桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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「あの時、何があったのか聞いても良いか?」
唇を解放され、やっと呼吸の整ったサラにアスランは尋ねた。
「あの時……?」
肩にもたれかかってたサラの体が、ビクリと揺れる。幸せに浸っていたが、一瞬で現実に引き戻された事による動揺で。だが、サラは決してそれをごまかそうとはしなかった。
もたれていた体を起こし、アスランと体を正面にする。
「聞きたい?」
「ああ」
何の躊躇もなく返ってきた答えに、サラが苦笑する。けれどもそれは、サラの心を軽くした。
「あのね」
目の前のアスランの手をぎゅっと握る。
「あの時ーー」
ピリピリピリピリッ
30秒前だという警告音が、けたたましく基地の内部に響き渡る。瞬間を悟られたくはないからと、すぐにサラはアスランに別れを告げて回線を切った。
刻一刻と迫ってくる死の足音も、想いを告げたサラにとっては恐い物ではない。
「あーあ、結構あっけない死に方だなぁ」
あっけらかんとした物言いは、死を間際にした者とは思えなかった。
「こんなやり方しか思いつかなかったけど、精一杯のお詫びって事で……ね」
誰に対しての詫びかなんて、もう分からない。だが、とにかく数多の人たちの命を奪った父と、それを手伝ってしまった自分にできるのはこれしかないと思っていた。
ビーーーッビーーーッ
20秒前が告げられる。ふと見ると、先ほど気絶させたはずのケイジが、呻きながら体を起こそうとしていた。
「サラ……」
痛むのか、腹を押さえながら立ち上がる父に、サラは冷たい視線を向ける。
「もうすぐ終わるわ。私たちが死んだところで、奪った命が戻るわけじゃないけれど……」
「……っ!」
ケイジがギリリと歯を食いしばる。
その表情に、サラは不思議な印象を受けた。こんな状況に追い込まれたことを悔しがっているのかと思いきや、どうもそうではないらしくて。
初めて見る悲しみを含んだ瞳の意味が分からない。
更にケイジの口から発せられた言葉が、サラを動揺させた。
「逃げろ、サラ」
「は?」
咄嗟のことで理解できず、何度も言葉を頭の中で反芻してしまう。その意味に気付いたときにはもう、ケイジは行動に出ていた。
「サラ!」
懐に隠していた銃を取り出し、サラに向けて発砲する。反射的に飛んで避けたサラだったが、着地点に何も無い事に気付いたときには遅かった。
「逃げろ!」
突如開いた床の下は、とても深い。
咄嗟にサラは床の端を掴んだが、すぐさまケイジがその手を外そうとする。
「この下には脱出ポットがある。お前は逃げろ」
「ちょ……っ、何よそれ!」
「すまない、サラ」
「何なの急に!? 分からないよ、そんなの……」
「最後ぐらい、父親らしい事をさせてくれ……別に改心したわけじゃない。あっちでシルフィアにあったときに、少しでも許して貰えるように……」
「な……何を今……更……」
必死になってサラの手を外そうとするケイジの目には、光る物があった。まさかと思い目を瞬かせたが、それは間違いなく涙で。
「私はナチュラルとしては優秀だった。だがお前達の前では本当に非力で……悔しかったんだ。どんなに必死になっても足元にも及ばない実力の差が……辛かったんだ……すまない、サラ……」
「そ……んな……今になってそんな事……言われても……」
「サラ……」
「わたしは……っ」
「愛してるよ……私のたった一人の娘……」
ズッ
体を支える手が外れ、体が空に放り出される。
「あ……っ!」
慌てて体を支えようとしたが、軸になる物は何もなく、あっという間に体は引力に引っ張られた。
「お……」
みるみる遠のいていくケイジの姿が、サラの目に焼き付く。
「お父さぁ~~~んっ!!」
叫んだ瞬間。
遠くに小さく見えていた父の姿に白い煙が覆い被さり、サラの視界から消し去った。
勢いよくサラの体がポットに落ちると、ほんの少しだけ煙を巻き込みながら緊急シャッターが閉まる。と同時に聞こえてきた大きな爆発音は、サラの心と体に大きな衝撃を与えた。
「いやぁぁぁ~~~~っ!!」
激しく揺れながら、ポットが射出される。
落ちたときの衝撃であばら骨が数本折れていたのだが、そんな物は心の痛みに比べれば軽い物。
「お……父さん……お父さぁんっ!!」
小さな窓から見えるのは、目もくらむほどの光と、もうもうと立ち上る煙。
それすらもやがては遠のいていきーー。
崩壊していく大地の終わりを見届けることなく、サラはいつしか意識を失っていた。
その後の記憶は定かではない。
気がついたらそこは真っ白な部屋で。手術を終えてベッドの中にいたサラの体は、命に別状はない物のぼろぼろだった。
よほどショックが大きかったのか、一時的に記憶を無くしていたこともあり、それからはずっと入院生活を送っていたのだがーー。
2ヶ月ほど前にやっと記憶を完全に取り戻し、リハビリを始めたのだという。
「今では笑っちゃうお話なんだけどね。私ってば記憶が無かった頃は、凄くお嬢様だったみたい。お淑やかで優しくて、ふわふわしてて。どんな時でもしずしず歩いて、木になんかとてもじゃないけど登らないか弱い女の子」
「本当に?」
「記憶が戻ってからは、性格が正反対になったって言われまくっちゃった。そりゃぁねぇ。前日まではお箸より重い物を持たなかったような子が、いきなり次の日はダンベルを持ち上げてるんだもん。皆びっくりするわ」
「……それは俺もびっくりするよ……」
神妙に聞いていたはずなのに。
苦しそうな顔をして聞いているアスランに気を遣ったのか、話の締めはとても明るい物だった。
唇を解放され、やっと呼吸の整ったサラにアスランは尋ねた。
「あの時……?」
肩にもたれかかってたサラの体が、ビクリと揺れる。幸せに浸っていたが、一瞬で現実に引き戻された事による動揺で。だが、サラは決してそれをごまかそうとはしなかった。
もたれていた体を起こし、アスランと体を正面にする。
「聞きたい?」
「ああ」
何の躊躇もなく返ってきた答えに、サラが苦笑する。けれどもそれは、サラの心を軽くした。
「あのね」
目の前のアスランの手をぎゅっと握る。
「あの時ーー」
ピリピリピリピリッ
30秒前だという警告音が、けたたましく基地の内部に響き渡る。瞬間を悟られたくはないからと、すぐにサラはアスランに別れを告げて回線を切った。
刻一刻と迫ってくる死の足音も、想いを告げたサラにとっては恐い物ではない。
「あーあ、結構あっけない死に方だなぁ」
あっけらかんとした物言いは、死を間際にした者とは思えなかった。
「こんなやり方しか思いつかなかったけど、精一杯のお詫びって事で……ね」
誰に対しての詫びかなんて、もう分からない。だが、とにかく数多の人たちの命を奪った父と、それを手伝ってしまった自分にできるのはこれしかないと思っていた。
ビーーーッビーーーッ
20秒前が告げられる。ふと見ると、先ほど気絶させたはずのケイジが、呻きながら体を起こそうとしていた。
「サラ……」
痛むのか、腹を押さえながら立ち上がる父に、サラは冷たい視線を向ける。
「もうすぐ終わるわ。私たちが死んだところで、奪った命が戻るわけじゃないけれど……」
「……っ!」
ケイジがギリリと歯を食いしばる。
その表情に、サラは不思議な印象を受けた。こんな状況に追い込まれたことを悔しがっているのかと思いきや、どうもそうではないらしくて。
初めて見る悲しみを含んだ瞳の意味が分からない。
更にケイジの口から発せられた言葉が、サラを動揺させた。
「逃げろ、サラ」
「は?」
咄嗟のことで理解できず、何度も言葉を頭の中で反芻してしまう。その意味に気付いたときにはもう、ケイジは行動に出ていた。
「サラ!」
懐に隠していた銃を取り出し、サラに向けて発砲する。反射的に飛んで避けたサラだったが、着地点に何も無い事に気付いたときには遅かった。
「逃げろ!」
突如開いた床の下は、とても深い。
咄嗟にサラは床の端を掴んだが、すぐさまケイジがその手を外そうとする。
「この下には脱出ポットがある。お前は逃げろ」
「ちょ……っ、何よそれ!」
「すまない、サラ」
「何なの急に!? 分からないよ、そんなの……」
「最後ぐらい、父親らしい事をさせてくれ……別に改心したわけじゃない。あっちでシルフィアにあったときに、少しでも許して貰えるように……」
「な……何を今……更……」
必死になってサラの手を外そうとするケイジの目には、光る物があった。まさかと思い目を瞬かせたが、それは間違いなく涙で。
「私はナチュラルとしては優秀だった。だがお前達の前では本当に非力で……悔しかったんだ。どんなに必死になっても足元にも及ばない実力の差が……辛かったんだ……すまない、サラ……」
「そ……んな……今になってそんな事……言われても……」
「サラ……」
「わたしは……っ」
「愛してるよ……私のたった一人の娘……」
ズッ
体を支える手が外れ、体が空に放り出される。
「あ……っ!」
慌てて体を支えようとしたが、軸になる物は何もなく、あっという間に体は引力に引っ張られた。
「お……」
みるみる遠のいていくケイジの姿が、サラの目に焼き付く。
「お父さぁ~~~んっ!!」
叫んだ瞬間。
遠くに小さく見えていた父の姿に白い煙が覆い被さり、サラの視界から消し去った。
勢いよくサラの体がポットに落ちると、ほんの少しだけ煙を巻き込みながら緊急シャッターが閉まる。と同時に聞こえてきた大きな爆発音は、サラの心と体に大きな衝撃を与えた。
「いやぁぁぁ~~~~っ!!」
激しく揺れながら、ポットが射出される。
落ちたときの衝撃であばら骨が数本折れていたのだが、そんな物は心の痛みに比べれば軽い物。
「お……父さん……お父さぁんっ!!」
小さな窓から見えるのは、目もくらむほどの光と、もうもうと立ち上る煙。
それすらもやがては遠のいていきーー。
崩壊していく大地の終わりを見届けることなく、サラはいつしか意識を失っていた。
その後の記憶は定かではない。
気がついたらそこは真っ白な部屋で。手術を終えてベッドの中にいたサラの体は、命に別状はない物のぼろぼろだった。
よほどショックが大きかったのか、一時的に記憶を無くしていたこともあり、それからはずっと入院生活を送っていたのだがーー。
2ヶ月ほど前にやっと記憶を完全に取り戻し、リハビリを始めたのだという。
「今では笑っちゃうお話なんだけどね。私ってば記憶が無かった頃は、凄くお嬢様だったみたい。お淑やかで優しくて、ふわふわしてて。どんな時でもしずしず歩いて、木になんかとてもじゃないけど登らないか弱い女の子」
「本当に?」
「記憶が戻ってからは、性格が正反対になったって言われまくっちゃった。そりゃぁねぇ。前日まではお箸より重い物を持たなかったような子が、いきなり次の日はダンベルを持ち上げてるんだもん。皆びっくりするわ」
「……それは俺もびっくりするよ……」
神妙に聞いていたはずなのに。
苦しそうな顔をして聞いているアスランに気を遣ったのか、話の締めはとても明るい物だった。
