合わせ鏡(イザーク)
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小高い丘の上から見下ろすと、大きな敷地の中に教会のような作りの屋敷が建っていた。屋敷の周りは色とりどりの花々が覆っている。庭には人影はない。
何かしらの団体を治めている人間の家にしては、やけに無防備だな、と思うと同時に気になったこと。
やけに、子供用の遊具が多かった。
「それで? これからどうするんだ?サラ」
「決まってる。屋敷の中に潜入するさ」
「俺は自分の銃以外の武装をしてないんだが?」
「それで良いんだ。イザークには、あくまで私のサポートに付いてもらうんだからな。普段のように活躍されては困るんだ。今回の任務は」
「……どういうことだ……?」
いつもとは全く違う任務と、その進め方に戸惑いを隠せない。何しろ詳細を聞かされていないのだから。
本当は、サラを思い切り怒鳴りつけてやりたいのだが、勝手の分からない今、仲間割れをすると言うことは、自分にとっても不利益になる。俺は納得行かないものの、渋々サラに従うしかなかった。
「とにかく私に付いてきて、その都度私の指示に従ってくれ。良いな」
「……分かった」
行くぞ! とサラは再びジープを走らせた。
そのまま屋敷の前に止め、悠々と玄関に歩を進める。あまりに無防備な突入のため、俺はさすがに怒鳴りつけようとしたが、
「大丈夫だから」
と笑顔で返されると何も言えなくなった。
キィ……と音を立てながら扉が開く。吹き抜けの玄関は、やけに薄暗かった。扉を閉めると、小さな蝋燭の明かりしか見えない。
しかしサラはこの屋敷の中の構造を把握しているのか、なんのためらいもなく正面左手の通路へと歩いていった。俺もそれに付いていく。
1つ目の扉。サラは、
「ここで待っていてくれ。私は部屋の中を確認してくるから」
と言い残し、一人部屋に潜入した。
俺はというと、廊下で只ひたすら敵が来ないか、中で何か事が起こらないかと身を潜めて伺っている。
暫く耳を澄ませていると、パスッパスッと小さな音が聞こえた。先ほどちらりと見えたサラの銃にはサイレンサーが付いていたから、多分その銃の発砲音だろう。
数秒後、部屋を出てきたサラが纏っていたのは、明らかな火薬の匂い。
「……この部屋にいた輩は始末したよ。次だ」
目を合わせることなく、サラは再び次の部屋へと歩き出した。俺は何も言わず、只サラの後を追う。
次の部屋も。
そのまた次の部屋も。
サラは一人部屋の中へと入り、硝煙の匂いを纏って出てくる。
5つ目の部屋。
ここでもまた同じ事が繰り返されるのか……と思った矢先。部屋の中から、明らかにサラの銃とは違う発砲音が聞こえ、俺は慌てて部屋に飛び込んだ。
そこで見たものは……。
「サラ! これは一体……!」
サラの左腕には被弾した痕。その銃口の先には、震えながらサラに銃口を向けている少年。
年の頃なら、多分5歳くらいだろう。少年の足下には、これまた同じくらいの年の子供が2人倒れていた。
「おい、サラ!! 何で子供を……」
「だまっていろ!……だからお前は外で待たせたんだ……っ!」
サラはそう言うと、今時珍しいリボルバー式の銃のハンマーを下ろした。そのままためらいもなくトリガーを引く。
パスッ!
音と同時に少年の手から銃が落ちる。数瞬遅れて、少年の体が地面に触れ……。
残されたのは静寂のみだった。
さすがの俺も、しばし言葉を失っていた。
一体何なんだ? これは。確かに屋敷を襲撃するとは聞いていたが、今目の前にいるのは民間人の子供ばかり。それもこんなに幼い……。
確かに俺達も子供のようなモノだが、軍人と民間人では全く違う。
「サラ……!!」
「行くぞ。次で最後だ」
表情も変えずシリンダーから空になったカートリッジを取り出し、新たなブリッドを装填する。その慣れた手つきは、俺に何かを訴えているように思えて――。
もう何も言わず、俺は部屋を駆け出るサラの後を追った。
最後の部屋。再び外で待っていろと言われたが、俺はもうその言葉に耳を貸さなかった。
同時に部屋に入ると、そこにいたのは一人の男。見たところ、俺達より少し上に思える青年は、全てが分かっていたかのような笑みを浮かべていた。
「やはり来たんだね」
直接心に語りかけてくるような優しい声だった。こいつが、この屋敷の主か……?
「……どうしていつもこの任務が私だけに回ってくるのか、ようやく分かったよ……何でこんな……こんなのって……っ!!」
サラが、聞いているだけで胸が締め付けられるような声で叫ぶ。
「そうか……今までのは全てサラが……」
その言葉に、青年も苦しそうな表情を見せる。こいつらは……知り合いか?
「おい、サラ。あいつは貴様の知り合いなのか?」
たまらず俺は尋ねた。
「あいつは……あいつの名はユキト=フユツキ。私の兄だ……」
「兄……だと!?」
「僕は、紛れもなくサラの兄だよ。そして昔は僕も、今君が着ているのと同じ赤を着ていたザフトの軍人だ」
「な……っ!」
驚きで、部屋に入ったときから向けていた銃口を下ろしてしまう。すぐに気を取り直して構えたが、青年は手をあげて、
「逃げたり刃向かったりする気はないよ。……話を聞いてくれるかな?」
と俺達を側のソファーに促した。
サラを見ると、一瞬すがるような目で俺を見たものの、すぐにまた視線をはずし、こくりと頷く。俺は全神経を青年に集中させながらも、サラの隣に腰を下ろした。
何かしらの団体を治めている人間の家にしては、やけに無防備だな、と思うと同時に気になったこと。
やけに、子供用の遊具が多かった。
「それで? これからどうするんだ?サラ」
「決まってる。屋敷の中に潜入するさ」
「俺は自分の銃以外の武装をしてないんだが?」
「それで良いんだ。イザークには、あくまで私のサポートに付いてもらうんだからな。普段のように活躍されては困るんだ。今回の任務は」
「……どういうことだ……?」
いつもとは全く違う任務と、その進め方に戸惑いを隠せない。何しろ詳細を聞かされていないのだから。
本当は、サラを思い切り怒鳴りつけてやりたいのだが、勝手の分からない今、仲間割れをすると言うことは、自分にとっても不利益になる。俺は納得行かないものの、渋々サラに従うしかなかった。
「とにかく私に付いてきて、その都度私の指示に従ってくれ。良いな」
「……分かった」
行くぞ! とサラは再びジープを走らせた。
そのまま屋敷の前に止め、悠々と玄関に歩を進める。あまりに無防備な突入のため、俺はさすがに怒鳴りつけようとしたが、
「大丈夫だから」
と笑顔で返されると何も言えなくなった。
キィ……と音を立てながら扉が開く。吹き抜けの玄関は、やけに薄暗かった。扉を閉めると、小さな蝋燭の明かりしか見えない。
しかしサラはこの屋敷の中の構造を把握しているのか、なんのためらいもなく正面左手の通路へと歩いていった。俺もそれに付いていく。
1つ目の扉。サラは、
「ここで待っていてくれ。私は部屋の中を確認してくるから」
と言い残し、一人部屋に潜入した。
俺はというと、廊下で只ひたすら敵が来ないか、中で何か事が起こらないかと身を潜めて伺っている。
暫く耳を澄ませていると、パスッパスッと小さな音が聞こえた。先ほどちらりと見えたサラの銃にはサイレンサーが付いていたから、多分その銃の発砲音だろう。
数秒後、部屋を出てきたサラが纏っていたのは、明らかな火薬の匂い。
「……この部屋にいた輩は始末したよ。次だ」
目を合わせることなく、サラは再び次の部屋へと歩き出した。俺は何も言わず、只サラの後を追う。
次の部屋も。
そのまた次の部屋も。
サラは一人部屋の中へと入り、硝煙の匂いを纏って出てくる。
5つ目の部屋。
ここでもまた同じ事が繰り返されるのか……と思った矢先。部屋の中から、明らかにサラの銃とは違う発砲音が聞こえ、俺は慌てて部屋に飛び込んだ。
そこで見たものは……。
「サラ! これは一体……!」
サラの左腕には被弾した痕。その銃口の先には、震えながらサラに銃口を向けている少年。
年の頃なら、多分5歳くらいだろう。少年の足下には、これまた同じくらいの年の子供が2人倒れていた。
「おい、サラ!! 何で子供を……」
「だまっていろ!……だからお前は外で待たせたんだ……っ!」
サラはそう言うと、今時珍しいリボルバー式の銃のハンマーを下ろした。そのままためらいもなくトリガーを引く。
パスッ!
音と同時に少年の手から銃が落ちる。数瞬遅れて、少年の体が地面に触れ……。
残されたのは静寂のみだった。
さすがの俺も、しばし言葉を失っていた。
一体何なんだ? これは。確かに屋敷を襲撃するとは聞いていたが、今目の前にいるのは民間人の子供ばかり。それもこんなに幼い……。
確かに俺達も子供のようなモノだが、軍人と民間人では全く違う。
「サラ……!!」
「行くぞ。次で最後だ」
表情も変えずシリンダーから空になったカートリッジを取り出し、新たなブリッドを装填する。その慣れた手つきは、俺に何かを訴えているように思えて――。
もう何も言わず、俺は部屋を駆け出るサラの後を追った。
最後の部屋。再び外で待っていろと言われたが、俺はもうその言葉に耳を貸さなかった。
同時に部屋に入ると、そこにいたのは一人の男。見たところ、俺達より少し上に思える青年は、全てが分かっていたかのような笑みを浮かべていた。
「やはり来たんだね」
直接心に語りかけてくるような優しい声だった。こいつが、この屋敷の主か……?
「……どうしていつもこの任務が私だけに回ってくるのか、ようやく分かったよ……何でこんな……こんなのって……っ!!」
サラが、聞いているだけで胸が締め付けられるような声で叫ぶ。
「そうか……今までのは全てサラが……」
その言葉に、青年も苦しそうな表情を見せる。こいつらは……知り合いか?
「おい、サラ。あいつは貴様の知り合いなのか?」
たまらず俺は尋ねた。
「あいつは……あいつの名はユキト=フユツキ。私の兄だ……」
「兄……だと!?」
「僕は、紛れもなくサラの兄だよ。そして昔は僕も、今君が着ているのと同じ赤を着ていたザフトの軍人だ」
「な……っ!」
驚きで、部屋に入ったときから向けていた銃口を下ろしてしまう。すぐに気を取り直して構えたが、青年は手をあげて、
「逃げたり刃向かったりする気はないよ。……話を聞いてくれるかな?」
と俺達を側のソファーに促した。
サラを見ると、一瞬すがるような目で俺を見たものの、すぐにまた視線をはずし、こくりと頷く。俺は全神経を青年に集中させながらも、サラの隣に腰を下ろした。