仮面の告白(ラウ)
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サラは、ザフトでも最も信頼されている医師の一人である。また、両親が薬を開発する研究をしていたこともあり、サラもその道に精通していた。
だから時折軍に頼まれ、薬を調合することもある。その中の一つに、ラウの薬の調合が含まれていたのだが、普通では考えられない薬の上、実はラウの個人的な依頼なのではないかという疑いもあり、サラはずっと訝しんでいた。
一時は何故こんなーー短くなってしまったテロメアの寿命を少しでも延ばし、体の表面組織を一時的にでも若返らせる薬を作れというのか、と問いただしていたのだが、いつものらりくらりとかわされてしまって。仮面の下に隠された見えない本音に、やがてサラは追求することを諦めた。
それ以来、こうして薬を渡しに来たときはいつも、薬と嫌みだけを残して去るようにしている。
「じゃ、私の役目は終わりって事で帰るわ。まぁせいぜいお頑張り遊ばせ。隊長さん」
手の中にこぼしていた薬を目の前のゴミ箱に捨てると、サラはゆっくりと立ち上がった。受け取ったケースを机に仕舞いに戻ったラウの方を振り向きもせず、部屋を出ようとする。
扉を開けようと、開閉ボタンを押そうとしたその時ーー。
「サラ、一つ聞きたい」
不意に声をかけられた。
ボタンを押すタイミングを外し、思わず扉にぶつかりそうになってしまったサラは、うざったそうに「何よ?」と少しだけ体をラウの方に向ける。
するといつの間に移動したのか、急接近していたラウの姿が目に入った。
「うわっ! 気配を消して近付かないでよね。吃驚するじゃない」
「別にそんなつもりはなかったのだがな」
くっくっと口の端を上げて笑うラウに腹を立て、サラが睨み付ける。だがラウはそれに全く動じることなく、いかにも面白いと言った風に笑い続けていた。
「私に聞きたいことがあって呼び止めたんじゃなかったの? バカにするためなら、呼び止めるな。迷惑だっての!」
「ああ、いや、すまない」
まだ笑みを残しながら、とりあえず謝罪する。そこに心がないことは、サラが一番よく分かっていた。
「悪いと思っていなくても、平気で詫びを入れられる奴だよね、あんたって」
「いやいや、これでも心から謝っているつもりなんだがね」
「どの口が言ってるんだか」
「私に口は一つしか無い事くらい、君も知っているだろう?」
「……」
会話をすればするほどバカらしくなってくる。こんな男の相手などしていられるか、と、サラは無言のまま開閉ボタンに再び手を伸ばした。ところが。
「人体実験は、誰を被験者にしている?」
ボタンにはまだ触れていない。開かれない扉は、サラの動揺を表していた。
だから時折軍に頼まれ、薬を調合することもある。その中の一つに、ラウの薬の調合が含まれていたのだが、普通では考えられない薬の上、実はラウの個人的な依頼なのではないかという疑いもあり、サラはずっと訝しんでいた。
一時は何故こんなーー短くなってしまったテロメアの寿命を少しでも延ばし、体の表面組織を一時的にでも若返らせる薬を作れというのか、と問いただしていたのだが、いつものらりくらりとかわされてしまって。仮面の下に隠された見えない本音に、やがてサラは追求することを諦めた。
それ以来、こうして薬を渡しに来たときはいつも、薬と嫌みだけを残して去るようにしている。
「じゃ、私の役目は終わりって事で帰るわ。まぁせいぜいお頑張り遊ばせ。隊長さん」
手の中にこぼしていた薬を目の前のゴミ箱に捨てると、サラはゆっくりと立ち上がった。受け取ったケースを机に仕舞いに戻ったラウの方を振り向きもせず、部屋を出ようとする。
扉を開けようと、開閉ボタンを押そうとしたその時ーー。
「サラ、一つ聞きたい」
不意に声をかけられた。
ボタンを押すタイミングを外し、思わず扉にぶつかりそうになってしまったサラは、うざったそうに「何よ?」と少しだけ体をラウの方に向ける。
するといつの間に移動したのか、急接近していたラウの姿が目に入った。
「うわっ! 気配を消して近付かないでよね。吃驚するじゃない」
「別にそんなつもりはなかったのだがな」
くっくっと口の端を上げて笑うラウに腹を立て、サラが睨み付ける。だがラウはそれに全く動じることなく、いかにも面白いと言った風に笑い続けていた。
「私に聞きたいことがあって呼び止めたんじゃなかったの? バカにするためなら、呼び止めるな。迷惑だっての!」
「ああ、いや、すまない」
まだ笑みを残しながら、とりあえず謝罪する。そこに心がないことは、サラが一番よく分かっていた。
「悪いと思っていなくても、平気で詫びを入れられる奴だよね、あんたって」
「いやいや、これでも心から謝っているつもりなんだがね」
「どの口が言ってるんだか」
「私に口は一つしか無い事くらい、君も知っているだろう?」
「……」
会話をすればするほどバカらしくなってくる。こんな男の相手などしていられるか、と、サラは無言のまま開閉ボタンに再び手を伸ばした。ところが。
「人体実験は、誰を被験者にしている?」
ボタンにはまだ触れていない。開かれない扉は、サラの動揺を表していた。