合わせ鏡(イザーク)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「僕たち兄妹は軍人の家系だということもあって、物心付く頃からそれなりの戦闘訓練を受けていた。僕たちもそれが当たり前だと思っていたし、コーディネーターとしてもそちらの方面の遺伝子が上手く働いてくれて、苦にならなかった。僕もサラも、10の時に軍に特別入隊しているんだよ。その3年後には既に赤を着るようになっていた」
「13歳で……」
「その頃はまだ、今ほど戦争も酷くなかったからな。血のバレンタインさえなければ……僕達は、まだ笑う事の許される生活を送れていたかもしれない。だが……悲劇は起こってしまった」
「兄さん……」
「僕達はあの悲劇で、両親を失った。それからは戦況が悪化し、ひたすらナチュラルを殺戮する日々。最初の頃は、両親の敵と思っていたが……ある日気付いてしまったんだよ。僕は自分と同じように両親を殺されて、恨みを心に抱いた子供を作っていることに」
悲痛な叫びだった。
顔を両手で覆い、藻掻くような仕草を見せる青年。サラはと言うと、俯いたまま微動だにしない。
「血だまりの中、もう死んでしまっている両親を庇うようにして、幼い子供がこちらに銃口を向けている。その姿を何度も見ているうちに僕は……堪らなくなって、軍を抜けた」
「脱走したのか?」
「そうだ。一時は追っ手が迫ってきて危ういところだったが、偶然とある団体に拾われてね。気が付けばまだ1年にも満たないというのに、僕がこの団体をまとめるほどになっていた」
「その団体とは一体……?」
「ナチュラルでもコーディネーターでもない、『人間』を作ろうとしているところさ。殺し、殺され、憎み、憎まれる。そんな汚い心を少しでも捨て、皆が幸せに生きていける世界を作るための基盤となる『人間』を作るための……ね」
ガタリと音を立て、机の引き出しを開けるユキト。
隙を狙われて銃を向けられては敵わない。俺は反射的に銃を構えた。しかし出てきたのは、1枚の写真。
「ここには12人の子供達がいた。今で言うナチュラルとコーディネーター、両方の子供がね。物心付く前からそれらの差別の概念をなくした教育を行っていたから、あの子達にはその辺の感覚は存在していない。だが……守りきれなかったな」
「兄さん……」
「僕が先代に託された子供達、全てが殺されてしまった。僕にはやっぱり無理だったようだな……」
話を聞いていて、この男の今の状況は分かった。
だが……どうしても分からないことがある。
「何故ザフトは子供達を殺す必要があった?」
俺の疑問はそこだった。
言ってみれば中立の立場となる子供達。わざわざ重要な任務として、俺達に殺させる必要性がどこにある?
「……ほんとに分からないか? イザーク」
「分からないから聞いている!」
ならばお前には分かるのか! と怒鳴ろうとしながらサラの方を見ると……初めて会ったときに見たのと同じ能面のような、表情のない顔。
「……なら、私が答えてやるよ。まず一つは、この団体を組織しているのが、ザフトや地球軍から脱走した者達ばかりだということ」
「な……っ!」
「そして、もう一つ」
サラの瞳が、冷ややかに光る。
「中立の人間が増えれば、コーディネーターとナチュラルとが戦う必要性がなくなる。つまりナチュラルを倒すという名目がなくなってしまうと言うわけだ」
「~~っ!!」
「全てかどうかは知らないが、ザフトの上の方の連中は、いわゆる死の商人と同じ考えを持っているって事さ」
こんなにも驚かされたことがあっただろうか。
ザフトが死の商人?
自ら戦争をしようと働きかけている……?
「戦争を無くそうとする者は悪。悪は、その芽から摘み取っていく。それが上のやり方さ」
「そこまで分かっていて、何故お前は……サラは子供を殺し続けたんだ!?」
「知らなかったんだよ! 前回の任務の時に偶然発見した資料を見るまでは! それに……私には選択の余地はない。」
「サラ?」
「私は絶対に任務を遂行しなければならないんだ。……例え相手が兄さんであろうと……」
まるで心が無いかのように、全く感情を表さないままふらりと立ち上がるサラ。その手には、銃。
「おい! サラ!?」
ぴたりと照準が合う。ユキトはそれをちらりと見ると、小さくフッと笑った。
「変わってないな、サラ。一度受けた任務はどんな事があっても遂行する。……良いさ。撃てよ……でもこれで最後だ。お前はもう戦争から……軍から足を洗え。そしてお前も……」
「出来ることならそうしたいよ。でも駄目なんだ……リタが……」
「そういう事か……」
兄妹にしか分からない会話。もどかしさと痛みが交錯する中、俺はただ見ていることしかできなかった。
一体俺は何のためにここにいるんだ? 軍の人間としての任務遂行するわけでもなく、サラの助けになっているわけでもない。
……何のために俺は……
ピッ
突然聞こえた電子音に、俺達ははっと身構えた。音の発信源は……俺の腕章!?
サラはこちらにちらりと目を向けたが、すぐに小さく舌打ちしながら目をそらした。そして銃口をユキトに向ける。
「ごめん、兄さん。もうこれ以上は……」
「あぁ……」
ガチリとハンマーを下ろす。そのまま間髪入れず引かれたトリガーは、確実に一人の男の命を奪う引き金となった。
あっけない幕切れ。
俺達の前にあるのは、机に血だまりを作っている抜け殻。
サラは一言も発することなく、部屋を出た。
振り返ろうともしない。
俺も、言葉をかけることはなかった。
「13歳で……」
「その頃はまだ、今ほど戦争も酷くなかったからな。血のバレンタインさえなければ……僕達は、まだ笑う事の許される生活を送れていたかもしれない。だが……悲劇は起こってしまった」
「兄さん……」
「僕達はあの悲劇で、両親を失った。それからは戦況が悪化し、ひたすらナチュラルを殺戮する日々。最初の頃は、両親の敵と思っていたが……ある日気付いてしまったんだよ。僕は自分と同じように両親を殺されて、恨みを心に抱いた子供を作っていることに」
悲痛な叫びだった。
顔を両手で覆い、藻掻くような仕草を見せる青年。サラはと言うと、俯いたまま微動だにしない。
「血だまりの中、もう死んでしまっている両親を庇うようにして、幼い子供がこちらに銃口を向けている。その姿を何度も見ているうちに僕は……堪らなくなって、軍を抜けた」
「脱走したのか?」
「そうだ。一時は追っ手が迫ってきて危ういところだったが、偶然とある団体に拾われてね。気が付けばまだ1年にも満たないというのに、僕がこの団体をまとめるほどになっていた」
「その団体とは一体……?」
「ナチュラルでもコーディネーターでもない、『人間』を作ろうとしているところさ。殺し、殺され、憎み、憎まれる。そんな汚い心を少しでも捨て、皆が幸せに生きていける世界を作るための基盤となる『人間』を作るための……ね」
ガタリと音を立て、机の引き出しを開けるユキト。
隙を狙われて銃を向けられては敵わない。俺は反射的に銃を構えた。しかし出てきたのは、1枚の写真。
「ここには12人の子供達がいた。今で言うナチュラルとコーディネーター、両方の子供がね。物心付く前からそれらの差別の概念をなくした教育を行っていたから、あの子達にはその辺の感覚は存在していない。だが……守りきれなかったな」
「兄さん……」
「僕が先代に託された子供達、全てが殺されてしまった。僕にはやっぱり無理だったようだな……」
話を聞いていて、この男の今の状況は分かった。
だが……どうしても分からないことがある。
「何故ザフトは子供達を殺す必要があった?」
俺の疑問はそこだった。
言ってみれば中立の立場となる子供達。わざわざ重要な任務として、俺達に殺させる必要性がどこにある?
「……ほんとに分からないか? イザーク」
「分からないから聞いている!」
ならばお前には分かるのか! と怒鳴ろうとしながらサラの方を見ると……初めて会ったときに見たのと同じ能面のような、表情のない顔。
「……なら、私が答えてやるよ。まず一つは、この団体を組織しているのが、ザフトや地球軍から脱走した者達ばかりだということ」
「な……っ!」
「そして、もう一つ」
サラの瞳が、冷ややかに光る。
「中立の人間が増えれば、コーディネーターとナチュラルとが戦う必要性がなくなる。つまりナチュラルを倒すという名目がなくなってしまうと言うわけだ」
「~~っ!!」
「全てかどうかは知らないが、ザフトの上の方の連中は、いわゆる死の商人と同じ考えを持っているって事さ」
こんなにも驚かされたことがあっただろうか。
ザフトが死の商人?
自ら戦争をしようと働きかけている……?
「戦争を無くそうとする者は悪。悪は、その芽から摘み取っていく。それが上のやり方さ」
「そこまで分かっていて、何故お前は……サラは子供を殺し続けたんだ!?」
「知らなかったんだよ! 前回の任務の時に偶然発見した資料を見るまでは! それに……私には選択の余地はない。」
「サラ?」
「私は絶対に任務を遂行しなければならないんだ。……例え相手が兄さんであろうと……」
まるで心が無いかのように、全く感情を表さないままふらりと立ち上がるサラ。その手には、銃。
「おい! サラ!?」
ぴたりと照準が合う。ユキトはそれをちらりと見ると、小さくフッと笑った。
「変わってないな、サラ。一度受けた任務はどんな事があっても遂行する。……良いさ。撃てよ……でもこれで最後だ。お前はもう戦争から……軍から足を洗え。そしてお前も……」
「出来ることならそうしたいよ。でも駄目なんだ……リタが……」
「そういう事か……」
兄妹にしか分からない会話。もどかしさと痛みが交錯する中、俺はただ見ていることしかできなかった。
一体俺は何のためにここにいるんだ? 軍の人間としての任務遂行するわけでもなく、サラの助けになっているわけでもない。
……何のために俺は……
ピッ
突然聞こえた電子音に、俺達ははっと身構えた。音の発信源は……俺の腕章!?
サラはこちらにちらりと目を向けたが、すぐに小さく舌打ちしながら目をそらした。そして銃口をユキトに向ける。
「ごめん、兄さん。もうこれ以上は……」
「あぁ……」
ガチリとハンマーを下ろす。そのまま間髪入れず引かれたトリガーは、確実に一人の男の命を奪う引き金となった。
あっけない幕切れ。
俺達の前にあるのは、机に血だまりを作っている抜け殻。
サラは一言も発することなく、部屋を出た。
振り返ろうともしない。
俺も、言葉をかけることはなかった。
