Dear my fairy(ニコル)
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「音楽は人の心を和ませてくれる、まるで魔法のようなものですよね」
「そうね。だから私達は、どんな時でも音楽から離れることが出来ない」
「いつか一緒に連弾しましょうね。大きなコンサートホールで。二人だけのコンサートをしましょう」
「ええ、全ての人達の心に届く、素晴らしいコンサートにしましょう」
にっこりと笑ったニコルの笑顔が、今も目に焼き付いて離れない。あれはほんの数日前のこと。
あの時の私には、幸せな未来しか見えてはいなかった……。
私、サラ=フユツキは、アマチュアピアニスト。一応アマチュア界ではそれなりに名を通らせていた。小さくはあるが、コンサートを開けば確実に満席に出来るだけの自身は持っている。そんな私が今一番憧れているピアニストが――。
ニコル=アマルフィ
世界には名だたる演奏者がそれこそ腐るほど存在しているが、私はこの若いピアニストの音色が心の底から好きで。彼のコンサートのチケットは必ず購入し、いつか彼のような演奏者になりたいと願っていた。
だから偶然にもとある企業に招待されて出席した小さなイベントで、同じ演奏者としてニコルと出会えたことは幸運だった。
「初めまして。ニコル=アマルフィです。」
「初めまして……サラ=フユツキ……です」
イベント自体が小さい物のため、楽屋は2人で1つ。私はなんとニコルと同じ部屋だった。
憧れの人が私に語りかけ、笑顔でその手をさしのべてくれている。
あまりの喜びに興奮し、緊張してしまった私は、手を差し出すことも忘れてじっとニコルを見つめていた。
「サラさん……? 僕の顔に何か付いてます?」
面白そうに尋ねてくるニコルに、私は顔を真っ赤に染めてしまう。
「す、すみません。なんかもう吃驚しちゃって……だって、ニコルさんと同じ場所で演奏できるなんて……光栄で……」
声が上擦る。同い年の男の子に、ここまで緊張することなど今までには無かった。
「僕こそ光栄ですよ。サラさんのピアノは、心に元気と勇気を与えてくれる。辛いことがあると、あなたの曲を聴くと元気になれるんですよ」
「……!? あの……私の事をご存知だったんですか……?」
「もちろんですよ。サラさんのチケットを取るのって、かなり至難の業なんですよね」
「こ、コンサートにもいらして下さってたんですかっ!?」
驚きで、思わず叫んでしまう。私なんかのコンサートにこんな凄い人が……。私の存在など知らないと思っていただけに、その衝撃は大きかった。
「実はCDも全部買わせていただいてたりするんですよ」
「わ、私もニコルさんのコンサートとCD、網羅させていただいてますっ!!」
握り拳で力説する私に、ニコルは突如吹き出すと、思い切り笑い出した。
「え~っと……ニコルさん?」
「あはははは……すみません。サラさんって面白い方なんですね。『The fairy of sound』と呼ばれる方がどのような方なのか、凄く興味があったんですが……」
――The fairy of sound
これは信じられないことだけれど、私の通称。
全体的に力強い演奏が主な私がたまたま弾いたとある曲が、偶然その時見に来ていた高名な演奏家に認められ、付けられた名前。
その時弾いた曲は……ニコルの曲だった。
ニコルを知り、はまり込むきっかけとなったその曲は、優しく魂に響く。弾いている私ですら心安らぐその曲が、人々の心に何も残さないはずはなかった。
そんな素晴らしい曲を生み出し、演奏できるニコルが、目の前で大笑いをしている。それも、私のことで。
ちょっぴり、ショックだった。
「あの……幻滅しちゃいました? こんなので」
あだ名が妙に大仰だから、落ち着きのある女性を想像していたのだろうか? 私は、嫌われてしまう……?
「いえいえ、その逆です。ますます好きになりました」
「す……!?」
ストレートな言葉を耳にし、私の顔は茹で蛸と化した。ひょっとしたら本当に頭から湯気が出ていたかもしれない。
「サラさん、あなたは音楽だけでなく、存在しているだけで人を元気にしてしまえるパワーを持っている方なんですね」
「そ、そんなそんな! 私なんてまだまだです! ニコルさんの方が優しくて、温かくて……え~っと……とにかく全てが素敵です!!」
「ありがとうございます」
にっこりと笑顔を見せてくれるニコルは、改めて見てみると、コンサート会場のスクリーンや雑誌の記事以上に子供らしさを感じられた。
その笑顔に不思議と親近感と……安心感を覚える。それと同時にわき上がってくるもう一つの感情。
「あの……私……」
私は、ニコルに話しかけようとした。が、しかし、
「ニコルさん、出番です」
ノックの音と共に、ニコルを呼びに来たスタッフが扉を開ける。
「分かりました。……すみません。お話の途中ですが、後ほど……」
「はい。私もここで聴かせていただきますね」
「是非」
ぺこりと頭を下げると、ニコルは会場へと向かって行った。
「そうね。だから私達は、どんな時でも音楽から離れることが出来ない」
「いつか一緒に連弾しましょうね。大きなコンサートホールで。二人だけのコンサートをしましょう」
「ええ、全ての人達の心に届く、素晴らしいコンサートにしましょう」
にっこりと笑ったニコルの笑顔が、今も目に焼き付いて離れない。あれはほんの数日前のこと。
あの時の私には、幸せな未来しか見えてはいなかった……。
私、サラ=フユツキは、アマチュアピアニスト。一応アマチュア界ではそれなりに名を通らせていた。小さくはあるが、コンサートを開けば確実に満席に出来るだけの自身は持っている。そんな私が今一番憧れているピアニストが――。
ニコル=アマルフィ
世界には名だたる演奏者がそれこそ腐るほど存在しているが、私はこの若いピアニストの音色が心の底から好きで。彼のコンサートのチケットは必ず購入し、いつか彼のような演奏者になりたいと願っていた。
だから偶然にもとある企業に招待されて出席した小さなイベントで、同じ演奏者としてニコルと出会えたことは幸運だった。
「初めまして。ニコル=アマルフィです。」
「初めまして……サラ=フユツキ……です」
イベント自体が小さい物のため、楽屋は2人で1つ。私はなんとニコルと同じ部屋だった。
憧れの人が私に語りかけ、笑顔でその手をさしのべてくれている。
あまりの喜びに興奮し、緊張してしまった私は、手を差し出すことも忘れてじっとニコルを見つめていた。
「サラさん……? 僕の顔に何か付いてます?」
面白そうに尋ねてくるニコルに、私は顔を真っ赤に染めてしまう。
「す、すみません。なんかもう吃驚しちゃって……だって、ニコルさんと同じ場所で演奏できるなんて……光栄で……」
声が上擦る。同い年の男の子に、ここまで緊張することなど今までには無かった。
「僕こそ光栄ですよ。サラさんのピアノは、心に元気と勇気を与えてくれる。辛いことがあると、あなたの曲を聴くと元気になれるんですよ」
「……!? あの……私の事をご存知だったんですか……?」
「もちろんですよ。サラさんのチケットを取るのって、かなり至難の業なんですよね」
「こ、コンサートにもいらして下さってたんですかっ!?」
驚きで、思わず叫んでしまう。私なんかのコンサートにこんな凄い人が……。私の存在など知らないと思っていただけに、その衝撃は大きかった。
「実はCDも全部買わせていただいてたりするんですよ」
「わ、私もニコルさんのコンサートとCD、網羅させていただいてますっ!!」
握り拳で力説する私に、ニコルは突如吹き出すと、思い切り笑い出した。
「え~っと……ニコルさん?」
「あはははは……すみません。サラさんって面白い方なんですね。『The fairy of sound』と呼ばれる方がどのような方なのか、凄く興味があったんですが……」
――The fairy of sound
これは信じられないことだけれど、私の通称。
全体的に力強い演奏が主な私がたまたま弾いたとある曲が、偶然その時見に来ていた高名な演奏家に認められ、付けられた名前。
その時弾いた曲は……ニコルの曲だった。
ニコルを知り、はまり込むきっかけとなったその曲は、優しく魂に響く。弾いている私ですら心安らぐその曲が、人々の心に何も残さないはずはなかった。
そんな素晴らしい曲を生み出し、演奏できるニコルが、目の前で大笑いをしている。それも、私のことで。
ちょっぴり、ショックだった。
「あの……幻滅しちゃいました? こんなので」
あだ名が妙に大仰だから、落ち着きのある女性を想像していたのだろうか? 私は、嫌われてしまう……?
「いえいえ、その逆です。ますます好きになりました」
「す……!?」
ストレートな言葉を耳にし、私の顔は茹で蛸と化した。ひょっとしたら本当に頭から湯気が出ていたかもしれない。
「サラさん、あなたは音楽だけでなく、存在しているだけで人を元気にしてしまえるパワーを持っている方なんですね」
「そ、そんなそんな! 私なんてまだまだです! ニコルさんの方が優しくて、温かくて……え~っと……とにかく全てが素敵です!!」
「ありがとうございます」
にっこりと笑顔を見せてくれるニコルは、改めて見てみると、コンサート会場のスクリーンや雑誌の記事以上に子供らしさを感じられた。
その笑顔に不思議と親近感と……安心感を覚える。それと同時にわき上がってくるもう一つの感情。
「あの……私……」
私は、ニコルに話しかけようとした。が、しかし、
「ニコルさん、出番です」
ノックの音と共に、ニコルを呼びに来たスタッフが扉を開ける。
「分かりました。……すみません。お話の途中ですが、後ほど……」
「はい。私もここで聴かせていただきますね」
「是非」
ぺこりと頭を下げると、ニコルは会場へと向かって行った。
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