刻まれた想い(キラ)
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高く、高く。柔らかな風を受け、気持ちよさそうに空を飛んでいる一羽の鳥。
くるくると旋回しながら飛び続けるあの鳥は、何を見て、何を思っているのか。
どんなに望んでも、それは決して知ることの出来ない答え。
「トリィ!」
なかなか降りてこないトリィにさすがに業を煮やした僕は、その名を呼んだ。
トリィは昔、僕の大切な幼なじみの友達が作ってくれたロボット鳥。広い宇宙でたった一羽のこの鳥を、僕はとても大切にしていた。
「トリィ! ほら、もう帰るよ」
再び声をかける。だが、トリィはなかなか降りて来ようとはしなかった。
まるで駄々をこねるかのように、
『トリィ!』
と鳴きながら跳び続けている。
ロボットの鳥には本来意志は無いはずなのだが、何故かトリィはいつも心が存在しているかのような振る舞いを見せていた。
マイクロユニットの得意だった友達……アスランの技術レベルの高さには、今でも僕は到底追い付けはしない。
しかし、今日のトリィはちょっと勝手が違った。
「トリィ! 早く降りておいでよ!」
僕が手を差し出しても、全く降りてくる気配がないのだ。こんな事は初めてだったから、さすがに僕も不安になってきた。
「トリィ! どうしたんだよ。ほら、降りておいでよ、トリィ!!」
懸命に叫ぶが、僕の声が届かないのかトリィは空を旋回したまま。
「トリィ!」
もしこのまま戻ってこなかったら……そんな事まで考えてしまう。
「頼むから降りてきてよ、トリィ!」
「どうしたの?」
空を見上げて必死に叫んでいた僕に、突然声がかけられた。
驚いて振り向くと、そこに立っていたのは同じゼミで机を並べているサラ。物静かであまり目立たない存在ではあったが、カレッジ屈指の技術と知識の豊富さには定評があり、僕も色々と助けて貰っていた。
実は、以前から密かに好意を持っていたりもするのだが。
「降りてこないの? 鳥。」
「あ……うん。そうなんだ」
二人して空を見上げる。だが、トリィは相変わらず旋回を続けていた。
「ねぇ、キラ。確かあの鳥は大事なお友達からもらったロボット鳥だって言ってたよね」
「うん、そうだよ」
「呼んでも降りてこない上に、ずっと飛んだまま?」
「うん……」
「メンテナンス、してる?」
「へ?」
「やっぱり……」
はぁっとサラが溜息をついた。
「大切にしてる癖に、肝心な所は抜けてるのね」
そして、小さく微笑む。ふんわりと優しい笑顔があまりにも眩しくて、僕は頬を赤らめながら視線を逸らしてしまった。
「どうせ僕は抜けてますよ~だ」
ちょっと拗ねてもみたりして。
だってやっぱり、好意を抱いている人に抜けてるなんて言われるとショックじゃないか。……本当の事だけど。
「ごめんなさい。気にした?」
くすくすと笑いながら謝るサラ。どう見たって楽しんでいるようにしか思えない。
「気になんてしてないよ」
「そう?」
口元に手をあてて慎ましやかに、でも心の底から笑っているサラ。悔しいけれど、やっぱり好きだな……と思ってしまう。
「何にしても、いい加減降ろしてあげないといけないよね。あの子」
「え?……何か方法があるの?」
僕の驚いた言葉に聖はこくりと頷くと、いつも持ち歩いているショルダーバックから小さな笛を取り出した。
「これ、特殊な音波を出せる笛なの。……見ててね」
スーッ……。
空気が抜けたような音がした。多分犬笛などのように、人間には聞き取れないような音が発せられているのだろう。サラが一吹きしただけで、なんとトリィはまっすぐにこちらに向かって降りてきた。
「トリィ!」
そのまま僕の肩に乗る……かと思いきや、僕を素通りしてサラの肩にちょこん、と止まったトリィ。
「トリィ!?」
「ふふ。この笛で降りてくるように命令したから、私の肩に止まったのね」
「トリィの薄情者……」
「拗ねない拗ねない」
またも笑われてしまう。
「長い間メンテをしてなかったから、回路に少し異常が出ているみたいね。私、診ても良いかな?」
「え? サラが?」
思いもよらなかった言葉に、僕は驚いてしまった。だってまさか、サラからこんな言葉を聞くなんて想像もしていなかったし。
「僕がメンテを怠っていたのがいけないんだから、僕がするよ?」
「私は構わないよ。マイクロユニット製作は元々好きだし、それに……」
「それに?」
「マイクロユニットが苦手なキラがやったら、何が起こるか分からないじゃない?」
「……聖……」
涙が出そうになる。ここまで言われてしまうとさすがに……更に反論の余地が無いっていうのが辛い。
「ね? 触っても良い?」
「……お願いします。」
結局僕は、サラにメンテを任せることにした。
くるくると旋回しながら飛び続けるあの鳥は、何を見て、何を思っているのか。
どんなに望んでも、それは決して知ることの出来ない答え。
「トリィ!」
なかなか降りてこないトリィにさすがに業を煮やした僕は、その名を呼んだ。
トリィは昔、僕の大切な幼なじみの友達が作ってくれたロボット鳥。広い宇宙でたった一羽のこの鳥を、僕はとても大切にしていた。
「トリィ! ほら、もう帰るよ」
再び声をかける。だが、トリィはなかなか降りて来ようとはしなかった。
まるで駄々をこねるかのように、
『トリィ!』
と鳴きながら跳び続けている。
ロボットの鳥には本来意志は無いはずなのだが、何故かトリィはいつも心が存在しているかのような振る舞いを見せていた。
マイクロユニットの得意だった友達……アスランの技術レベルの高さには、今でも僕は到底追い付けはしない。
しかし、今日のトリィはちょっと勝手が違った。
「トリィ! 早く降りておいでよ!」
僕が手を差し出しても、全く降りてくる気配がないのだ。こんな事は初めてだったから、さすがに僕も不安になってきた。
「トリィ! どうしたんだよ。ほら、降りておいでよ、トリィ!!」
懸命に叫ぶが、僕の声が届かないのかトリィは空を旋回したまま。
「トリィ!」
もしこのまま戻ってこなかったら……そんな事まで考えてしまう。
「頼むから降りてきてよ、トリィ!」
「どうしたの?」
空を見上げて必死に叫んでいた僕に、突然声がかけられた。
驚いて振り向くと、そこに立っていたのは同じゼミで机を並べているサラ。物静かであまり目立たない存在ではあったが、カレッジ屈指の技術と知識の豊富さには定評があり、僕も色々と助けて貰っていた。
実は、以前から密かに好意を持っていたりもするのだが。
「降りてこないの? 鳥。」
「あ……うん。そうなんだ」
二人して空を見上げる。だが、トリィは相変わらず旋回を続けていた。
「ねぇ、キラ。確かあの鳥は大事なお友達からもらったロボット鳥だって言ってたよね」
「うん、そうだよ」
「呼んでも降りてこない上に、ずっと飛んだまま?」
「うん……」
「メンテナンス、してる?」
「へ?」
「やっぱり……」
はぁっとサラが溜息をついた。
「大切にしてる癖に、肝心な所は抜けてるのね」
そして、小さく微笑む。ふんわりと優しい笑顔があまりにも眩しくて、僕は頬を赤らめながら視線を逸らしてしまった。
「どうせ僕は抜けてますよ~だ」
ちょっと拗ねてもみたりして。
だってやっぱり、好意を抱いている人に抜けてるなんて言われるとショックじゃないか。……本当の事だけど。
「ごめんなさい。気にした?」
くすくすと笑いながら謝るサラ。どう見たって楽しんでいるようにしか思えない。
「気になんてしてないよ」
「そう?」
口元に手をあてて慎ましやかに、でも心の底から笑っているサラ。悔しいけれど、やっぱり好きだな……と思ってしまう。
「何にしても、いい加減降ろしてあげないといけないよね。あの子」
「え?……何か方法があるの?」
僕の驚いた言葉に聖はこくりと頷くと、いつも持ち歩いているショルダーバックから小さな笛を取り出した。
「これ、特殊な音波を出せる笛なの。……見ててね」
スーッ……。
空気が抜けたような音がした。多分犬笛などのように、人間には聞き取れないような音が発せられているのだろう。サラが一吹きしただけで、なんとトリィはまっすぐにこちらに向かって降りてきた。
「トリィ!」
そのまま僕の肩に乗る……かと思いきや、僕を素通りしてサラの肩にちょこん、と止まったトリィ。
「トリィ!?」
「ふふ。この笛で降りてくるように命令したから、私の肩に止まったのね」
「トリィの薄情者……」
「拗ねない拗ねない」
またも笑われてしまう。
「長い間メンテをしてなかったから、回路に少し異常が出ているみたいね。私、診ても良いかな?」
「え? サラが?」
思いもよらなかった言葉に、僕は驚いてしまった。だってまさか、サラからこんな言葉を聞くなんて想像もしていなかったし。
「僕がメンテを怠っていたのがいけないんだから、僕がするよ?」
「私は構わないよ。マイクロユニット製作は元々好きだし、それに……」
「それに?」
「マイクロユニットが苦手なキラがやったら、何が起こるか分からないじゃない?」
「……聖……」
涙が出そうになる。ここまで言われてしまうとさすがに……更に反論の余地が無いっていうのが辛い。
「ね? 触っても良い?」
「……お願いします。」
結局僕は、サラにメンテを任せることにした。
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