桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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一方、サラはというとーー。
「つ、疲れた……」
ロッカールームの奥まで辿り着いた途端にへなへなと座り込む。げっそりとした表情は、その疲れ具合を如実に表していた。
「こんな生活がこれからずっと続くの……?」
ロッカーにもたれ、がっくりと首を項垂れる。まだここに来てから数時間しか経っていないと言うのに、この有様。
「きつい、な。」
大きな溜息が出てしまう。
ここにいるのは、あの日……アスランにまばゆいばかりの笑顔を見せていた、サラ・フユツキその人だった。
「あんな条件飲まなきゃ良かったのかなぁ」
かけていた伊達眼鏡を放り出し、膝を抱えて顔を埋めながらそう呟いたサラの背中は、彼女をとても小さく見せている。その頼りない姿は、多分外にいる少年達には想像もできないだろう。
「嫌われちゃったよね……やっぱり」
ぽつりと漏らしたその言葉に秘められた想いは、決して彼の人には届かない。
「アスラン、驚いた顔してたなぁ。私だって逆の立場だったら驚くと思うもん」
再び漏れる溜息。
一人でいる時のみ出てくることを許される、本当の自分。先ほどまでの高飛車な態度が、実は作られた物だと言うことは、誰にも知られてはならない。元々明朗快活で感情豊かなサラにとっては、とても辛い事だった。
サラがザフトに入隊する為の条件。それは知力、体力、精神力諸々全てにおいて、トップクラスで有り続けること。
それには中途半端な優しさや、なれ合いなどにうつつを抜かすことなく、常に的確な判断を下せるだけの器を兼ね備えていなければならない。だからこそサラの入隊試験は、他の者達とは比べ物にならないほどに難易度の高いものだったのだ。
実際のところ、よく生きて帰って来れたものだと、自分で思い返してみても不思議なくらいで。もう一度同じ事をしろと言われても、確実に帰ってこられるという自信はこれっぽっちもないほどに、試験は厳しく過酷なものだった。
「でもあれを乗り越えて、やっと自由を手に入れたんだから。チャンスはまだまだあるよね……?」
自分に言い聞かせるように、サラが呟く。その言葉に応えるように、サラの髪がさらさらと流れ落ちた。
どんな危険を冒してでも、サラはザフトに入隊したい理由が2つあった。
一つは、過去との決別。
もう一つは……ずっと抱き続けていた淡い想いの成長。
この2つの願いが叶うなら、どうなっても構わない。そんな矛盾した願いがサラを強くし、突き動かす。
結果、叶えられた一つ目の願い。
二つ目は未だだけれど、それでもーー。
「いつか……仲良くなれたらいいな」
例え自分の表面的な部分を殺していても、心の内はそのままで生き続けていられる。それに、確かに自分を偽ることはきついけれど、今までに比べれば格段に幸せなのだから。
緩慢な動きで着替えを始めるサラ。肌が露わになると共に見えてくる物は、白い肌だけではなく、無数の傷が刻まれていた。
年頃の少女の体にあるはずのない傷跡が、所狭しと並んでいる。一体何をすれば、このような傷を受けるのか。それ程に凄惨な傷跡が、ザフトの赤い軍服の下には隠されていた。
だが、サラはその事は気にもせず、もくもくと着替えを続ける。ラスティに渡されたウェアを着終われば、完全に隠れてしまう物だからだろうか。なるほど、確かに傷は服に隠れてしまうような場所にしか存在してはいなかった。
「さて、と」
軍服をハンガーに掛け、ロッカーに付いている小さな鏡に向かう。放り出していた眼鏡をかけ直すと、自然と表情が険しくなるようだった。
「早くこの環境に慣れてしまわなきゃね」
鏡の中の自分に囁きかけたサラは、もう一度大きな溜息をつきながらロッカーを閉めた。
「つ、疲れた……」
ロッカールームの奥まで辿り着いた途端にへなへなと座り込む。げっそりとした表情は、その疲れ具合を如実に表していた。
「こんな生活がこれからずっと続くの……?」
ロッカーにもたれ、がっくりと首を項垂れる。まだここに来てから数時間しか経っていないと言うのに、この有様。
「きつい、な。」
大きな溜息が出てしまう。
ここにいるのは、あの日……アスランにまばゆいばかりの笑顔を見せていた、サラ・フユツキその人だった。
「あんな条件飲まなきゃ良かったのかなぁ」
かけていた伊達眼鏡を放り出し、膝を抱えて顔を埋めながらそう呟いたサラの背中は、彼女をとても小さく見せている。その頼りない姿は、多分外にいる少年達には想像もできないだろう。
「嫌われちゃったよね……やっぱり」
ぽつりと漏らしたその言葉に秘められた想いは、決して彼の人には届かない。
「アスラン、驚いた顔してたなぁ。私だって逆の立場だったら驚くと思うもん」
再び漏れる溜息。
一人でいる時のみ出てくることを許される、本当の自分。先ほどまでの高飛車な態度が、実は作られた物だと言うことは、誰にも知られてはならない。元々明朗快活で感情豊かなサラにとっては、とても辛い事だった。
サラがザフトに入隊する為の条件。それは知力、体力、精神力諸々全てにおいて、トップクラスで有り続けること。
それには中途半端な優しさや、なれ合いなどにうつつを抜かすことなく、常に的確な判断を下せるだけの器を兼ね備えていなければならない。だからこそサラの入隊試験は、他の者達とは比べ物にならないほどに難易度の高いものだったのだ。
実際のところ、よく生きて帰って来れたものだと、自分で思い返してみても不思議なくらいで。もう一度同じ事をしろと言われても、確実に帰ってこられるという自信はこれっぽっちもないほどに、試験は厳しく過酷なものだった。
「でもあれを乗り越えて、やっと自由を手に入れたんだから。チャンスはまだまだあるよね……?」
自分に言い聞かせるように、サラが呟く。その言葉に応えるように、サラの髪がさらさらと流れ落ちた。
どんな危険を冒してでも、サラはザフトに入隊したい理由が2つあった。
一つは、過去との決別。
もう一つは……ずっと抱き続けていた淡い想いの成長。
この2つの願いが叶うなら、どうなっても構わない。そんな矛盾した願いがサラを強くし、突き動かす。
結果、叶えられた一つ目の願い。
二つ目は未だだけれど、それでもーー。
「いつか……仲良くなれたらいいな」
例え自分の表面的な部分を殺していても、心の内はそのままで生き続けていられる。それに、確かに自分を偽ることはきついけれど、今までに比べれば格段に幸せなのだから。
緩慢な動きで着替えを始めるサラ。肌が露わになると共に見えてくる物は、白い肌だけではなく、無数の傷が刻まれていた。
年頃の少女の体にあるはずのない傷跡が、所狭しと並んでいる。一体何をすれば、このような傷を受けるのか。それ程に凄惨な傷跡が、ザフトの赤い軍服の下には隠されていた。
だが、サラはその事は気にもせず、もくもくと着替えを続ける。ラスティに渡されたウェアを着終われば、完全に隠れてしまう物だからだろうか。なるほど、確かに傷は服に隠れてしまうような場所にしか存在してはいなかった。
「さて、と」
軍服をハンガーに掛け、ロッカーに付いている小さな鏡に向かう。放り出していた眼鏡をかけ直すと、自然と表情が険しくなるようだった。
「早くこの環境に慣れてしまわなきゃね」
鏡の中の自分に囁きかけたサラは、もう一度大きな溜息をつきながらロッカーを閉めた。