明日を見つめて(アスラン)
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どのくらいの時間が流れただろう。涙を拭われて、私は目を開けた。
ぼやけた視界に映ったのは――涙を流すアスランだった。
「アスラン、泣いてるの?」
「泣いてなんかないさ」
「嘘。じゃぁその涙は何よ」
「涙なんて……」
ぼろぼろと。まさにその言葉がぴったりと似合うほどに大粒の涙を流すアスラン。
自分の頬に手を当て、流れている涙に触れたときのアスランの表情は、心底驚いていて。何だか少しおかしかった。
「こ、これは……何かの間違いだ!」
「何よそれ~。どこからどう見てもアスランの涙じゃない!」
「違う! 俺は……」
「私の体を使って泣いて、自分でも泣いて。凄くため込んでたんだね。アスランは」
「いや、だからこれは!!」
言い訳をしながらもアスランの頬を流れ続けている涙に、私はほっとする。
「思い切り泣いてね。せっかく涙が出たんだから、この機会に思い切り流しちゃいなよ」
「そんな、バーゲンか何かじゃないんだから……」
アスランの口から、冗談交じりの突っ込みが出た。これっていつものアスランに戻りかかっている?
それだけでも嬉しかったのに――。
「ほんとサラって変な奴だよな。昔から……」
「アスラン……!!」
言いたいことを言われているのに、腹が立つどころか喜びで一杯になる。
「やっと名前……呼んでくれた!!」
「え?」
「1週間ぶりなんだよ。あの日以来、アスランは私の名前を一度も呼んでくれてなかったんだよ」
「そうだったか?」
「そうだった! 間違いない!……すっごく寂しかったんだよ、私」
「サラ……」
はっとした表情のまま暫く固まっていたアスランだが、何かを考えるような仕草の後、
「ごめん」
と言いながら私の頭をそっと撫でてくれた。
今目の前にいるのは、私がずっと大好きだったアスラン。涙を流しながら浮かべている表情は、とても晴れやかで――涙が心を洗い流してくれたのだろう。それはそれは綺麗な笑顔だった。
思わず見惚れてしまうほどに。
もう、アスランは大丈夫。手から伝わってくる優しい温もりが、私に確信を抱かせてくれる。
「心配かけてすまなかったな、サラ」
「気にしないで。少しは楽になった?」
「あぁ、サラのお陰だよ。」
良かった。アスランが元気になってくれて――。
喜びの余り、えへへと思わずにやけてしまう私を、アスランは優しい眼差しで見つめながら言った。
「サラがいてくれて本当に良かった」
「アスラン……!」
「サラがいなかったら、俺はあのまま壊れてしまっていたかもしれない。ありがとう、サラ」
「や、やだなぁ、もう。そんな改めて言わないでよ!」
「ちゃんとお礼を言いたいんだよ。ありがとう」
「……うん」
何だかこんな風に真面目に言われると照れてしまう。私はいつのまにか涙の乾いた頬を掻きながら頷いた。
「まだ母を失った悲しみは消えないけど、サラのお陰でなんとか乗り越えられそうだよ」
「ホントに?」
こんなに嬉しい言葉を言われるなんて。あまりの驚きに、私は目をまん丸にしながらアスランを見つめていた。
「ぷっ……なんて顔してるんだよ、サラ。可愛い顔が台無し」
「わ、悪かったわね!……って、さらりとそういう事言っちゃうか!」
「俺は本音を言っただけ」
――君がいてくれて良かった
――君のお陰だよ
――可愛いね
女の子が一度は言われてみたいと思う殺し文句のオンパレードに、さすがの私も頬も赤らむ。
だが、まだそれは序の口だったかもしれない。最後のとどめの一言が、私を茹で蛸にする。
「サラにはずっと俺の側にいて欲しい」
「……っ!!」
涙の浄化作用は、思った以上の効果を表したらしい。湯気が見えそうなほどに真っ赤になった私を見ながら、アスランは笑っていた。
心の底から。ずっと私が好きだった笑顔で。
「明日、もう一度墓地に行こう」
「え? でも未だお墓はこれから……」
「良いんだ。気持ちの問題だから」
「どういう事?」
「俺の母とサラのお母さんに伝えたいんだよ。これから俺達はくじけず頑張って行くからって」
「……うん。分かった」
帰りの車の中、私達は約束をした。明日もまた、私達はこの道を通って墓地へと向かう。
――今日とは違う私達を見せるために。
『ママ、おば様。明日を楽しみにしててね』
運転席に座ったアスランをこっそり盗み見ながら、私は心でそう呟いたのだった。
~END~
ぼやけた視界に映ったのは――涙を流すアスランだった。
「アスラン、泣いてるの?」
「泣いてなんかないさ」
「嘘。じゃぁその涙は何よ」
「涙なんて……」
ぼろぼろと。まさにその言葉がぴったりと似合うほどに大粒の涙を流すアスラン。
自分の頬に手を当て、流れている涙に触れたときのアスランの表情は、心底驚いていて。何だか少しおかしかった。
「こ、これは……何かの間違いだ!」
「何よそれ~。どこからどう見てもアスランの涙じゃない!」
「違う! 俺は……」
「私の体を使って泣いて、自分でも泣いて。凄くため込んでたんだね。アスランは」
「いや、だからこれは!!」
言い訳をしながらもアスランの頬を流れ続けている涙に、私はほっとする。
「思い切り泣いてね。せっかく涙が出たんだから、この機会に思い切り流しちゃいなよ」
「そんな、バーゲンか何かじゃないんだから……」
アスランの口から、冗談交じりの突っ込みが出た。これっていつものアスランに戻りかかっている?
それだけでも嬉しかったのに――。
「ほんとサラって変な奴だよな。昔から……」
「アスラン……!!」
言いたいことを言われているのに、腹が立つどころか喜びで一杯になる。
「やっと名前……呼んでくれた!!」
「え?」
「1週間ぶりなんだよ。あの日以来、アスランは私の名前を一度も呼んでくれてなかったんだよ」
「そうだったか?」
「そうだった! 間違いない!……すっごく寂しかったんだよ、私」
「サラ……」
はっとした表情のまま暫く固まっていたアスランだが、何かを考えるような仕草の後、
「ごめん」
と言いながら私の頭をそっと撫でてくれた。
今目の前にいるのは、私がずっと大好きだったアスラン。涙を流しながら浮かべている表情は、とても晴れやかで――涙が心を洗い流してくれたのだろう。それはそれは綺麗な笑顔だった。
思わず見惚れてしまうほどに。
もう、アスランは大丈夫。手から伝わってくる優しい温もりが、私に確信を抱かせてくれる。
「心配かけてすまなかったな、サラ」
「気にしないで。少しは楽になった?」
「あぁ、サラのお陰だよ。」
良かった。アスランが元気になってくれて――。
喜びの余り、えへへと思わずにやけてしまう私を、アスランは優しい眼差しで見つめながら言った。
「サラがいてくれて本当に良かった」
「アスラン……!」
「サラがいなかったら、俺はあのまま壊れてしまっていたかもしれない。ありがとう、サラ」
「や、やだなぁ、もう。そんな改めて言わないでよ!」
「ちゃんとお礼を言いたいんだよ。ありがとう」
「……うん」
何だかこんな風に真面目に言われると照れてしまう。私はいつのまにか涙の乾いた頬を掻きながら頷いた。
「まだ母を失った悲しみは消えないけど、サラのお陰でなんとか乗り越えられそうだよ」
「ホントに?」
こんなに嬉しい言葉を言われるなんて。あまりの驚きに、私は目をまん丸にしながらアスランを見つめていた。
「ぷっ……なんて顔してるんだよ、サラ。可愛い顔が台無し」
「わ、悪かったわね!……って、さらりとそういう事言っちゃうか!」
「俺は本音を言っただけ」
――君がいてくれて良かった
――君のお陰だよ
――可愛いね
女の子が一度は言われてみたいと思う殺し文句のオンパレードに、さすがの私も頬も赤らむ。
だが、まだそれは序の口だったかもしれない。最後のとどめの一言が、私を茹で蛸にする。
「サラにはずっと俺の側にいて欲しい」
「……っ!!」
涙の浄化作用は、思った以上の効果を表したらしい。湯気が見えそうなほどに真っ赤になった私を見ながら、アスランは笑っていた。
心の底から。ずっと私が好きだった笑顔で。
「明日、もう一度墓地に行こう」
「え? でも未だお墓はこれから……」
「良いんだ。気持ちの問題だから」
「どういう事?」
「俺の母とサラのお母さんに伝えたいんだよ。これから俺達はくじけず頑張って行くからって」
「……うん。分かった」
帰りの車の中、私達は約束をした。明日もまた、私達はこの道を通って墓地へと向かう。
――今日とは違う私達を見せるために。
『ママ、おば様。明日を楽しみにしててね』
運転席に座ったアスランをこっそり盗み見ながら、私は心でそう呟いたのだった。
~END~
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