ファインダー越しに(ラスティ悲恋)
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「これ……」
ラスティの葬儀の後、アスランから渡された分厚い封筒は、見た目以上にがっしりとしていて重かった。
おそるおそる開けて中を見れば、そこに入っていたのは写真。
「あの時の……」
それはあの日、二人で出かけた撮影旅行の時の写真だった。
「ラスティの机の引き出しの中にあったんだ。君に渡しておいた方が良いと思って」
沈痛な面もちで言うアスランに、私は何も言葉を返せない。というよりも、何を言って良いのかが分からなかった。
ただ、ぼんやりとした意識の中、手だけが写真をめくっていく。一枚、また一枚と。
笑顔。
拗ねた顔。
すました顔。
怒った顔。
そしてーー。
「ラスティには、君がこんな風に見えていたんだな」
横から見ていたアスランが言う。私の手を止めた写真には、自分でも驚くほどに優しく微笑む私がいた。
「ラスティは、君が好きだったんだ。心の底から」
「え……?」
アスランの言葉の意味が分からず、間の抜けた声を出してしまう。
ラスティが私を好き? そんな事、一度も言われたことがない。
「カメラはその写し手の心を形にする。好きじゃなきゃ、こんな写真は撮れないよ」
「そんな事ーー」
「無い」と言おうとして、思いとどまる。私には、ラスティを否定する言葉を口にすることは出来なかった。
「あいつは君を想っていたんだな」
ぱたっ……。
不意に小さな音がした。
ぱたっ……ぱたたっ……と続けて音がする。
一体何なのかと目を凝らすと、手にしている写真に落ちた水音だった。
「あ……」
慌てて拭い取ろうとして気付く。写真に落ちる水の湧き出ている場所に。
「私……」
その時やっと私は、自分が泣いていることを知った。次から次へと溢れ出てくる涙は、止まることを知らない。
「サラ……」
アスランが私を呼ぶ。とても優しく、そして悲しい声で。
それは同情? それともーー?
私の涙につられたのか、今にも泣き出しそうな顔をして私を見ているアスランに、私は小さく首を横に振って答えた。
「今更」
彼の気持ちが分かったところで、何も変わらない。彼は、私の中で時を止めたまま生き続けるだけ。私は、空っぽになってしまった心を抱きながら生き続けるだけ。
今更自分の心に気付いたところで、どうなると言うのだろう。もう少し早く気付いていれば、幸せな未来を掴めていた? そんな事、今となってはもう夢物語で、現実のモノとはなりえない。
「サラ」
アスランがもう一度私を呼んだ。
「大丈夫。私は大丈夫だから。絶対生き抜いてみせるわ。ラスティの分まで。ラスティの存在を忘れないために」
たった今気付いたばかりの想いを生み出してくれた彼のために。自分でも気付かなかった自分を見つけてくれた彼のために。
それは単なる自己満足であると分かってはいたけれど。
それでも私はそう思うことでしか、胸の痛みを堪える事はできなかった。
〜fin〜
ラスティの葬儀の後、アスランから渡された分厚い封筒は、見た目以上にがっしりとしていて重かった。
おそるおそる開けて中を見れば、そこに入っていたのは写真。
「あの時の……」
それはあの日、二人で出かけた撮影旅行の時の写真だった。
「ラスティの机の引き出しの中にあったんだ。君に渡しておいた方が良いと思って」
沈痛な面もちで言うアスランに、私は何も言葉を返せない。というよりも、何を言って良いのかが分からなかった。
ただ、ぼんやりとした意識の中、手だけが写真をめくっていく。一枚、また一枚と。
笑顔。
拗ねた顔。
すました顔。
怒った顔。
そしてーー。
「ラスティには、君がこんな風に見えていたんだな」
横から見ていたアスランが言う。私の手を止めた写真には、自分でも驚くほどに優しく微笑む私がいた。
「ラスティは、君が好きだったんだ。心の底から」
「え……?」
アスランの言葉の意味が分からず、間の抜けた声を出してしまう。
ラスティが私を好き? そんな事、一度も言われたことがない。
「カメラはその写し手の心を形にする。好きじゃなきゃ、こんな写真は撮れないよ」
「そんな事ーー」
「無い」と言おうとして、思いとどまる。私には、ラスティを否定する言葉を口にすることは出来なかった。
「あいつは君を想っていたんだな」
ぱたっ……。
不意に小さな音がした。
ぱたっ……ぱたたっ……と続けて音がする。
一体何なのかと目を凝らすと、手にしている写真に落ちた水音だった。
「あ……」
慌てて拭い取ろうとして気付く。写真に落ちる水の湧き出ている場所に。
「私……」
その時やっと私は、自分が泣いていることを知った。次から次へと溢れ出てくる涙は、止まることを知らない。
「サラ……」
アスランが私を呼ぶ。とても優しく、そして悲しい声で。
それは同情? それともーー?
私の涙につられたのか、今にも泣き出しそうな顔をして私を見ているアスランに、私は小さく首を横に振って答えた。
「今更」
彼の気持ちが分かったところで、何も変わらない。彼は、私の中で時を止めたまま生き続けるだけ。私は、空っぽになってしまった心を抱きながら生き続けるだけ。
今更自分の心に気付いたところで、どうなると言うのだろう。もう少し早く気付いていれば、幸せな未来を掴めていた? そんな事、今となってはもう夢物語で、現実のモノとはなりえない。
「サラ」
アスランがもう一度私を呼んだ。
「大丈夫。私は大丈夫だから。絶対生き抜いてみせるわ。ラスティの分まで。ラスティの存在を忘れないために」
たった今気付いたばかりの想いを生み出してくれた彼のために。自分でも気付かなかった自分を見つけてくれた彼のために。
それは単なる自己満足であると分かってはいたけれど。
それでも私はそう思うことでしか、胸の痛みを堪える事はできなかった。
〜fin〜
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