桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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『サラ! 良かった、無事だったんだな。MSは1機を除いて奪取したからこれから帰艦する。一緒に戻ろう。今どこにいるんだ?』
「1機を除いて? 何故!?」
『ラスティがやられたんだ。向こうには連合の士官が乗ってる』
「ラスティが……」
唇を噛み締めながら呟く。人一倍気を遣いながらも、自分らしさを決して無くさない彼とも、戦争が終わったら今度は普通の友達として仲良くしたかった。
「ごめん……」
無意識に言った言葉が、アスランに届けられた。
『サラ? 何で謝るんだ? サラは俺達のためにやれる事の全てをやってくれたじゃないか。そんな事より、とにかくすぐに迎えに行くから!』
「違う。違うの」
声が震える。
ラスティが死んでしまったのは、自分のせいだとしか思えなかった。生きることに『もしも』など存在はしない。自分たちが過ごしてきた時間がそのまま現実なのだから。
それでも考えてしまう。
『もしも』最初から父の事が分かっていれば、ラスティは死ななくて済んだのだろうか。
もっと戦争の規模は小さかったのだろうか。
血のバレンタインの悲劇は起こらなかったのだろうか。
アスランに『好き』を伝えられていたのだろうか――。
「知らなかったとはいえ、私はレノアおばさまや数多のコーディネイターたちを殺した人の手助けをしていた。それだけじゃない。私はこの手で何人ものナチュラルをも殺めてきた。自分の計画のために犠牲者を増やして……」
『サラ?』
「血のバレンタインで母さんが死んでしまったとき、凄く悲しかった。憎かったよ、ナチュラルが。でも許す事が出来ない代わりに、憎みきることもできなかった。だってお父さんがナチュラルなんだもの。幼い頃からずっと命を狙われていたけれど、私の中にもナチュラルの血が流れているから」
涙がこぼれる。お互いの姿が見えないことは、サラにとっては幸運だった。
「私は、コーディネイターとナチュラルの戦いを止めたかった。同じ人間なんだもの。父さんと母さんが結婚したように、いつかはきっと仲良くなれる日が来るはずだって、そう思ってた。でも……」
『でも?』
「でもそれは間違いだったのかも知れない。ごめんねアスラン。私、思い出に縋り付きすぎてた。多分甘えてたんだと思う……ううん、甘え過ぎてたんだ」
『サラ? 何を言ってるんだ? サラ?』
スピーカー越しに聞こえてくるサラの言葉の意味を掴みきれず、アスランが問う。
ザフトで出会ってから今日までずっと、自分を避けるかのように冷たい言葉しか聞くことが出来なかったのに。今聞こえてくるのは、とても親しみのこもった声。だがそれ以上に感じられる悲しみと儚さが、アスランを焦らせた。
「ごめんね。本当にごめんなさい」
もたれかかっていたスピーカーから体を離し、サラは再びキーボードを叩き始める。一瞬黒くなったモニターが再び表示したのは、この空間が吹き飛ぶまでのカウントダウンをする数字だった。
「行って、アスラン!」
『サラ!? サラも一緒に行こう! 一緒に戻るんだ!』
「だめなの。私は責任を取らなきゃいけない」
『何の責任だ!?サラ話は後で聞くから、とにかく戻ろう!』
「良いから行って! クルーゼ隊長が待ってるわよ!」
『サラ!!』
どうしても聞き入れないアスランに、聖は無理矢理回線を切る。だがすぐに思い直すと、サラはもう一度回線を繋ぎ直した。
「アスラン」
『サラ! 良かった。回線が切れたから……」
「ずっと好きだった」
『え?』
唐突だった。聞こえて来た言葉が、一瞬アスランの思考を止める。
「初めて会ったときから……8年前に会った時からずっと、好きだったの。戦争が終わるまではこの気持ちを封じておこうと思ってたんだけど、もう言えないから」
『サラ!?』
「大好きだよ、アスラン」
『サラ! 俺も……俺も好きだから! サラの事がずっと好きだったから! だから最後なんて言わないでくれ!』
「ふふ、両思いだね、私たち」
『あぁ。だから――』
ピッ
モニターが30秒前だと告げている。いよいよ時が来るのだと、警告音が鳴った。
「もしもいつかまたアスランに出会うことが許されるなら……」
ピッピッと確実に刻まれる終焉の時。目の前に死が迫っているというのに、何故かサラの表情は穏やかだった。
「今度はサラ・グレンでもなく、サラ・フユツキでもない。一人のサラという女の子として貴方と……。大好き。アスラン」
『サラっ!!!』
再び切られた回線が、繋がることはない。
『サラ――っ!』
MSの中で虚しく響くアスランの声は、もうサラには届かなかった。
やがて一筋の大きな光が、空へとまっすぐに伸びる――――――。
「1機を除いて? 何故!?」
『ラスティがやられたんだ。向こうには連合の士官が乗ってる』
「ラスティが……」
唇を噛み締めながら呟く。人一倍気を遣いながらも、自分らしさを決して無くさない彼とも、戦争が終わったら今度は普通の友達として仲良くしたかった。
「ごめん……」
無意識に言った言葉が、アスランに届けられた。
『サラ? 何で謝るんだ? サラは俺達のためにやれる事の全てをやってくれたじゃないか。そんな事より、とにかくすぐに迎えに行くから!』
「違う。違うの」
声が震える。
ラスティが死んでしまったのは、自分のせいだとしか思えなかった。生きることに『もしも』など存在はしない。自分たちが過ごしてきた時間がそのまま現実なのだから。
それでも考えてしまう。
『もしも』最初から父の事が分かっていれば、ラスティは死ななくて済んだのだろうか。
もっと戦争の規模は小さかったのだろうか。
血のバレンタインの悲劇は起こらなかったのだろうか。
アスランに『好き』を伝えられていたのだろうか――。
「知らなかったとはいえ、私はレノアおばさまや数多のコーディネイターたちを殺した人の手助けをしていた。それだけじゃない。私はこの手で何人ものナチュラルをも殺めてきた。自分の計画のために犠牲者を増やして……」
『サラ?』
「血のバレンタインで母さんが死んでしまったとき、凄く悲しかった。憎かったよ、ナチュラルが。でも許す事が出来ない代わりに、憎みきることもできなかった。だってお父さんがナチュラルなんだもの。幼い頃からずっと命を狙われていたけれど、私の中にもナチュラルの血が流れているから」
涙がこぼれる。お互いの姿が見えないことは、サラにとっては幸運だった。
「私は、コーディネイターとナチュラルの戦いを止めたかった。同じ人間なんだもの。父さんと母さんが結婚したように、いつかはきっと仲良くなれる日が来るはずだって、そう思ってた。でも……」
『でも?』
「でもそれは間違いだったのかも知れない。ごめんねアスラン。私、思い出に縋り付きすぎてた。多分甘えてたんだと思う……ううん、甘え過ぎてたんだ」
『サラ? 何を言ってるんだ? サラ?』
スピーカー越しに聞こえてくるサラの言葉の意味を掴みきれず、アスランが問う。
ザフトで出会ってから今日までずっと、自分を避けるかのように冷たい言葉しか聞くことが出来なかったのに。今聞こえてくるのは、とても親しみのこもった声。だがそれ以上に感じられる悲しみと儚さが、アスランを焦らせた。
「ごめんね。本当にごめんなさい」
もたれかかっていたスピーカーから体を離し、サラは再びキーボードを叩き始める。一瞬黒くなったモニターが再び表示したのは、この空間が吹き飛ぶまでのカウントダウンをする数字だった。
「行って、アスラン!」
『サラ!? サラも一緒に行こう! 一緒に戻るんだ!』
「だめなの。私は責任を取らなきゃいけない」
『何の責任だ!?サラ話は後で聞くから、とにかく戻ろう!』
「良いから行って! クルーゼ隊長が待ってるわよ!」
『サラ!!』
どうしても聞き入れないアスランに、聖は無理矢理回線を切る。だがすぐに思い直すと、サラはもう一度回線を繋ぎ直した。
「アスラン」
『サラ! 良かった。回線が切れたから……」
「ずっと好きだった」
『え?』
唐突だった。聞こえて来た言葉が、一瞬アスランの思考を止める。
「初めて会ったときから……8年前に会った時からずっと、好きだったの。戦争が終わるまではこの気持ちを封じておこうと思ってたんだけど、もう言えないから」
『サラ!?』
「大好きだよ、アスラン」
『サラ! 俺も……俺も好きだから! サラの事がずっと好きだったから! だから最後なんて言わないでくれ!』
「ふふ、両思いだね、私たち」
『あぁ。だから――』
ピッ
モニターが30秒前だと告げている。いよいよ時が来るのだと、警告音が鳴った。
「もしもいつかまたアスランに出会うことが許されるなら……」
ピッピッと確実に刻まれる終焉の時。目の前に死が迫っているというのに、何故かサラの表情は穏やかだった。
「今度はサラ・グレンでもなく、サラ・フユツキでもない。一人のサラという女の子として貴方と……。大好き。アスラン」
『サラっ!!!』
再び切られた回線が、繋がることはない。
『サラ――っ!』
MSの中で虚しく響くアスランの声は、もうサラには届かなかった。
やがて一筋の大きな光が、空へとまっすぐに伸びる――――――。