合わせ鏡(イザーク)
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暗く冷たい牢獄。サラは酷い傷を負い、そこに転がされていた。
「サラ!」
「……イザーク……やっぱりお前、か……」
起きあがることも出来ないほどに痛めつけられたのか、サラは倒れたままでくすくすと笑っていた。
「私に考えを改めろってか?……くくく……っ。今更……っつっ」
「サラ!」
慌てて牢の中に入り、サラを抱き上げる。近くで見ると、どれだけ酷い殴られ方をしたのかが嫌と言うほど分かった。
「サラ……なんでこんな事を……」
「お前がそれを……聞くのか? 理由は分かってるだろ……?」
「だからといって、いくらなんでも無謀だろうが!」
「無謀でもなんでも……我慢できなかったんだ……限界……だったんだよ……っごほっ」
咳と共に血を吐くサラに、俺は慌てた。
「サラ! 肺をやられてるのか!?」
「ふ……奴ら手加減ってもの……知らないからな……」
「すぐに治療をしないと、話にならん! おい! 先にこいつを……」
牢の外で聞き耳を立てている兵士に、俺が声をかけようとすると、
「良いんだ、イザーク」
サラは俺の服を引っ張り、それを遮った。
「しかし、このままでは」
「良いんだ! これで」
「サラ?」
不謹慎だとは思う。
その時見たサラの顔。初めて見た穏やかな笑顔は、これ以上なく美しくて――。
「疲れたんだ、もう……」
「おい! サラ!?」
瞼を閉じたサラを見て、俺は血の気が引いた。
「サラ! しっかりしろ! サラ!!」
「疲れたよ……」
「サラ!!」
名を叫びながら、ふと思い出したのは隊長の言葉。
「それともう一つ。これは周りに決して聞かれないように気を付けて伝えてくれ。『リタはオーブだ』とな」
「リタ? そう言えばサラが……リタとは一体?」
「彼女の妹だ。とある場所に捉えられていたのだがな、今はオーブにいるらしい。それだけ言えば分かるだろう」
「……分かりました。必ず伝えます」
意識を手放しかけたサラを見て、隊長の言葉を思い出す。上手くすれば、これで――。
「サラ! 聞こえるか!『 』だから……!!」
一瞬、サラの瞳が見えた。が、直ぐに瞼に遮断されてしまう。
「サラ!」
「クルーゼ隊長、やってくれるな……」
口の端をあげ、小さく笑うサラ。
「それだけが心残りだった……良かった……生きててくれて……もう私を縛りつける物はない……」
「おい、サラ!! 何を言ってる!?」
「こんなに嬉しい情報は……ないよ……ありがとう、イザーク・……」
「礼を言うくらいなら気をしっかり持て! サラ!!」
「イザークの腕の中で……死ねるなんて……私ってば幸せ……者……」
「ふざけるな! そんな馬鹿なことを……!!」
サラの手が、ゆっくりと持ち上げられる。そのまま俺の頬に触れると、同時に開かれる瞼。
「まだ出会ってほんの少ししか経っていないのに……私の全てを見せられた……多分本当の私を見てくれた……だから、かな……?」
「サラ?」
「私……イザークに惹かれてる……」
ごほごほと苦しそうな咳をしながらも、その顔に浮かんでいるのは幸せそうな微笑み。胸が痛くて、熱い。
「イザーク……最期の我が儘……聞いて……」
「最期だなんて言うな!」
「お前は間違うな……よ……それと、もし……少しでも……私……の事を思う気持ちが……あったら……」
『 』
その言葉は音にならなかった。
もう声も出ないらしい。そんなサラに、俺は答えた。
口付けで。
再び俺の視界に入ったサラは――。
微笑みを湛えたまま、事切れていた。
俺は、そっとサラを抱きしめた。
サラの背中を伝う滴がどこから生まれた物なのか、俺は知らない。今はただ、焼け付くような胸の痛みを忘れたくて。少しずつ体温を無くしていくサラの体をひたすら抱きしめていた。
相変わらず戦争は続いている。変わらない毎日の中、俺も変わらずナチュラルと戦い続けていた。
ただ一つ違うのは、一つ命を奪う毎に浮かんでくる者がいると言うこと。
「サラ……」
俺が今やっている事は、正しいのだろうか。
俺は今……何と戦っているのだろうか?
そんな疑問を抱きながら、戦火に己が身を投じる。
アスランが地球軍についていた事を知ったときも。
ディアッカまでもが向こうにいる事を知ったときも。
この疑問を胸に、俺は戦い続けている。
サラが俺の心に存在している限り、俺の中からその疑問が消えることはないだろう。それはつまり、確実に消えはしないということ。
「こんな形で気付いてしまうなんてな」
現実。
真実。
想い。
戦いの最中、ふとモニターに映り込んでいる自分の姿を見て、俺は苦笑する。
「サラもこんな想いを抱いていたんだろうか?」
そこに映っていたのは、能面のような俺の顔。あの時の……泣くのを必死に堪えていたサラと同じ顔。
「まるで鏡を見ているようだな。俺達が惹かれあったのはひょっとしたら……」
いや、今は考えないでおこう。俺は頭を強く振ると、レーダーに表れた敵に照準を合わせた。
「今は未だ答えは見つからないだろう。でもいつかきっと……」
そう、強く願いながら――。
end
「サラ!」
「……イザーク……やっぱりお前、か……」
起きあがることも出来ないほどに痛めつけられたのか、サラは倒れたままでくすくすと笑っていた。
「私に考えを改めろってか?……くくく……っ。今更……っつっ」
「サラ!」
慌てて牢の中に入り、サラを抱き上げる。近くで見ると、どれだけ酷い殴られ方をしたのかが嫌と言うほど分かった。
「サラ……なんでこんな事を……」
「お前がそれを……聞くのか? 理由は分かってるだろ……?」
「だからといって、いくらなんでも無謀だろうが!」
「無謀でもなんでも……我慢できなかったんだ……限界……だったんだよ……っごほっ」
咳と共に血を吐くサラに、俺は慌てた。
「サラ! 肺をやられてるのか!?」
「ふ……奴ら手加減ってもの……知らないからな……」
「すぐに治療をしないと、話にならん! おい! 先にこいつを……」
牢の外で聞き耳を立てている兵士に、俺が声をかけようとすると、
「良いんだ、イザーク」
サラは俺の服を引っ張り、それを遮った。
「しかし、このままでは」
「良いんだ! これで」
「サラ?」
不謹慎だとは思う。
その時見たサラの顔。初めて見た穏やかな笑顔は、これ以上なく美しくて――。
「疲れたんだ、もう……」
「おい! サラ!?」
瞼を閉じたサラを見て、俺は血の気が引いた。
「サラ! しっかりしろ! サラ!!」
「疲れたよ……」
「サラ!!」
名を叫びながら、ふと思い出したのは隊長の言葉。
「それともう一つ。これは周りに決して聞かれないように気を付けて伝えてくれ。『リタはオーブだ』とな」
「リタ? そう言えばサラが……リタとは一体?」
「彼女の妹だ。とある場所に捉えられていたのだがな、今はオーブにいるらしい。それだけ言えば分かるだろう」
「……分かりました。必ず伝えます」
意識を手放しかけたサラを見て、隊長の言葉を思い出す。上手くすれば、これで――。
「サラ! 聞こえるか!『 』だから……!!」
一瞬、サラの瞳が見えた。が、直ぐに瞼に遮断されてしまう。
「サラ!」
「クルーゼ隊長、やってくれるな……」
口の端をあげ、小さく笑うサラ。
「それだけが心残りだった……良かった……生きててくれて……もう私を縛りつける物はない……」
「おい、サラ!! 何を言ってる!?」
「こんなに嬉しい情報は……ないよ……ありがとう、イザーク・……」
「礼を言うくらいなら気をしっかり持て! サラ!!」
「イザークの腕の中で……死ねるなんて……私ってば幸せ……者……」
「ふざけるな! そんな馬鹿なことを……!!」
サラの手が、ゆっくりと持ち上げられる。そのまま俺の頬に触れると、同時に開かれる瞼。
「まだ出会ってほんの少ししか経っていないのに……私の全てを見せられた……多分本当の私を見てくれた……だから、かな……?」
「サラ?」
「私……イザークに惹かれてる……」
ごほごほと苦しそうな咳をしながらも、その顔に浮かんでいるのは幸せそうな微笑み。胸が痛くて、熱い。
「イザーク……最期の我が儘……聞いて……」
「最期だなんて言うな!」
「お前は間違うな……よ……それと、もし……少しでも……私……の事を思う気持ちが……あったら……」
『 』
その言葉は音にならなかった。
もう声も出ないらしい。そんなサラに、俺は答えた。
口付けで。
再び俺の視界に入ったサラは――。
微笑みを湛えたまま、事切れていた。
俺は、そっとサラを抱きしめた。
サラの背中を伝う滴がどこから生まれた物なのか、俺は知らない。今はただ、焼け付くような胸の痛みを忘れたくて。少しずつ体温を無くしていくサラの体をひたすら抱きしめていた。
相変わらず戦争は続いている。変わらない毎日の中、俺も変わらずナチュラルと戦い続けていた。
ただ一つ違うのは、一つ命を奪う毎に浮かんでくる者がいると言うこと。
「サラ……」
俺が今やっている事は、正しいのだろうか。
俺は今……何と戦っているのだろうか?
そんな疑問を抱きながら、戦火に己が身を投じる。
アスランが地球軍についていた事を知ったときも。
ディアッカまでもが向こうにいる事を知ったときも。
この疑問を胸に、俺は戦い続けている。
サラが俺の心に存在している限り、俺の中からその疑問が消えることはないだろう。それはつまり、確実に消えはしないということ。
「こんな形で気付いてしまうなんてな」
現実。
真実。
想い。
戦いの最中、ふとモニターに映り込んでいる自分の姿を見て、俺は苦笑する。
「サラもこんな想いを抱いていたんだろうか?」
そこに映っていたのは、能面のような俺の顔。あの時の……泣くのを必死に堪えていたサラと同じ顔。
「まるで鏡を見ているようだな。俺達が惹かれあったのはひょっとしたら……」
いや、今は考えないでおこう。俺は頭を強く振ると、レーダーに表れた敵に照準を合わせた。
「今は未だ答えは見つからないだろう。でもいつかきっと……」
そう、強く願いながら――。
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