桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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「サラ……君はあのサラ・フユツキなんだろう?」
アスランが、押さえつけられたままの体勢でサラに尋ねる。
「フユツキ? 誰のこと? 確かに私はサラだけど、あの……ってのは分からない」
入隊試験でも測られた心の強さ。
何が起きても動揺を見せず、冷静に対処できるための精神力を兼ね備えていなければならないサラは、先ほど反応してしまったことは嘘だったかのように平然とアスランの問いに答えた。
「サラ……」
「私のことをファーストネームで呼ぶのなら、私も同じように呼んでも良いって事よね。……アスラン。誰と間違えているのかは知らないけれど、私はサラ・グレン。覚えておいて」
サラはそう言いながら、押さえつけていたアスランの腕を放して立ち上がった。
体の自由になったアスランに注がれていたのは、サラの冷たい視線。
「どこの誰の事かは知らないけれど、赤の他人と間違えられるのは、不愉快だわ」
「……っ、すまない」
アスランが、傷ついた顔をしながらも謝る。だがサラはそれを無視してふいと視線を逸らすと、今度はイザークの方を向き、少し乱れた髪を直しながら言った。
「これで満足? ジュールさん」
先ほどアスランに注がれていたものと同じ冷たい視線が、今度はイザークに向けられている。
「私がザフトに……クルーゼ隊に入隊できたのは、私自身の能力の結果。もちろんグレンの名も関わってはいるけれど、それだけで配属されるほどクルーゼ隊は甘くない。それは貴方達だって分かっているでしょう。『親が議員だから赤を与えられ、クルーゼ隊に配属されたんだ』と陰口を叩かれている貴方達なら」
ぐっ、とイザークが喉を鳴らす。ラスティとディアッカ、ニコルとアスランもそれぞれ顔を見合わせた。
「それとも未だ信じられませんか?……今度は本気でやる?」
「……分かった」
絞り出すような一言だった。イザークにとっては、この認める行為はとてつもなく嫌悪を抱くものだろう。だが更に試合を行ったところで、結果は目に見えている。まして、まだあれでも本気で無かったとなると――。
「分かって貰えればそれで結構」
相変わらず小馬鹿にしたような言葉にも、反論出来る者はいない。
「でもまぁ良い肩慣らしをさせてもらったわ。収穫もあったし」
「収穫?」
口元に笑みを浮かべながら妙な発言をし、何故かポケットからタブレットを取り出したサラ。その不審な行動に訝しげに首を傾げながら、ラスティが聞いた。
「収穫ってなんだよ?」
「貴方達の戦闘レベルデータ。クルーゼ隊長から調べておくように言われてるもので」
蓋を開け、起動終了と同時に物凄い勢いでキーボードを叩き始める。ラスティが興味深げに後ろから覗き込むと、記号と思しき物が読む間も無いほどの勢いで流れていた。
「俺達のデータだと?」
またもイザークが過敏に反応する。何故ここに来たばかりの人間に自分達のデータを取られなければならないのかと、腹立たしさは募るばかりだ。
「私は下された命令をこなそうとしているだけ。文句があるなら隊長にどうぞ」
イザークの怒りもお構いなしにデータを打ち込んだサラは、ふっと冷たい笑みを浮かべると、タブレットをしまいながらロッカールームへと歩き出した。
「おい! 貴様っ!」
「サラ」
「!?」
「私はサラ。貴様と呼ばれるのは不愉快です。私にも名前があるんですから、ちゃんと名前で呼んで下さい」
「……っ、サラ!」
「はい?」
「まだ時間はある。もう一度勝負だ!」
「嫌です」
間髪入れずに返ってきた言葉に、イザークは絶句してしまう。更に畳みかけるようにサラは言った。
「何度仕切直しても結果は同じ事です。同じ事を繰り返し行っても無駄なだけですから。それよりももっと自分の能力を上げておいてください」
この短い時間で心得たのか、わざわざイザークを怒らせるような言葉を紡ぐサラ。そして今度こそサラはロッカールームへと姿を消した。
怒髪天を突きそうなイザークに余裕の笑みを見せて。
出会って半日と経たない少年達に、今日何度目かの呆気にとられた表情を浮かべさせながら。
アスランが、押さえつけられたままの体勢でサラに尋ねる。
「フユツキ? 誰のこと? 確かに私はサラだけど、あの……ってのは分からない」
入隊試験でも測られた心の強さ。
何が起きても動揺を見せず、冷静に対処できるための精神力を兼ね備えていなければならないサラは、先ほど反応してしまったことは嘘だったかのように平然とアスランの問いに答えた。
「サラ……」
「私のことをファーストネームで呼ぶのなら、私も同じように呼んでも良いって事よね。……アスラン。誰と間違えているのかは知らないけれど、私はサラ・グレン。覚えておいて」
サラはそう言いながら、押さえつけていたアスランの腕を放して立ち上がった。
体の自由になったアスランに注がれていたのは、サラの冷たい視線。
「どこの誰の事かは知らないけれど、赤の他人と間違えられるのは、不愉快だわ」
「……っ、すまない」
アスランが、傷ついた顔をしながらも謝る。だがサラはそれを無視してふいと視線を逸らすと、今度はイザークの方を向き、少し乱れた髪を直しながら言った。
「これで満足? ジュールさん」
先ほどアスランに注がれていたものと同じ冷たい視線が、今度はイザークに向けられている。
「私がザフトに……クルーゼ隊に入隊できたのは、私自身の能力の結果。もちろんグレンの名も関わってはいるけれど、それだけで配属されるほどクルーゼ隊は甘くない。それは貴方達だって分かっているでしょう。『親が議員だから赤を与えられ、クルーゼ隊に配属されたんだ』と陰口を叩かれている貴方達なら」
ぐっ、とイザークが喉を鳴らす。ラスティとディアッカ、ニコルとアスランもそれぞれ顔を見合わせた。
「それとも未だ信じられませんか?……今度は本気でやる?」
「……分かった」
絞り出すような一言だった。イザークにとっては、この認める行為はとてつもなく嫌悪を抱くものだろう。だが更に試合を行ったところで、結果は目に見えている。まして、まだあれでも本気で無かったとなると――。
「分かって貰えればそれで結構」
相変わらず小馬鹿にしたような言葉にも、反論出来る者はいない。
「でもまぁ良い肩慣らしをさせてもらったわ。収穫もあったし」
「収穫?」
口元に笑みを浮かべながら妙な発言をし、何故かポケットからタブレットを取り出したサラ。その不審な行動に訝しげに首を傾げながら、ラスティが聞いた。
「収穫ってなんだよ?」
「貴方達の戦闘レベルデータ。クルーゼ隊長から調べておくように言われてるもので」
蓋を開け、起動終了と同時に物凄い勢いでキーボードを叩き始める。ラスティが興味深げに後ろから覗き込むと、記号と思しき物が読む間も無いほどの勢いで流れていた。
「俺達のデータだと?」
またもイザークが過敏に反応する。何故ここに来たばかりの人間に自分達のデータを取られなければならないのかと、腹立たしさは募るばかりだ。
「私は下された命令をこなそうとしているだけ。文句があるなら隊長にどうぞ」
イザークの怒りもお構いなしにデータを打ち込んだサラは、ふっと冷たい笑みを浮かべると、タブレットをしまいながらロッカールームへと歩き出した。
「おい! 貴様っ!」
「サラ」
「!?」
「私はサラ。貴様と呼ばれるのは不愉快です。私にも名前があるんですから、ちゃんと名前で呼んで下さい」
「……っ、サラ!」
「はい?」
「まだ時間はある。もう一度勝負だ!」
「嫌です」
間髪入れずに返ってきた言葉に、イザークは絶句してしまう。更に畳みかけるようにサラは言った。
「何度仕切直しても結果は同じ事です。同じ事を繰り返し行っても無駄なだけですから。それよりももっと自分の能力を上げておいてください」
この短い時間で心得たのか、わざわざイザークを怒らせるような言葉を紡ぐサラ。そして今度こそサラはロッカールームへと姿を消した。
怒髪天を突きそうなイザークに余裕の笑みを見せて。
出会って半日と経たない少年達に、今日何度目かの呆気にとられた表情を浮かべさせながら。