桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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「……何?」
サラがロッカールームを出ると、一斉に視線が注がれる。向けられた5対の瞳には、それぞれに違った思いが秘められているようだった。
つい今し方までトレーニングルームでのぼっていた話題を、サラはまだ知らない。
「私の顔に何か?」
無遠慮に見つめられて、さすがに戸惑ってしまう。もちろん表情には出さないが。
「別になんでも無いさ。サラもトレーニングをするんだろ? 俺達にトレーナーはいないから、自分である程度メニューを組んで好きに機具を使ったらいい」
「そう、ありがとう」
ラスティに言われてサラは頷くと、ニコルの隣のエアロバイクに腰を下ろした。
何の躊躇もなく負荷値を設定し、こぎ始めるサラ。ニコルがそっとメニューモニターに視線を向けると、そこに出ていたのは自分よりも更に高い負荷値で驚いた。しかもそれを重そうな顔ひとつせずにこいでいる姿に、ニコルははぁ……と溜息をつくしかない。
「彼女、僕たちよりもずっと厳しい訓練を受けていたようですね」
小さくアスランに声をかける。負荷値を聞いたアスランからも、驚きの表情が消えることはない。
「アカデミーよりも厳しい訓練……」
ニコルの向こうにいるサラの横顔をそっと横目で盗み見ながら考えてみたものの、全く想像はつかなかった。
そんな中、無表情のまま足を動かしているサラを見ながら、イザークが思う。
少しだぶついているトレーニングウェアの中に隠れた、あの細い体に隠されている力が実際の所どれほどの物なのか。自分の目で、体で確かめなければ信じられない。サラがラスティの言っていたあの、正気の沙汰とは思えない入隊試験をクリアした人間だなんて――。
「おい、貴様」
イザークは、ゆっくりと立ち上がるとサラの元へと歩き出した。
「イザーク?」
ぴりぴりした物を感じてディアッカが声をかけたが、それをイザークは完全に無視する。
「貴様、本当にオーブから情報を入手してきたのか?」
「……いきなり何?」
目の前のメニューモニターを無心で見つめていたサラが、視界の端に入ってきたイザークの方へと視線を動かす。その冷たい目に、イザークは一瞬気圧されそうになってしまった。
だが、それで怯んでしまうイザークではない。負けじと睨みを利かせると、更に問いを続けた。
「ザフトへの入隊試験が、オーブのMSについての情報奪取だったり、貴様の素性はジョージ・グレンの養女だったり……それは真実なのか?」
「答える義務はありません」
「何だとっ!?」
瞬間かぁっと頭に血が上る。
そうでなくても気にくわないこの少女の、更に気にくわない反応。同じクルーゼ隊のメンバーである以上、なれ合いとまでは行かなくてもそれなりに繋がる何かがなければ、団体行動など出来はしない。詳しいことを言わなくても、真実か否かくらいは答えても良いはずなのに。
「何で答えなければならないんですか? それに答えなければ、今後の軍の命令に影響が出るというのでしたら別ですが……単なる興味本位での質問であれば、私には答える義務は無いと判断します。どうしてもというなら、前にも言ったようにクルーゼ隊長に聞いてください」
これを、立て板に水と言うのだろうか。目の前で睨みを利かせているイザークを目の前にして、さらりと言ってのけるサラに、回りの皆は圧倒されていた。
だがそれは、イザークの怒りのボルテージを更に上げてしまうものとなり――。
「き……っさまぁ!」
ビシリとサラを指さして、イザークが言った言葉。
「勝負だ!」
「……はい?」
「俺達は、ザフトに入るためにアカデミーで訓練を積んできた。誰もが憧れるこのクルーゼ隊に配属されたいと願いながら。そこらの腑抜けばかりが集まった隊など興味はないからな。だが貴様は違う。入隊試験をクリアしたとはいっても、それが本当に貴様の働きかどうかなんて分かったもんじゃない。どんなルートでオーブのMSの情報を入手してきたかは知らないが、貴様はジョージ・グレンの関係者だという。その名前を使って誰かを動かし、情報がもたらされたと言うことも考えられるだろうが! 貴様が本当に赤を着る資格があると言うのなら、今ここでそれを俺達に証明して見せろ!」
なるほど、それも確かに一理ある。
もしもイザークの言う通り、サラの実力云々など関係なく、ジョージ・グレンという名を利用するためだけに入隊させたのだとしたら。前線で戦う自分達にとっては、お荷物になってしまうだけ。
戦争に必要なのは、力。ただナチュラルへの憎悪を増幅させるだけのマスコットなど、今ここにいる少年達には必要ない。
イザークの言葉に少なからずも納得している少年達の表情に、サラは一つ小さな溜息をつくと、やれやれと言った表情で足の動きを止めた。
「分かったわ。でも下手に勝負をすると軍規違反に繋がってしまうから……トレーニングメニューの一環としての試合。それでも良いわよね」
「むろんだ」
他の者達も異存はなかった。
こうなるともう自分のトレーニングどころではない。その目はイザークとサラの動向に釘付けになっていた。
「それで? 試合の種目は何にするのかしら?」
「そうだな……この場所ではナイフ戦など無理だし、シミュレーションルームは今は使用できない。組み手で良いだろう」
その言葉に、サラは少し嫌そうな顔を見せる。そしてもちろんそれを見逃すイザークではない。
「どうした? 組み手は苦手か?」
「……別に、構わない」
サラはそう言って立ち上がると軽く屈伸運動をし、部屋の中央にあるスペースに立った。
「ここで良いのね?」
「ああ。審判は……」
「あ、俺やるわ」
すかさずラスティが手を挙げた。
サラが少し心配ではあるが、それでもイザークの言う通り、本当に何もできないような人間なら軍になど居ない方が良い。逆に本当に力があるのなら、クルーゼ隊にとって貴重な人材となる。
イザークとサラが向かい合ったのを確認すると、ラスティはゆっくりと手を上げ――。
「イザーク・ジュールとサラ・グレンの試合を始めます。……始め!」
勢いよく手を振り下ろしながら合図した。
サラがロッカールームを出ると、一斉に視線が注がれる。向けられた5対の瞳には、それぞれに違った思いが秘められているようだった。
つい今し方までトレーニングルームでのぼっていた話題を、サラはまだ知らない。
「私の顔に何か?」
無遠慮に見つめられて、さすがに戸惑ってしまう。もちろん表情には出さないが。
「別になんでも無いさ。サラもトレーニングをするんだろ? 俺達にトレーナーはいないから、自分である程度メニューを組んで好きに機具を使ったらいい」
「そう、ありがとう」
ラスティに言われてサラは頷くと、ニコルの隣のエアロバイクに腰を下ろした。
何の躊躇もなく負荷値を設定し、こぎ始めるサラ。ニコルがそっとメニューモニターに視線を向けると、そこに出ていたのは自分よりも更に高い負荷値で驚いた。しかもそれを重そうな顔ひとつせずにこいでいる姿に、ニコルははぁ……と溜息をつくしかない。
「彼女、僕たちよりもずっと厳しい訓練を受けていたようですね」
小さくアスランに声をかける。負荷値を聞いたアスランからも、驚きの表情が消えることはない。
「アカデミーよりも厳しい訓練……」
ニコルの向こうにいるサラの横顔をそっと横目で盗み見ながら考えてみたものの、全く想像はつかなかった。
そんな中、無表情のまま足を動かしているサラを見ながら、イザークが思う。
少しだぶついているトレーニングウェアの中に隠れた、あの細い体に隠されている力が実際の所どれほどの物なのか。自分の目で、体で確かめなければ信じられない。サラがラスティの言っていたあの、正気の沙汰とは思えない入隊試験をクリアした人間だなんて――。
「おい、貴様」
イザークは、ゆっくりと立ち上がるとサラの元へと歩き出した。
「イザーク?」
ぴりぴりした物を感じてディアッカが声をかけたが、それをイザークは完全に無視する。
「貴様、本当にオーブから情報を入手してきたのか?」
「……いきなり何?」
目の前のメニューモニターを無心で見つめていたサラが、視界の端に入ってきたイザークの方へと視線を動かす。その冷たい目に、イザークは一瞬気圧されそうになってしまった。
だが、それで怯んでしまうイザークではない。負けじと睨みを利かせると、更に問いを続けた。
「ザフトへの入隊試験が、オーブのMSについての情報奪取だったり、貴様の素性はジョージ・グレンの養女だったり……それは真実なのか?」
「答える義務はありません」
「何だとっ!?」
瞬間かぁっと頭に血が上る。
そうでなくても気にくわないこの少女の、更に気にくわない反応。同じクルーゼ隊のメンバーである以上、なれ合いとまでは行かなくてもそれなりに繋がる何かがなければ、団体行動など出来はしない。詳しいことを言わなくても、真実か否かくらいは答えても良いはずなのに。
「何で答えなければならないんですか? それに答えなければ、今後の軍の命令に影響が出るというのでしたら別ですが……単なる興味本位での質問であれば、私には答える義務は無いと判断します。どうしてもというなら、前にも言ったようにクルーゼ隊長に聞いてください」
これを、立て板に水と言うのだろうか。目の前で睨みを利かせているイザークを目の前にして、さらりと言ってのけるサラに、回りの皆は圧倒されていた。
だがそれは、イザークの怒りのボルテージを更に上げてしまうものとなり――。
「き……っさまぁ!」
ビシリとサラを指さして、イザークが言った言葉。
「勝負だ!」
「……はい?」
「俺達は、ザフトに入るためにアカデミーで訓練を積んできた。誰もが憧れるこのクルーゼ隊に配属されたいと願いながら。そこらの腑抜けばかりが集まった隊など興味はないからな。だが貴様は違う。入隊試験をクリアしたとはいっても、それが本当に貴様の働きかどうかなんて分かったもんじゃない。どんなルートでオーブのMSの情報を入手してきたかは知らないが、貴様はジョージ・グレンの関係者だという。その名前を使って誰かを動かし、情報がもたらされたと言うことも考えられるだろうが! 貴様が本当に赤を着る資格があると言うのなら、今ここでそれを俺達に証明して見せろ!」
なるほど、それも確かに一理ある。
もしもイザークの言う通り、サラの実力云々など関係なく、ジョージ・グレンという名を利用するためだけに入隊させたのだとしたら。前線で戦う自分達にとっては、お荷物になってしまうだけ。
戦争に必要なのは、力。ただナチュラルへの憎悪を増幅させるだけのマスコットなど、今ここにいる少年達には必要ない。
イザークの言葉に少なからずも納得している少年達の表情に、サラは一つ小さな溜息をつくと、やれやれと言った表情で足の動きを止めた。
「分かったわ。でも下手に勝負をすると軍規違反に繋がってしまうから……トレーニングメニューの一環としての試合。それでも良いわよね」
「むろんだ」
他の者達も異存はなかった。
こうなるともう自分のトレーニングどころではない。その目はイザークとサラの動向に釘付けになっていた。
「それで? 試合の種目は何にするのかしら?」
「そうだな……この場所ではナイフ戦など無理だし、シミュレーションルームは今は使用できない。組み手で良いだろう」
その言葉に、サラは少し嫌そうな顔を見せる。そしてもちろんそれを見逃すイザークではない。
「どうした? 組み手は苦手か?」
「……別に、構わない」
サラはそう言って立ち上がると軽く屈伸運動をし、部屋の中央にあるスペースに立った。
「ここで良いのね?」
「ああ。審判は……」
「あ、俺やるわ」
すかさずラスティが手を挙げた。
サラが少し心配ではあるが、それでもイザークの言う通り、本当に何もできないような人間なら軍になど居ない方が良い。逆に本当に力があるのなら、クルーゼ隊にとって貴重な人材となる。
イザークとサラが向かい合ったのを確認すると、ラスティはゆっくりと手を上げ――。
「イザーク・ジュールとサラ・グレンの試合を始めます。……始め!」
勢いよく手を振り下ろしながら合図した。