刻まれた想い(キラ)
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次の日の朝、校門にさしかかったところで僕を迎えてくれたのは、トリィだった。
『トリィ!』
鳴き声と共に一直線に僕の所に飛んできたトリィは、いつもの定位置にちょこんと足を置く。
「トリィ! もう直ったんだね?」
「ええ、問題無いと思うわ」
遅れてゆっくりと歩いてくるサラ。おはよう、と挨拶を交わすと、一日の始まりにふさわしい爽やかな笑顔を見せてくれた。
「ありがとう、サラ」
「どういたしまして。当面は問題ないと思うけど、月に1度くらいは調子を見てあげてね。劣化の激しかったパーツは新しい物に入れ替えたけど、まだいくらか古い物も残ってるから」
「分かったよ。気を付ける」
肩に手を近づけると、指に移動するトリィ。小さくカシャカシャと音を立てながら首を傾げる姿がとても愛らしい。
「良かった、いつものトリィだ。壊したら絶対アスランに怒られるもんなぁ。ほんとに良かった!」
いつだって忘れることのない幼なじみの姿が、瞼の裏に鮮明に浮かんでくる。
――次に会うときまで、ちゃんと可愛がるんだぞ。
別れ際に言われた言葉は、今も忘れてはいない。だからこそこうしていつも大切にしていたのだから。
……メンテは出来てなかったけど。
「アスランって、トリィを作ったお友達?」
「うん、そうだよ」
僕が何気なく口にした名前を、サラは初めて耳にしたのか、不思議そうに尋ねてきた。
そういえば、『友達』とか『幼なじみ』とはよく言ってたけど、アスランの名前は言ったことがなかったっけ。
「アスランは、月にいた頃ずっと僕と仲良くしてくれてた友達なんだ」
「そうなんだ」
「容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。皆の憧れの的だったんだよ。本人は気付いてなかったみたいだけどね。そんな彼が、僕のために作ってくれたのがこのトリィなんだ。トリィは、今は会えないアスランと僕とを繋いでくれる、大切な鳥なんだよ」
得意満面な僕の話に、サラはいつもの優しい笑顔で耳を傾けてくれていた。
だが、不意に笑顔が曇る。その急激な変化に僕は驚いてしまった。
「サラどうしたの?」
「……ううん、何でもない」
「何でもないって顔じゃないよ。何だか凄く……」
――悲しそう。
それ以外の言葉が見つからないくらいに、悲しそうな表情だった。
サラにこんな表情をさせてしまうような事を、僕は言った?
「サラ。僕、サラを悲しませるような事を言った?」
僕の言葉に、ふるふると首を横に振るサラ。
「ごめんなさい、キラ……」
「え?」
「キラが悪いんじゃないの。私が我が儘なだけ」
「我が儘?」
サラが何を言いたいのかが分からなくて、そっとその表情を伺う。ちらりと僕に視線を向けたサラは、少し俯きながら瞼を閉じ、やがて小さく笑みを浮かべると再び僕を見た。
「もし……」
「もし、何?」
「ううん、やっぱり何でもない。」
「サラ?」
「行こう、キラ。そろそろ授業が始まっちゃうよ?」
そう言いながら、校舎に向かって歩き出したサラ。それは先ほどまでの悲しい表情は欠片も感じられない、いつもの笑顔で。
くるくると表情を変えるサラに戸惑いながらも、聞こえてきたチャイムの音に、慌てて僕はサラの後を追った。
この時、サラが抱えていた想いに気付けなかった僕は、愚鈍だったのだろうか……?
『トリィ!』
鳴き声と共に一直線に僕の所に飛んできたトリィは、いつもの定位置にちょこんと足を置く。
「トリィ! もう直ったんだね?」
「ええ、問題無いと思うわ」
遅れてゆっくりと歩いてくるサラ。おはよう、と挨拶を交わすと、一日の始まりにふさわしい爽やかな笑顔を見せてくれた。
「ありがとう、サラ」
「どういたしまして。当面は問題ないと思うけど、月に1度くらいは調子を見てあげてね。劣化の激しかったパーツは新しい物に入れ替えたけど、まだいくらか古い物も残ってるから」
「分かったよ。気を付ける」
肩に手を近づけると、指に移動するトリィ。小さくカシャカシャと音を立てながら首を傾げる姿がとても愛らしい。
「良かった、いつものトリィだ。壊したら絶対アスランに怒られるもんなぁ。ほんとに良かった!」
いつだって忘れることのない幼なじみの姿が、瞼の裏に鮮明に浮かんでくる。
――次に会うときまで、ちゃんと可愛がるんだぞ。
別れ際に言われた言葉は、今も忘れてはいない。だからこそこうしていつも大切にしていたのだから。
……メンテは出来てなかったけど。
「アスランって、トリィを作ったお友達?」
「うん、そうだよ」
僕が何気なく口にした名前を、サラは初めて耳にしたのか、不思議そうに尋ねてきた。
そういえば、『友達』とか『幼なじみ』とはよく言ってたけど、アスランの名前は言ったことがなかったっけ。
「アスランは、月にいた頃ずっと僕と仲良くしてくれてた友達なんだ」
「そうなんだ」
「容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。皆の憧れの的だったんだよ。本人は気付いてなかったみたいだけどね。そんな彼が、僕のために作ってくれたのがこのトリィなんだ。トリィは、今は会えないアスランと僕とを繋いでくれる、大切な鳥なんだよ」
得意満面な僕の話に、サラはいつもの優しい笑顔で耳を傾けてくれていた。
だが、不意に笑顔が曇る。その急激な変化に僕は驚いてしまった。
「サラどうしたの?」
「……ううん、何でもない」
「何でもないって顔じゃないよ。何だか凄く……」
――悲しそう。
それ以外の言葉が見つからないくらいに、悲しそうな表情だった。
サラにこんな表情をさせてしまうような事を、僕は言った?
「サラ。僕、サラを悲しませるような事を言った?」
僕の言葉に、ふるふると首を横に振るサラ。
「ごめんなさい、キラ……」
「え?」
「キラが悪いんじゃないの。私が我が儘なだけ」
「我が儘?」
サラが何を言いたいのかが分からなくて、そっとその表情を伺う。ちらりと僕に視線を向けたサラは、少し俯きながら瞼を閉じ、やがて小さく笑みを浮かべると再び僕を見た。
「もし……」
「もし、何?」
「ううん、やっぱり何でもない。」
「サラ?」
「行こう、キラ。そろそろ授業が始まっちゃうよ?」
そう言いながら、校舎に向かって歩き出したサラ。それは先ほどまでの悲しい表情は欠片も感じられない、いつもの笑顔で。
くるくると表情を変えるサラに戸惑いながらも、聞こえてきたチャイムの音に、慌てて僕はサラの後を追った。
この時、サラが抱えていた想いに気付けなかった僕は、愚鈍だったのだろうか……?