手の中のスノーボールを見つめた。
「8年前のクリスマス……俺がスノーボール、サラが本をもらったとき、自分もこれが良いと拗ねてたんだよな。いつもは決して我が儘を言わないお前が、珍しく言った我が儘。おばさまがあんなにも困った顔をしたのを見たのは、後にも先にもあの時しかなかったよ」
「あれは……」
「じゃぁ俺が取り替えようかと言ったのに、それも嫌だと駄々をこねて。本当にあの時は困ったな」
少し遠くを見つめながら、さもおかしそうに笑っているアスラン。
サラはというと、俯きながら恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「よく……覚えてるわね」
「一緒にいた時間が短かった分、逆に忘れられないよ。それに……」
「それに?」
「初恋を忘れられるはずないだろう?」
「……っ!」
しまった! と思ったときにはもう遅い。バサリと大きな音を立てて荷物が落ちたときにはもう、サラの体はアスランの腕の中だった。
「アス……ッ」
「もう二度と会うことはないと思っていたから、桜の木の下で久しぶりに聖を見たときは気付かなかった。でも……惹かれたよ」
「駄目……私は駄目……」
「想いは変わらない。あの日のままだ」
ぎゅっと強く抱きしめられる。
「君が俺の前から姿を消した、あの日のままーー」
