想いをカードに乗せて(ニコル悲恋)
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12月24日午後9時前。世間はクリスマス一色だった。
街のあちこちが飾り立てられ、色とりどりのネオンの光に包まれている。いつも以上に活気付いた街は今、恋人達の聖域で。甘い囁きを交わす二人が、視界から消えることはない。
そんな中、私は一人家でケーキを頬張っていた。
戦争が終わって、初めて迎えたクリスマスイブ。本当なら、私も一緒に過ごす相手がいる予定だったのだが……。
「約束……したのにな」
もそもそと、味のしないケーキを頬張りながらピアノの上を見る。そこには私の最愛の人の写真。
「初めて約束破ったね。ニコル」
楽譜を抱え、にっこりと微笑んでいるニコルの写真を、私は恨めしそうに見つめた。
「そしてこれからも破り続けるんだね。私との約束」
『来年は、クリスマスを一緒に過ごしましょうね』
ニコルが言ったその言葉は、結局果たされる事はなく。
「ニコルと一緒に、クリスマスを過ごしたかったな……」
私達コーディネーターを守るため、戦って若い命を散らした彼。もう二度と、彼と言葉を交わすことすらできない。
「ニコル……」
ピンポーン
突如チャイムが鳴り、思わず驚いてフォークを取り落としてしまう。再び鳴ったチャイムで慌ててドアフォンのモニターを観ると、そこにいたのは……。
「サ、サンタ!?」
『どうも~。クリスマスメールをお届けに上がりました~!』
「はぁ!?」
よく見ると、それはいつもの見慣れた郵便局員。
「……クリスマス仕様の制服ですか?」
『そうなんですよ~。毎年イブの夜は特別郵便を配達するようになってまして。ってことでこれ、ポストに入れておきますね』
サンタらしく、背負っていた大きな袋から1枚の封筒を取り出し、ポストへと放り込む。
『では、良いクリスマスを~』
笑顔で手を振りつつモニターから消えていくサンタな郵便局員を、私はしばし呆気にとられながら見つめていた。
「そんなのがあったのね」
世の中色々あるものだ、と気を取り直し、ポストから封筒を取り出す。真っ白な封筒には、宛名が書かれているだけで、差出人の名は書かれていない。ただ、感触から中には少し厚みのあるカードが入っていると言うことは分かった。
「私にクリスマスカードを送る人なんていたかなぁ?」
友達は皆彼氏持ちで、クリスマスに私のことなんか気にする奴らじゃない。現在出張中の両親からは、もうプレゼントはもらっている。……となると、誰?
ドキドキしながら封を開けてみる。
二つ折りになったカードはとても趣味の良い、可愛いデザインの物だった。開くと中には、小さなモニターとボタン。
これを押せばいいのかな? とボタンを押すと電源が入り、映し出されるクリスマスツリー。そして……。
ポロロン
聞こえてきたピアノの音。柔らかな旋律が、私の心に染み込んでくる。
「この曲は……!」
ずっと慣れ親しんだ曲名が浮かぶと同時に、モニターの画面が変わる。そしてそこに映ったのはーー。
『突然のクリスマスカード、驚きましたよね。素敵なクリスマスを過ごしていますか? なんだかこういう映像のメッセージって照れちゃいますね。実はこれ、今サラが過ごしているクリスマスの1年前に撮ってるんですよ。1年後のクリスマス、僕たちは相変わらずなんでしょうね、できれば一歩でも前に進んでくれていれば良いのですが……難しいかな。多分きっと、今そこにいる僕は直接言えないと思うので、1年前の僕が代わりに言います。僕はサラが好きです。これからは恋人としてずっと、僕のそばにいて下さい。……これ、僕からのクリスマスプレゼントの一つに加えさせてもらっても良いですか?』
「……ニコ……ル……っ!!」
少しはにかんだ笑顔で映っているニコル。曲に気付いた瞬間から浮かび始めた涙は、もう止まらない。
こんな……こんな事って……!
もう聞くことができないと思っていたニコルの声。
もう見ることはないと思っていたニコルの姿。
言われる事なんてないと思っていたニコルからの……告白。
「ニコル……私も好き……大好きよ。ずっと、今も昔も変わらず……!」
BGMとして流れていた、ニコルの作った曲が終わっても、涙が涸れることはない。
『メリークリスマス、サラ』
その言葉を最後に、ニコルの姿が消える。それでも私は涙を流し続けた。嬉しさと……切なさで。
「素敵なクリスマスプレゼント、ありがとう」
そう言って、ニコルの想いの詰まったカードを抱きしめながらーー。
〜FIN〜
街のあちこちが飾り立てられ、色とりどりのネオンの光に包まれている。いつも以上に活気付いた街は今、恋人達の聖域で。甘い囁きを交わす二人が、視界から消えることはない。
そんな中、私は一人家でケーキを頬張っていた。
戦争が終わって、初めて迎えたクリスマスイブ。本当なら、私も一緒に過ごす相手がいる予定だったのだが……。
「約束……したのにな」
もそもそと、味のしないケーキを頬張りながらピアノの上を見る。そこには私の最愛の人の写真。
「初めて約束破ったね。ニコル」
楽譜を抱え、にっこりと微笑んでいるニコルの写真を、私は恨めしそうに見つめた。
「そしてこれからも破り続けるんだね。私との約束」
『来年は、クリスマスを一緒に過ごしましょうね』
ニコルが言ったその言葉は、結局果たされる事はなく。
「ニコルと一緒に、クリスマスを過ごしたかったな……」
私達コーディネーターを守るため、戦って若い命を散らした彼。もう二度と、彼と言葉を交わすことすらできない。
「ニコル……」
ピンポーン
突如チャイムが鳴り、思わず驚いてフォークを取り落としてしまう。再び鳴ったチャイムで慌ててドアフォンのモニターを観ると、そこにいたのは……。
「サ、サンタ!?」
『どうも~。クリスマスメールをお届けに上がりました~!』
「はぁ!?」
よく見ると、それはいつもの見慣れた郵便局員。
「……クリスマス仕様の制服ですか?」
『そうなんですよ~。毎年イブの夜は特別郵便を配達するようになってまして。ってことでこれ、ポストに入れておきますね』
サンタらしく、背負っていた大きな袋から1枚の封筒を取り出し、ポストへと放り込む。
『では、良いクリスマスを~』
笑顔で手を振りつつモニターから消えていくサンタな郵便局員を、私はしばし呆気にとられながら見つめていた。
「そんなのがあったのね」
世の中色々あるものだ、と気を取り直し、ポストから封筒を取り出す。真っ白な封筒には、宛名が書かれているだけで、差出人の名は書かれていない。ただ、感触から中には少し厚みのあるカードが入っていると言うことは分かった。
「私にクリスマスカードを送る人なんていたかなぁ?」
友達は皆彼氏持ちで、クリスマスに私のことなんか気にする奴らじゃない。現在出張中の両親からは、もうプレゼントはもらっている。……となると、誰?
ドキドキしながら封を開けてみる。
二つ折りになったカードはとても趣味の良い、可愛いデザインの物だった。開くと中には、小さなモニターとボタン。
これを押せばいいのかな? とボタンを押すと電源が入り、映し出されるクリスマスツリー。そして……。
ポロロン
聞こえてきたピアノの音。柔らかな旋律が、私の心に染み込んでくる。
「この曲は……!」
ずっと慣れ親しんだ曲名が浮かぶと同時に、モニターの画面が変わる。そしてそこに映ったのはーー。
『突然のクリスマスカード、驚きましたよね。素敵なクリスマスを過ごしていますか? なんだかこういう映像のメッセージって照れちゃいますね。実はこれ、今サラが過ごしているクリスマスの1年前に撮ってるんですよ。1年後のクリスマス、僕たちは相変わらずなんでしょうね、できれば一歩でも前に進んでくれていれば良いのですが……難しいかな。多分きっと、今そこにいる僕は直接言えないと思うので、1年前の僕が代わりに言います。僕はサラが好きです。これからは恋人としてずっと、僕のそばにいて下さい。……これ、僕からのクリスマスプレゼントの一つに加えさせてもらっても良いですか?』
「……ニコ……ル……っ!!」
少しはにかんだ笑顔で映っているニコル。曲に気付いた瞬間から浮かび始めた涙は、もう止まらない。
こんな……こんな事って……!
もう聞くことができないと思っていたニコルの声。
もう見ることはないと思っていたニコルの姿。
言われる事なんてないと思っていたニコルからの……告白。
「ニコル……私も好き……大好きよ。ずっと、今も昔も変わらず……!」
BGMとして流れていた、ニコルの作った曲が終わっても、涙が涸れることはない。
『メリークリスマス、サラ』
その言葉を最後に、ニコルの姿が消える。それでも私は涙を流し続けた。嬉しさと……切なさで。
「素敵なクリスマスプレゼント、ありがとう」
そう言って、ニコルの想いの詰まったカードを抱きしめながらーー。
〜FIN〜
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