今一番欲しいもの(アスラン)
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アスランが予定よりも15分早く彼女の家に到着すると、そこは戦場だった。
『オ菓子!オ菓子!』
『ミトメタクナイッ!』
『イタズラスルゾー』
『マイド!』
凄まじい速さで縦横無尽に動き回るハロを見て呆然とするアスランだったが、その中の一つが自分に向かって飛んで来たことで慌ててキャッチする。
『アスラン、イタズラ!』
「……何なんだ、これは」
手の中でモゾモゾと動いているハロには、見事なペイントが施されていた。以前ラクスがヒゲを描いていたのは見たことがあったが、これはそんなレベルを超越して、もう職人技と言っていいだろう。数日後のハロウィンパーティの準備のためか、『ハロ』の面影は消え、完全なる『ジャックオランタン』になっている。
「サラ……いくら何でもやり過ぎだろ」
「え? そう? 子供たちが喜ぶと思ったんだけど」
アスランの来訪を聞きつけて出てきたサラが笑いながら言うと、アスランは大きな溜息を吐いた。
「ハリウッドも顔負けの特殊メイクだな。可愛らしさが無いどころか、確実に見た相手を恐怖に陥れるぞ」
「そうかなぁ? この後血糊も付けてみようかと思ってたんだけど、辞めた方が良い?」
「……もう十分だからここで辞めておけ」
「はぁい」
少し不満げに答えたサラは、ハロ達に何か指示を出し、部屋へと戻るよう促す。暗闇で光を当てられたら、確実に卒倒する者が出そうな程に凶悪なジャックオランタン達の姿が見えなくなると、アスランは再び大きな溜息を吐いた。
「ああ言うのを見ると、時々お前が本当に、業界屈指の芸術家なのかと疑いたくなるな」
「酷いなぁ。それが彼女に言うセリフ?」
ぷくっと頬を膨らませて睨むサラ。
「そんな事を言う奴には、もうあげるのやめよっかな」
「何の事だ?」
いきなり話が飛んだ事で訝しげな顔をするアスランに、サラはポケットから一枚のパスカードを取り出して見せた。
「今アスランが一番尊敬してる電子工学教授の、講演会のプラチナチケット」
「まさか……っ! 今回は特別公演だから、教授に縁のある人間しか行けないはず……」
「だから誰かさんのお誕生日に合わせて、四方八方手を尽くしたわけですよ。そしたらその誰かさんは来て早々、こ〜んな健気な彼女をディスってくれちゃったんだもん。こうなったらこのカード、誰か他の人にあげちゃうか……」
冷たい視線を送りながらヒラヒラとカードを振ってみせるサラ。慌てたアスランは、サラの両肩を軽く叩いて落ち着かせるようにしながら言った。
「悪かったよ。サラが俺の為に頑張ってくれたのはよく分かった。ハロも、お前の実力が本物だからこその、リアルな仕上がりだったってのは認めてるさ。だから、な」
全身でそのカードが欲しいと訴えかけてくるアスランに、サラは思わず吹き出してしまう。
「もう、そんなに慌てなくてもちゃんとアスランにあげるわよ。元々アスランの為に手に入れたんだし、他の人の為にこんな苦労をする気なんてサラサラ無いもの」
そう言ってあっさり「はい」と渡されたカードには、『アスラン・ザラ君へ』の文字が書き込まれていた。その横には大きく教授の名前もある。
「まさかこれ……」
「そうよ、教授直筆。だから他の人にあげる事なんてできないからね」
「サラ……っ!」
「ちょっ、アスラン!?」
サラから驚きの声があがったのは、突然抱きつかれたから。見た目よりも逞しい腕の中にスッポリと包み込まれたサラは、顔を真っ赤にしながらジタバタとしていた。
「アスラン放して、苦し……っ!」
「ああ、すまない。つい嬉しくて……」
慌ててサラを解放した割には、満面の笑みを見せているアスラン。その嬉しそうな顔を見て、怒る事など出来るはずもない。
「やれやれ……喜びの表現はもう少し穏やかにお願いするわ。とりあえずお誕生日おめでと。アスラン」
「ありがとう」
今度は言われた通り穏やかな笑顔で、優しくサラを抱きしめる。感謝のキスを頬に受けたサラは嬉しそうに微笑むと、視線を扉の方へと移した。
「それじゃ、早速パーティーを始めますか」
「え?」
サラの言葉に、アスランもサラの視線を追えば、勢いよく開かれる扉。その向こうには、ハロウィンの仮装をした見知った者たちが、数多く集っていた。
「サラ、これは……」
「秘密にしてたけど、今年のアスランの誕生会はうちでするよって、皆にカードを送っておいたのよ。ついでにハロウィンパーティーも兼ねてね」
「だから今日は誰も捕まらなかったのか」
「そういう事。不自然だから気付かれるかと思ってたけど、大丈夫だったみたいね。ってなわけで……ハロ!」
『マイド!』
サラの声に、先程姿を消したハロが再び戻ってきて跳ね回り、部屋の電気を消していく。今アスランに見えているのは、皆がいる奥の部屋に置かれた、ケーキのロウソクだけ。
「さ、アスラン。皆がお待ちかねだよ」
「ああ」
差し出された手を握り、二人はゆっくりと奥の部屋へと向かう。その途中、アスランが小さく言った。
「サラ」
「ん?」
「パーティが終わったら、二人だけの時間を作ってくれないか? プレゼントもパーティも嬉しいけど、今一番欲しいのは……」
その先に言葉は無い。
ロウソクの火を吹き消し、電気を点けた時に皆が目にしたのは、顔を真っ赤にして唇を押さえているサラの姿だった。
〜END〜
『オ菓子!オ菓子!』
『ミトメタクナイッ!』
『イタズラスルゾー』
『マイド!』
凄まじい速さで縦横無尽に動き回るハロを見て呆然とするアスランだったが、その中の一つが自分に向かって飛んで来たことで慌ててキャッチする。
『アスラン、イタズラ!』
「……何なんだ、これは」
手の中でモゾモゾと動いているハロには、見事なペイントが施されていた。以前ラクスがヒゲを描いていたのは見たことがあったが、これはそんなレベルを超越して、もう職人技と言っていいだろう。数日後のハロウィンパーティの準備のためか、『ハロ』の面影は消え、完全なる『ジャックオランタン』になっている。
「サラ……いくら何でもやり過ぎだろ」
「え? そう? 子供たちが喜ぶと思ったんだけど」
アスランの来訪を聞きつけて出てきたサラが笑いながら言うと、アスランは大きな溜息を吐いた。
「ハリウッドも顔負けの特殊メイクだな。可愛らしさが無いどころか、確実に見た相手を恐怖に陥れるぞ」
「そうかなぁ? この後血糊も付けてみようかと思ってたんだけど、辞めた方が良い?」
「……もう十分だからここで辞めておけ」
「はぁい」
少し不満げに答えたサラは、ハロ達に何か指示を出し、部屋へと戻るよう促す。暗闇で光を当てられたら、確実に卒倒する者が出そうな程に凶悪なジャックオランタン達の姿が見えなくなると、アスランは再び大きな溜息を吐いた。
「ああ言うのを見ると、時々お前が本当に、業界屈指の芸術家なのかと疑いたくなるな」
「酷いなぁ。それが彼女に言うセリフ?」
ぷくっと頬を膨らませて睨むサラ。
「そんな事を言う奴には、もうあげるのやめよっかな」
「何の事だ?」
いきなり話が飛んだ事で訝しげな顔をするアスランに、サラはポケットから一枚のパスカードを取り出して見せた。
「今アスランが一番尊敬してる電子工学教授の、講演会のプラチナチケット」
「まさか……っ! 今回は特別公演だから、教授に縁のある人間しか行けないはず……」
「だから誰かさんのお誕生日に合わせて、四方八方手を尽くしたわけですよ。そしたらその誰かさんは来て早々、こ〜んな健気な彼女をディスってくれちゃったんだもん。こうなったらこのカード、誰か他の人にあげちゃうか……」
冷たい視線を送りながらヒラヒラとカードを振ってみせるサラ。慌てたアスランは、サラの両肩を軽く叩いて落ち着かせるようにしながら言った。
「悪かったよ。サラが俺の為に頑張ってくれたのはよく分かった。ハロも、お前の実力が本物だからこその、リアルな仕上がりだったってのは認めてるさ。だから、な」
全身でそのカードが欲しいと訴えかけてくるアスランに、サラは思わず吹き出してしまう。
「もう、そんなに慌てなくてもちゃんとアスランにあげるわよ。元々アスランの為に手に入れたんだし、他の人の為にこんな苦労をする気なんてサラサラ無いもの」
そう言ってあっさり「はい」と渡されたカードには、『アスラン・ザラ君へ』の文字が書き込まれていた。その横には大きく教授の名前もある。
「まさかこれ……」
「そうよ、教授直筆。だから他の人にあげる事なんてできないからね」
「サラ……っ!」
「ちょっ、アスラン!?」
サラから驚きの声があがったのは、突然抱きつかれたから。見た目よりも逞しい腕の中にスッポリと包み込まれたサラは、顔を真っ赤にしながらジタバタとしていた。
「アスラン放して、苦し……っ!」
「ああ、すまない。つい嬉しくて……」
慌ててサラを解放した割には、満面の笑みを見せているアスラン。その嬉しそうな顔を見て、怒る事など出来るはずもない。
「やれやれ……喜びの表現はもう少し穏やかにお願いするわ。とりあえずお誕生日おめでと。アスラン」
「ありがとう」
今度は言われた通り穏やかな笑顔で、優しくサラを抱きしめる。感謝のキスを頬に受けたサラは嬉しそうに微笑むと、視線を扉の方へと移した。
「それじゃ、早速パーティーを始めますか」
「え?」
サラの言葉に、アスランもサラの視線を追えば、勢いよく開かれる扉。その向こうには、ハロウィンの仮装をした見知った者たちが、数多く集っていた。
「サラ、これは……」
「秘密にしてたけど、今年のアスランの誕生会はうちでするよって、皆にカードを送っておいたのよ。ついでにハロウィンパーティーも兼ねてね」
「だから今日は誰も捕まらなかったのか」
「そういう事。不自然だから気付かれるかと思ってたけど、大丈夫だったみたいね。ってなわけで……ハロ!」
『マイド!』
サラの声に、先程姿を消したハロが再び戻ってきて跳ね回り、部屋の電気を消していく。今アスランに見えているのは、皆がいる奥の部屋に置かれた、ケーキのロウソクだけ。
「さ、アスラン。皆がお待ちかねだよ」
「ああ」
差し出された手を握り、二人はゆっくりと奥の部屋へと向かう。その途中、アスランが小さく言った。
「サラ」
「ん?」
「パーティが終わったら、二人だけの時間を作ってくれないか? プレゼントもパーティも嬉しいけど、今一番欲しいのは……」
その先に言葉は無い。
ロウソクの火を吹き消し、電気を点けた時に皆が目にしたのは、顔を真っ赤にして唇を押さえているサラの姿だった。
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