リボンをかけて(イザーク)
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「事務次官補佐の部屋では一瞬戸惑った。見て直ぐにサラだと分かったものの、あまりにも印象が違ったからな。でもこうして見るとやっぱりサラはサラだな」
「あ、当たり前じゃない!」
「ならば何故、いつもと違う自分を作ってここに来た?」
「だって……いつもの私じゃ伝えられない気がして……」
普段通りにイザークと会ったところで、きっと例のごとく喧嘩口調で罵りあうだけで終わってしまう。そんな時にお祝いの言葉や告白を伝えようとしても、きっと笑い飛ばされるだけだろう。
だからこそ、意表を付こうと考えたのだった。本当は、顔から火が出そうなほどに恥ずかしかったけれど。それでも伝えられない方が辛いと思ったから。
「この呪文、効くなぁ」
「呪文?」
「気にしないで。大したことじゃないから」
「いいや、気にする」
「え……?」
イザークは真剣な面もちで、サラの体をそっと抱き寄せた。そのまま耳に口を近づけると……。
「俺は秘密や隠し事が嫌いだ。ついでに俺以外の野郎の前で、こういう格好はするな」
「イザーク……」
「俺は独占欲が強い。覚悟しておけ!」
「……うん!!」
さっきまで悲しくて泣いていたはずなのに、今度は嬉し涙が頬を伝う。よく泣く奴だと苦笑しながらも、イザークは溢れ出る涙を飽きもせず拭ってくれた。
「イザーク……」
「何だ?」
「……好きだよ」
「分かってる。でもそういう事は男の方から言うもんだ」
「え……」
「仕切直しだ。サラ。俺はお前が好きだ。俺の女になるか?」
「……はい」
そのまま私達はしばし見つめ合い、ごく自然に唇を重ねようと顔を近付ける。お互いの吐息が頬に触れる程になった時。
「あ~……お取り込み中悪いんだが……」
「え?」
イザークと私の声が被る。
突然声をかけられ、驚きながら振り返るとそこにはーー。
「お、お父さん!!」
「私の部屋の前で一体何をしてるんだ? 二人とも」
「事務次官補佐……俺は……」
「声が聞こえたから、私が書類を見終えるのを待っているのかと思いきや、お前達は……っ!」
……やばい。
猛烈にやばい!
想いを伝える事に必死で忘れていたけれど、ここはお父さんの部屋の真ん前で。
ドア越しには叫ばないと声は聞こえないようにはなっているけれど、それでも多分お父さんは気付いてる。
というより、最後の会話を聞いて……!?
私があわあわしていると、何故かイザークがお父さんの前に出た。
「イザーク……?」
「事務次官補佐。俺は本気ですから。お嬢さんの事」
「イ、イザークっ!?」
男らしいイザークの姿に感動したいのは山々だったけど、今のお父さんは……壊れてる父は普通じゃない!
「何だと~~!? 本気なのは当たり前だ! 私の娘に惚れない奴なんていない! だがお前のような若造が私の娘と付き合うなぞ未だ早い!」
「ちょ、お父さん! 落ち着いて!!」
「私は絶対許さんぞ~~!」
「おいサラ! 事務次官補佐は……」
「駄目よ! 今のお父さんには何も通じない」
「サラ! イザークから離れなさい! パパの所へ戻ってくるんだ!」
「パパなんて普段から呼んでないでしょ!……こうなったら……」
せっかく良い雰囲気だったのに、スペシャル級の親バカ親父のせいでぶちこわし。
それでも私は今幸せだった。何故なら……。
いつの間にかイザークに握られていた手。私はぎゅっと強く握り返すと、
「イザーク、逃げるよ!」
「な……おい! ちょっと待て、サラ!」
「コラ待ちなさい二人とも~~っ!」
叫ぶ父の声を背中に聞きながら、私達は手に手を取って走り出した。慌てて追いかけようとした父だったけれど、さすがに全力疾走の私達に追いつくのは不可能だったようで、すぐに姿は見えなくなる。
「おい! 何処まで行くつもりだ?」
私の手を引いて走るイザークが、振り返りながら言った。
「そうだね~。二人だけになれる所? なんちゃって」
冗談っぽく返す私に、イザークは一瞬目を丸くしたが、すぐにその表情は挑むような笑顔になる。
「良いだろう。付いて来い」
そう言ったイザークは、そのまま私を引っ張りながら走り続けた。
彼の向かう先ににイザークの部屋がある事を知るのは、その数秒後ーー。
〜了〜
「あ、当たり前じゃない!」
「ならば何故、いつもと違う自分を作ってここに来た?」
「だって……いつもの私じゃ伝えられない気がして……」
普段通りにイザークと会ったところで、きっと例のごとく喧嘩口調で罵りあうだけで終わってしまう。そんな時にお祝いの言葉や告白を伝えようとしても、きっと笑い飛ばされるだけだろう。
だからこそ、意表を付こうと考えたのだった。本当は、顔から火が出そうなほどに恥ずかしかったけれど。それでも伝えられない方が辛いと思ったから。
「この呪文、効くなぁ」
「呪文?」
「気にしないで。大したことじゃないから」
「いいや、気にする」
「え……?」
イザークは真剣な面もちで、サラの体をそっと抱き寄せた。そのまま耳に口を近づけると……。
「俺は秘密や隠し事が嫌いだ。ついでに俺以外の野郎の前で、こういう格好はするな」
「イザーク……」
「俺は独占欲が強い。覚悟しておけ!」
「……うん!!」
さっきまで悲しくて泣いていたはずなのに、今度は嬉し涙が頬を伝う。よく泣く奴だと苦笑しながらも、イザークは溢れ出る涙を飽きもせず拭ってくれた。
「イザーク……」
「何だ?」
「……好きだよ」
「分かってる。でもそういう事は男の方から言うもんだ」
「え……」
「仕切直しだ。サラ。俺はお前が好きだ。俺の女になるか?」
「……はい」
そのまま私達はしばし見つめ合い、ごく自然に唇を重ねようと顔を近付ける。お互いの吐息が頬に触れる程になった時。
「あ~……お取り込み中悪いんだが……」
「え?」
イザークと私の声が被る。
突然声をかけられ、驚きながら振り返るとそこにはーー。
「お、お父さん!!」
「私の部屋の前で一体何をしてるんだ? 二人とも」
「事務次官補佐……俺は……」
「声が聞こえたから、私が書類を見終えるのを待っているのかと思いきや、お前達は……っ!」
……やばい。
猛烈にやばい!
想いを伝える事に必死で忘れていたけれど、ここはお父さんの部屋の真ん前で。
ドア越しには叫ばないと声は聞こえないようにはなっているけれど、それでも多分お父さんは気付いてる。
というより、最後の会話を聞いて……!?
私があわあわしていると、何故かイザークがお父さんの前に出た。
「イザーク……?」
「事務次官補佐。俺は本気ですから。お嬢さんの事」
「イ、イザークっ!?」
男らしいイザークの姿に感動したいのは山々だったけど、今のお父さんは……壊れてる父は普通じゃない!
「何だと~~!? 本気なのは当たり前だ! 私の娘に惚れない奴なんていない! だがお前のような若造が私の娘と付き合うなぞ未だ早い!」
「ちょ、お父さん! 落ち着いて!!」
「私は絶対許さんぞ~~!」
「おいサラ! 事務次官補佐は……」
「駄目よ! 今のお父さんには何も通じない」
「サラ! イザークから離れなさい! パパの所へ戻ってくるんだ!」
「パパなんて普段から呼んでないでしょ!……こうなったら……」
せっかく良い雰囲気だったのに、スペシャル級の親バカ親父のせいでぶちこわし。
それでも私は今幸せだった。何故なら……。
いつの間にかイザークに握られていた手。私はぎゅっと強く握り返すと、
「イザーク、逃げるよ!」
「な……おい! ちょっと待て、サラ!」
「コラ待ちなさい二人とも~~っ!」
叫ぶ父の声を背中に聞きながら、私達は手に手を取って走り出した。慌てて追いかけようとした父だったけれど、さすがに全力疾走の私達に追いつくのは不可能だったようで、すぐに姿は見えなくなる。
「おい! 何処まで行くつもりだ?」
私の手を引いて走るイザークが、振り返りながら言った。
「そうだね~。二人だけになれる所? なんちゃって」
冗談っぽく返す私に、イザークは一瞬目を丸くしたが、すぐにその表情は挑むような笑顔になる。
「良いだろう。付いて来い」
そう言ったイザークは、そのまま私を引っ張りながら走り続けた。
彼の向かう先ににイザークの部屋がある事を知るのは、その数秒後ーー。
〜了〜
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