一歩進んだ『好き』の気持ちを(ニコル)
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「っくしゅん!」
「風邪か? ニコル」
「そうみたいですね。でも大したことありま……っくしゅん!」
「……あまり無理をするなよ」
「あはははは、すみま……っくしゅん!」
今朝からどうも頭が重いとは思っていた。微熱はあったものの、どうせすぐに下がるだろうといつも通りに任務をこなしていたのだけれど、どうやら自分が思っている以上に症状は重かったようで。
先ほどから、くしゃみが止まらなくなっていた。
それと共に思考力も落ちてくる。
「っくしゅん!」
「ニコル……今日はもう大した任務もないだろうし、部屋に戻った方が良いんじゃないのか?」
「いえ、そうもいきませんよ。あと数時間くらいなら大丈……っくしゅん!」
「大丈夫じゃない。お前はもう部屋に戻れ。これは隊長命令だ。」
「アスラン、でも……」
「そんな調子で任務が遂行できるか?」
「それは……」
「その代わり、明日までにはしっかり治しておけよ」
「すみませ……っくしゅん!」
――情けない。
風邪をひいてしまうなんて、気が緩んでいる証拠だ。しかもアスランに気を遣って貰わなきゃいけないなんて、本当に情けない。
ぼうっとする頭と止まらないくしゃみに苛立ちながら、僕は部屋に戻るとそのままベッドに潜り込んだ。
薬を飲まなきゃいけないな――。
そう思ってはいたが、体はそれを許してくれなくて。
あっと言う間に僕は、意識を手放していた。
ヒヤリ、と冷たい物がおでこに当たる。
ゆっくりと引き戻される意識は、その気持ち良さをはっきりと自覚していた。
何だろう? とゆっくり目を開けると、視界に入ったのは――。
「目、覚めた?」
「サラ……!」
そこにいたのは、半年ぶりに会う一つ年上の僕の従姉妹だった。どうやら冷たかったのは、彼女が持ってきてくれた濡れタオルだったらしい。
「サラ……いつ帰ってきたんですか?」
「数時間前よ。到着と同時にアスランから貴方のことを聞いたから、実はまだ隊長に挨拶にも行けてなかったりして」
「そ、それはまずいですよ。サラ」
「誰かさんが風邪なんぞ引いたりしなければ、私はそのまま隊長に挨拶に行けてたんだけどなぁ」
「う……」
痛いところを突かれて、僕は言葉を失う。サラには昔から頭が上がらなかった。
サラは、母方の従姉妹に当たる。幼い頃からよく顔を合わせていたため、血縁者の中では一番仲が良かった。
たった一つしか違わないのに彼女はとても大人びていて。いつも僕の事を気にかけて、時には姉のように、時には母親のように接してくれていた。
「まぁ今夜はゆっくり寝ておきなさいよね。あ、でもその前に着替えて。物凄い汗をかいてるでしょ」
「え? あぁ……そうですね」
言われて気付く。確かに僕の服はぐっしょりと濡れていた。
そういえば軍服のまま眠ってしまったんでしたね。雨の中を走ってきたように変色した軍服は、見るも無惨な姿となっている。
「これだけ汗をかけば熱も下がってるでしょ。とにかく着替えて体を拭いて。このままじゃ風邪がぶり返しちゃうわ」
「分かりました。すぐ着替えますよ」
「じゃ、早く脱いで。すぐに洗濯しないと、明日までに乾かないわよ」
「はい」
「……」
「……」
「……何やってるの? 早く脱ぎなさいよ」
僕が着替えるのをためらっていると、サラが焦れたように手を伸ばしてきた。
「いや、ですから……あとは自分で出来ますから、サラは隊長の所へ……」
「そんなの後あと。先にニコルの服を洗っておかないと、戻ってきてからじゃ遅くなっちゃうわ」
「でも……サラがいると着替えにくいんですけど」
「な~に言ってるのよ。子供の頃は一緒にお風呂に入った仲じゃない。今更いまさら!」
そんな事を気にしてたの? とばかりにけらけらと笑うサラ。どうやら彼女の中の僕は、幼稚園時代のままらしい。
15歳と16歳。それなりに二人とも大人に近付いてるんだけどなぁ。
「私は全然気にしないから、スパッと脱いじゃいなさい! スパッと!」
――サラが気にしなくても、僕が気にするんですよ。
そう言いたいのは山々だけれど、一度言い出したら聞かないサラの強情さは身に染みて分かってしまっている。僕は小さく溜息をつくと、仕方なくベッドの上で服を脱ぎ始めた。
シャワーを浴びてさっぱりすると、次にわき上がる欲求は……水。からからになっている喉を潤そうと冷蔵庫を開ける。中にははち切れんばかりにボトルと食料が詰め込まれていた。
多分サラが用意しておいてくれたのだろう。ありがたくその中のボトルの1本を手に取ると、僕は一気に飲み干した。
「はぁ……五臓六腑に染み渡るって、こういう事を言うんですかね」
体の隅々にまで行き渡る水分が、僕の体に元気をくれる。何だか食欲も出てきたようだ。
でもだからと言って油断はできない。今夜中に完全に治しておかなければ、アスランとの約束を違えてしまうことになる。
もう1本、今度は栄養ドリンクを手に取って飲み干した僕は、そのまま布団に潜り込んだ。ドリンクの瓶に貼られていたラベルを見たからには、速攻寝ないと後が恐い。
『飲んだらすぐ寝るように! 明日治ってなかったら……分かってるわね!?』
「全く……サラにはかないませんね」
くすくすと笑いながら、僕は枕元のスタンドのスイッチをオフにする。ゆっくりと闇に包まれていく部屋の中、僕は再び眠りに就いた。
「風邪か? ニコル」
「そうみたいですね。でも大したことありま……っくしゅん!」
「……あまり無理をするなよ」
「あはははは、すみま……っくしゅん!」
今朝からどうも頭が重いとは思っていた。微熱はあったものの、どうせすぐに下がるだろうといつも通りに任務をこなしていたのだけれど、どうやら自分が思っている以上に症状は重かったようで。
先ほどから、くしゃみが止まらなくなっていた。
それと共に思考力も落ちてくる。
「っくしゅん!」
「ニコル……今日はもう大した任務もないだろうし、部屋に戻った方が良いんじゃないのか?」
「いえ、そうもいきませんよ。あと数時間くらいなら大丈……っくしゅん!」
「大丈夫じゃない。お前はもう部屋に戻れ。これは隊長命令だ。」
「アスラン、でも……」
「そんな調子で任務が遂行できるか?」
「それは……」
「その代わり、明日までにはしっかり治しておけよ」
「すみませ……っくしゅん!」
――情けない。
風邪をひいてしまうなんて、気が緩んでいる証拠だ。しかもアスランに気を遣って貰わなきゃいけないなんて、本当に情けない。
ぼうっとする頭と止まらないくしゃみに苛立ちながら、僕は部屋に戻るとそのままベッドに潜り込んだ。
薬を飲まなきゃいけないな――。
そう思ってはいたが、体はそれを許してくれなくて。
あっと言う間に僕は、意識を手放していた。
ヒヤリ、と冷たい物がおでこに当たる。
ゆっくりと引き戻される意識は、その気持ち良さをはっきりと自覚していた。
何だろう? とゆっくり目を開けると、視界に入ったのは――。
「目、覚めた?」
「サラ……!」
そこにいたのは、半年ぶりに会う一つ年上の僕の従姉妹だった。どうやら冷たかったのは、彼女が持ってきてくれた濡れタオルだったらしい。
「サラ……いつ帰ってきたんですか?」
「数時間前よ。到着と同時にアスランから貴方のことを聞いたから、実はまだ隊長に挨拶にも行けてなかったりして」
「そ、それはまずいですよ。サラ」
「誰かさんが風邪なんぞ引いたりしなければ、私はそのまま隊長に挨拶に行けてたんだけどなぁ」
「う……」
痛いところを突かれて、僕は言葉を失う。サラには昔から頭が上がらなかった。
サラは、母方の従姉妹に当たる。幼い頃からよく顔を合わせていたため、血縁者の中では一番仲が良かった。
たった一つしか違わないのに彼女はとても大人びていて。いつも僕の事を気にかけて、時には姉のように、時には母親のように接してくれていた。
「まぁ今夜はゆっくり寝ておきなさいよね。あ、でもその前に着替えて。物凄い汗をかいてるでしょ」
「え? あぁ……そうですね」
言われて気付く。確かに僕の服はぐっしょりと濡れていた。
そういえば軍服のまま眠ってしまったんでしたね。雨の中を走ってきたように変色した軍服は、見るも無惨な姿となっている。
「これだけ汗をかけば熱も下がってるでしょ。とにかく着替えて体を拭いて。このままじゃ風邪がぶり返しちゃうわ」
「分かりました。すぐ着替えますよ」
「じゃ、早く脱いで。すぐに洗濯しないと、明日までに乾かないわよ」
「はい」
「……」
「……」
「……何やってるの? 早く脱ぎなさいよ」
僕が着替えるのをためらっていると、サラが焦れたように手を伸ばしてきた。
「いや、ですから……あとは自分で出来ますから、サラは隊長の所へ……」
「そんなの後あと。先にニコルの服を洗っておかないと、戻ってきてからじゃ遅くなっちゃうわ」
「でも……サラがいると着替えにくいんですけど」
「な~に言ってるのよ。子供の頃は一緒にお風呂に入った仲じゃない。今更いまさら!」
そんな事を気にしてたの? とばかりにけらけらと笑うサラ。どうやら彼女の中の僕は、幼稚園時代のままらしい。
15歳と16歳。それなりに二人とも大人に近付いてるんだけどなぁ。
「私は全然気にしないから、スパッと脱いじゃいなさい! スパッと!」
――サラが気にしなくても、僕が気にするんですよ。
そう言いたいのは山々だけれど、一度言い出したら聞かないサラの強情さは身に染みて分かってしまっている。僕は小さく溜息をつくと、仕方なくベッドの上で服を脱ぎ始めた。
シャワーを浴びてさっぱりすると、次にわき上がる欲求は……水。からからになっている喉を潤そうと冷蔵庫を開ける。中にははち切れんばかりにボトルと食料が詰め込まれていた。
多分サラが用意しておいてくれたのだろう。ありがたくその中のボトルの1本を手に取ると、僕は一気に飲み干した。
「はぁ……五臓六腑に染み渡るって、こういう事を言うんですかね」
体の隅々にまで行き渡る水分が、僕の体に元気をくれる。何だか食欲も出てきたようだ。
でもだからと言って油断はできない。今夜中に完全に治しておかなければ、アスランとの約束を違えてしまうことになる。
もう1本、今度は栄養ドリンクを手に取って飲み干した僕は、そのまま布団に潜り込んだ。ドリンクの瓶に貼られていたラベルを見たからには、速攻寝ないと後が恐い。
『飲んだらすぐ寝るように! 明日治ってなかったら……分かってるわね!?』
「全く……サラにはかないませんね」
くすくすと笑いながら、僕は枕元のスタンドのスイッチをオフにする。ゆっくりと闇に包まれていく部屋の中、僕は再び眠りに就いた。
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