一歩進んだ『好き』の気持ちを(ニコル)
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ピピピッピピピッ
聞き慣れた電子音が部屋に響く。
「もう……時間……?」
緩慢な動きで目覚ましのスイッチを探し、押す。ゆっくりと覚醒する意識が最初に気付いたのは、香ばしいコーヒーの香りだった。
「ん……何でコーヒーの香りが……?」
自分以外にこの部屋でコーヒーを入れる人間がいるはずないのに。不思議に思い、コーヒーメーカーのある方へと視線を向けると――。
「おはよ、ニコル」
「サラ! お早うございます」
カップにコーヒーを注いでいるサラがいた。
いつの間に部屋に入っていたんだろう?既にハンガーには綺麗になった軍服がかけられており、僕の方にやってくるサラの手には、コーヒーだけでなく朝食のお盆も乗せられていた。
「調子はどう?」
「ありがとうございます。お陰様でもうすっかり」
「そっか。良かった……朝食を取ってきたから、ちゃんと食べてね。あと食後の薬はこれ」
「すみません。何から何まで」
「な~に言ってるのよ。このくらい気にしないで。はい、これ。ニコルはカフェオレが好きだったよね?」
「ええ、ありがとうございます」
差し出されたカップを受け取ろうと手を伸ばす。
それを受け取る時、僕の指がサラの手に偶然触れた。と、その瞬間、サラがびくりと手を引く。
カップが落ちてしまいそうになり、僕は慌ててカップを両手で支えたが、ほんの一瞬支えを失ったカップからは数滴のカフェオレがこぼれてしまった。
「熱っ!」
滴が僕の手にかかり、思わず声をあげてしまう。
でもたった数滴という事もあり、それは僕の腕にほんのり赤みを残すだけで。痛みもすぐに収まり、大したことはないようだった。
だがそれとは対照的に、サラは顔面蒼白になる。
「ごめ……っ! ニコル、大丈夫!?」
「大丈夫ですよ。大したことはありません」
「ごめんね、ごめんね、ニコル!」
「謝らないでくださいよ。このくらい大したことありませんから」
「でも、私が……」
まるで僕が大けがでもしたかのようにおろおろしているサラ。
僕の事にこんなに一生懸命になってくれてとても嬉しかった。だからこそ……気になってしまう。
「本当に大丈夫ですからね、サラ。でもなんでそんなに僕を警戒するんですか?」
「警戒……?」
「今も突然手を引いたし、昨夜も慌てて部屋を出ていったし」
「それは……」
「それは?」
また、だ。サラの頬がほんのりと赤くなる。一体どうして……?
「ニコルが……」
「僕が?」
サラは、僕から目をそらしながら言った。
「男の子だから……」
「……はい?」
僕が男の子だから?
僕って昔は女の子だったんだろうか。そんなふざけた事を考えてみたりもしたが、納得などいくはずもない。
「僕は昔から男ですよ?」
「それは分かってるよ。そうじゃなくて……なんていうかニコルも私も成長してて、その……意識しちゃった……かな? みたいな……」
湯気でも出そうな勢いで顔を真っ赤にするサラ。その可愛らしさに、僕はくらくらしてしまった。
こんなに可愛い人でしたかね? サラって。僕の中ではいつもお姉さんぶってて、気が強くて、頭が良くて、常に僕より一歩先を行ってて……下手したら母親のような存在だった。
でも今目の前にいるサラは、思わず守りたくなってしまうほどに可愛らしくて、女の子らしくて――。
「あ、あはははは……何言ってるんだろ、私。気にしないで、ニコル」
「気にしますよ。僕も……同じみたいですから」
「え……?」
僕は、サラの手をそっと引いた。
「わっ」
サラがバランスを失い、僕に体重を預ける形となる。
「ニコル?」
「昔は僕の方が小さかったのに、いつの間にか僕はサラより大きくなっていたんですね」
重ねた手は、僕の方が明らかに大きかった。近付いたサラの顔は、幼さが抜け始め、大人の女性へと変化しようとしている。
「サラって……こんなに可愛かったんですね」
「なっ……! ニコルってば何恥ずかしい事言ってるのよ! そ、そんなの分かり切った事じゃない!」
顔を真っ赤にしながら、照れ隠しするように怒鳴る聖。
本当に可愛い。
あまりに可愛いから、僕はつい――。
「ニ、ニコ……っ!!」
「ほんと、可愛いですね」
ほんの一瞬温もりを分かち合った唇を押さえて、赤くなっていた顔を更に赤くするサラ。素直なその反応が嬉しくて、僕は思わず笑ってしまった。
「ニ……ニコル・・・ッ!!」
「あはははは。ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまじゃな~い! 食べるなら朝食を食べなさい!」
「じゃあ、前菜と言うことで」
「私は食べものじゃな~い!!」
「食後のデザートもお願いしますね」
「~~っ!」
幼い頃から一緒にいて、仲の良かったサラは両親の次に大好きだった。そして今、その大好きに新たなスパイスが振りかけられる。
『好き』は『特別な好き』へと変化を始め――。
「大好きですよ。サラ」
「な、なに!? いきなり……」
「僕、サラの事好きになっちゃったみたいです」
「え……っと……?」
「僕って好きになったら一直線なので、覚悟しておいてくださいね」
「か、覚悟って……」
「ね?」
再び僕はサラに口付けた。
「返事はすぐでなくて構いませんよ。いつまでも待ってますから」
「う、うん……」
時間になり、僕は隊長室へと向かった。
昨日はあれだけ体調が悪そうだったのに、とアスランに不思議そうに言われた僕の顔は、きっと満面の笑みを浮かべていたに違いない。
その数時間後には、僕はイザークやディアッカに冷やかされる事となる。幸せって、言葉にしなくてもやはりばれてしまう物なのですね。
「私も……ニコルが好きだよ。」
時を待たずして返された、サラの言葉が耳から離れない。
この幸せを反芻しながら、僕はブリッツに乗り込んだ。
今日の任務が終わったら、真っ先にサラの所へ行こう。そう心に誓って。
~FIN~
聞き慣れた電子音が部屋に響く。
「もう……時間……?」
緩慢な動きで目覚ましのスイッチを探し、押す。ゆっくりと覚醒する意識が最初に気付いたのは、香ばしいコーヒーの香りだった。
「ん……何でコーヒーの香りが……?」
自分以外にこの部屋でコーヒーを入れる人間がいるはずないのに。不思議に思い、コーヒーメーカーのある方へと視線を向けると――。
「おはよ、ニコル」
「サラ! お早うございます」
カップにコーヒーを注いでいるサラがいた。
いつの間に部屋に入っていたんだろう?既にハンガーには綺麗になった軍服がかけられており、僕の方にやってくるサラの手には、コーヒーだけでなく朝食のお盆も乗せられていた。
「調子はどう?」
「ありがとうございます。お陰様でもうすっかり」
「そっか。良かった……朝食を取ってきたから、ちゃんと食べてね。あと食後の薬はこれ」
「すみません。何から何まで」
「な~に言ってるのよ。このくらい気にしないで。はい、これ。ニコルはカフェオレが好きだったよね?」
「ええ、ありがとうございます」
差し出されたカップを受け取ろうと手を伸ばす。
それを受け取る時、僕の指がサラの手に偶然触れた。と、その瞬間、サラがびくりと手を引く。
カップが落ちてしまいそうになり、僕は慌ててカップを両手で支えたが、ほんの一瞬支えを失ったカップからは数滴のカフェオレがこぼれてしまった。
「熱っ!」
滴が僕の手にかかり、思わず声をあげてしまう。
でもたった数滴という事もあり、それは僕の腕にほんのり赤みを残すだけで。痛みもすぐに収まり、大したことはないようだった。
だがそれとは対照的に、サラは顔面蒼白になる。
「ごめ……っ! ニコル、大丈夫!?」
「大丈夫ですよ。大したことはありません」
「ごめんね、ごめんね、ニコル!」
「謝らないでくださいよ。このくらい大したことありませんから」
「でも、私が……」
まるで僕が大けがでもしたかのようにおろおろしているサラ。
僕の事にこんなに一生懸命になってくれてとても嬉しかった。だからこそ……気になってしまう。
「本当に大丈夫ですからね、サラ。でもなんでそんなに僕を警戒するんですか?」
「警戒……?」
「今も突然手を引いたし、昨夜も慌てて部屋を出ていったし」
「それは……」
「それは?」
また、だ。サラの頬がほんのりと赤くなる。一体どうして……?
「ニコルが……」
「僕が?」
サラは、僕から目をそらしながら言った。
「男の子だから……」
「……はい?」
僕が男の子だから?
僕って昔は女の子だったんだろうか。そんなふざけた事を考えてみたりもしたが、納得などいくはずもない。
「僕は昔から男ですよ?」
「それは分かってるよ。そうじゃなくて……なんていうかニコルも私も成長してて、その……意識しちゃった……かな? みたいな……」
湯気でも出そうな勢いで顔を真っ赤にするサラ。その可愛らしさに、僕はくらくらしてしまった。
こんなに可愛い人でしたかね? サラって。僕の中ではいつもお姉さんぶってて、気が強くて、頭が良くて、常に僕より一歩先を行ってて……下手したら母親のような存在だった。
でも今目の前にいるサラは、思わず守りたくなってしまうほどに可愛らしくて、女の子らしくて――。
「あ、あはははは……何言ってるんだろ、私。気にしないで、ニコル」
「気にしますよ。僕も……同じみたいですから」
「え……?」
僕は、サラの手をそっと引いた。
「わっ」
サラがバランスを失い、僕に体重を預ける形となる。
「ニコル?」
「昔は僕の方が小さかったのに、いつの間にか僕はサラより大きくなっていたんですね」
重ねた手は、僕の方が明らかに大きかった。近付いたサラの顔は、幼さが抜け始め、大人の女性へと変化しようとしている。
「サラって……こんなに可愛かったんですね」
「なっ……! ニコルってば何恥ずかしい事言ってるのよ! そ、そんなの分かり切った事じゃない!」
顔を真っ赤にしながら、照れ隠しするように怒鳴る聖。
本当に可愛い。
あまりに可愛いから、僕はつい――。
「ニ、ニコ……っ!!」
「ほんと、可愛いですね」
ほんの一瞬温もりを分かち合った唇を押さえて、赤くなっていた顔を更に赤くするサラ。素直なその反応が嬉しくて、僕は思わず笑ってしまった。
「ニ……ニコル・・・ッ!!」
「あはははは。ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまじゃな~い! 食べるなら朝食を食べなさい!」
「じゃあ、前菜と言うことで」
「私は食べものじゃな~い!!」
「食後のデザートもお願いしますね」
「~~っ!」
幼い頃から一緒にいて、仲の良かったサラは両親の次に大好きだった。そして今、その大好きに新たなスパイスが振りかけられる。
『好き』は『特別な好き』へと変化を始め――。
「大好きですよ。サラ」
「な、なに!? いきなり……」
「僕、サラの事好きになっちゃったみたいです」
「え……っと……?」
「僕って好きになったら一直線なので、覚悟しておいてくださいね」
「か、覚悟って……」
「ね?」
再び僕はサラに口付けた。
「返事はすぐでなくて構いませんよ。いつまでも待ってますから」
「う、うん……」
時間になり、僕は隊長室へと向かった。
昨日はあれだけ体調が悪そうだったのに、とアスランに不思議そうに言われた僕の顔は、きっと満面の笑みを浮かべていたに違いない。
その数時間後には、僕はイザークやディアッカに冷やかされる事となる。幸せって、言葉にしなくてもやはりばれてしまう物なのですね。
「私も……ニコルが好きだよ。」
時を待たずして返された、サラの言葉が耳から離れない。
この幸せを反芻しながら、僕はブリッツに乗り込んだ。
今日の任務が終わったら、真っ先にサラの所へ行こう。そう心に誓って。
~FIN~
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