桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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「アスラン・ザラ、サラ・グレンの試合を始めます。……始め!」
先ほどと同じように、ラスティの腕が振り下ろされる。と、今度はサラが先制攻撃を掛けた。
アスランの正面に走り込んできたと思った矢先、不意に視界から消えるサラ。気配が一瞬で自分の後ろに移動したと感じたアスランは、振り向きざま蹴りを繰り出す。
その足の下をくぐり、アスランの首に手刀を向けるサラの手を払い、間髪入れず空を切った蹴りを寸前の所でバック転でかわす。そこへ信じられないほどのスピードで回り込んできたサラの突きが来たため、アスランはすぐさま後ろへとジャンプしたが、間に合わなかった。
「ぐっ!」
後ろに飛ぶことで衝撃を少しは逃がすことが出来たものの、腹に受けた一撃は相当の物で。床に片手を付いて体を支え、痛みが薄れるのを待ちつつサラの動きを確認する。
――この強さ……明らかに実戦で身につけた物だ。
訓練のような生優しい物ではない。実戦で、命を賭けて身につけたとしか思えないほどに正確で破壊力のある戦い方。
実際に戦ってみて、それが分かった。自分達も決して実戦を知らないわけじゃない。ただ、違うのだ。
実戦経験の数が。
もしくは命のやり取りをした数が。
まだ痛みは消えない。が、実戦で敵の痛みが消えるまで待ってくれる馬鹿はいない。それはサラも同じだった。
サラはすぐさまアスランへと突進してきた。目の前まで迫った足が床を蹴り、体が空を舞っているのを認識しつつ前へと転がりながら落ちてくるサラの足を払おうとする。だがサラはそれを読んでいたのか、空中でくるりと回転するとアスランの攻撃をかわし、その後ろへと着地した。そのままアスランの首を腕で絞める形となる。
腕をはずして逃れようとしたが、華奢で細いその腕は、渾身の力でもはずすことは出来なかった。
「トップと言うだけあって少しは骨があるようだけれど……まだまだのようね」
今度は手で銃の形を作り、アスランのこめかみに指を当てる。
「ジ・エンド」
「しょ……勝者、サラ……」
「いや、 まだだ!」
「え……っ?」
不意にアスランが体を前へと倒す。しっかりと腕を固定していた事が仇になり、サラの体がふわりと浮かんだ。
一瞬の気のゆるみが、反撃のチャンスを与えてしまう。今まで何度もたたき込まれてきた教訓が、サラの脳裏をよぎった。
「くっ!」
投げ飛ばされそうになった反動を利用し、アスランの肩を掴みながら回転する。着地と同時に仕掛けられるアスランの蹴りをかわしながら、サラは小さく微笑んだ。
戦いの最中に浮かぶ笑みに、攻撃を仕掛けていたアスランが気付く。
「何がおかしい?」
「いや、なかなかやると思ってね」
隙のない攻撃を避けているサラの姿は、妙に楽しそうに見えた。
「でもやっぱり未だ未熟」
「なっ……!」
パシッ! サラが初めてアスランの攻撃を真正面から受けた。
渾身の一撃を、片手で。
「よっ!」
気が付いた時には世界がくるりと回転し、アスランは床に押さえつけられる形となっていた。先ほどのイザークと同じように。
「今度こそ、ジ・エンド」
「勝者、サラ・グレン!」
ラスティの声が部屋に響く。
試合が始まってから、30秒と経ってはいない。この短時間で、サラはザフトのトップクラスの人間をいとも簡単に倒してしまった。
ここまでくるともう認めざるを得ない。
サラが実力でザフトの入隊試験をクリアしたということを。
「惜しかったわね。ザラさん」
サラは、押さえつけていたアスランの耳元でそっと囁いた。優越感に浸っているかのようなその言葉に、アスランが悔しそうな表情を見せる。
「隙をついての反撃は良かったけれど、それでも私にはまだ遠く及ばなかったわね」
「……サラ・フユツキ」
「え……っ?」
ドキリ!
突然呼ばれた名前に、サラの心臓が跳ね上がった。
アスランがサラの事をずっと気にしていたことは分かってはいたため、いつか聞かれるだろうと構えてはいたものの、やはり直接その名を聞かされると……。
だが、それを表に出してはいけないと、サラは必死に動揺を隠した。
あの時――桜の中で出会った時、サラとアスランはただ自己紹介をしただけ。真実のサラの姿で握手を交わしただけの関係。
それなのに、サラはアスランに自分がサラ・フユツキ月であると認識されることを、異常な程に恐れている。
ばれてしまえば、まだ叶えられていない願いが現実の物となるかもしれないのに。そもそも、髪をくくって眼鏡をかけた程度で自分を偽れるはずなどないのに。
それでもサラは、隠し通そうとしていた。
先ほどと同じように、ラスティの腕が振り下ろされる。と、今度はサラが先制攻撃を掛けた。
アスランの正面に走り込んできたと思った矢先、不意に視界から消えるサラ。気配が一瞬で自分の後ろに移動したと感じたアスランは、振り向きざま蹴りを繰り出す。
その足の下をくぐり、アスランの首に手刀を向けるサラの手を払い、間髪入れず空を切った蹴りを寸前の所でバック転でかわす。そこへ信じられないほどのスピードで回り込んできたサラの突きが来たため、アスランはすぐさま後ろへとジャンプしたが、間に合わなかった。
「ぐっ!」
後ろに飛ぶことで衝撃を少しは逃がすことが出来たものの、腹に受けた一撃は相当の物で。床に片手を付いて体を支え、痛みが薄れるのを待ちつつサラの動きを確認する。
――この強さ……明らかに実戦で身につけた物だ。
訓練のような生優しい物ではない。実戦で、命を賭けて身につけたとしか思えないほどに正確で破壊力のある戦い方。
実際に戦ってみて、それが分かった。自分達も決して実戦を知らないわけじゃない。ただ、違うのだ。
実戦経験の数が。
もしくは命のやり取りをした数が。
まだ痛みは消えない。が、実戦で敵の痛みが消えるまで待ってくれる馬鹿はいない。それはサラも同じだった。
サラはすぐさまアスランへと突進してきた。目の前まで迫った足が床を蹴り、体が空を舞っているのを認識しつつ前へと転がりながら落ちてくるサラの足を払おうとする。だがサラはそれを読んでいたのか、空中でくるりと回転するとアスランの攻撃をかわし、その後ろへと着地した。そのままアスランの首を腕で絞める形となる。
腕をはずして逃れようとしたが、華奢で細いその腕は、渾身の力でもはずすことは出来なかった。
「トップと言うだけあって少しは骨があるようだけれど……まだまだのようね」
今度は手で銃の形を作り、アスランのこめかみに指を当てる。
「ジ・エンド」
「しょ……勝者、サラ……」
「いや、 まだだ!」
「え……っ?」
不意にアスランが体を前へと倒す。しっかりと腕を固定していた事が仇になり、サラの体がふわりと浮かんだ。
一瞬の気のゆるみが、反撃のチャンスを与えてしまう。今まで何度もたたき込まれてきた教訓が、サラの脳裏をよぎった。
「くっ!」
投げ飛ばされそうになった反動を利用し、アスランの肩を掴みながら回転する。着地と同時に仕掛けられるアスランの蹴りをかわしながら、サラは小さく微笑んだ。
戦いの最中に浮かぶ笑みに、攻撃を仕掛けていたアスランが気付く。
「何がおかしい?」
「いや、なかなかやると思ってね」
隙のない攻撃を避けているサラの姿は、妙に楽しそうに見えた。
「でもやっぱり未だ未熟」
「なっ……!」
パシッ! サラが初めてアスランの攻撃を真正面から受けた。
渾身の一撃を、片手で。
「よっ!」
気が付いた時には世界がくるりと回転し、アスランは床に押さえつけられる形となっていた。先ほどのイザークと同じように。
「今度こそ、ジ・エンド」
「勝者、サラ・グレン!」
ラスティの声が部屋に響く。
試合が始まってから、30秒と経ってはいない。この短時間で、サラはザフトのトップクラスの人間をいとも簡単に倒してしまった。
ここまでくるともう認めざるを得ない。
サラが実力でザフトの入隊試験をクリアしたということを。
「惜しかったわね。ザラさん」
サラは、押さえつけていたアスランの耳元でそっと囁いた。優越感に浸っているかのようなその言葉に、アスランが悔しそうな表情を見せる。
「隙をついての反撃は良かったけれど、それでも私にはまだ遠く及ばなかったわね」
「……サラ・フユツキ」
「え……っ?」
ドキリ!
突然呼ばれた名前に、サラの心臓が跳ね上がった。
アスランがサラの事をずっと気にしていたことは分かってはいたため、いつか聞かれるだろうと構えてはいたものの、やはり直接その名を聞かされると……。
だが、それを表に出してはいけないと、サラは必死に動揺を隠した。
あの時――桜の中で出会った時、サラとアスランはただ自己紹介をしただけ。真実のサラの姿で握手を交わしただけの関係。
それなのに、サラはアスランに自分がサラ・フユツキ月であると認識されることを、異常な程に恐れている。
ばれてしまえば、まだ叶えられていない願いが現実の物となるかもしれないのに。そもそも、髪をくくって眼鏡をかけた程度で自分を偽れるはずなどないのに。
それでもサラは、隠し通そうとしていた。