桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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研究室を後にし、仮住居としている部屋へと戻る。
部屋に入って真っ先に目に入ったのは、留守録にメッセージがあることを示す赤いランプ。ザフトの回線を使えば探知される確率が高いため、敢えて一般回線を使っている。
連合軍の中ではクルーゼや父との連絡を取るわけにはいかず、いつも所持している腕時計の使用も許されていないサラにとって、この電話が現在唯一の連絡手段だった。
もちろんここの番号を知っているのは、父とクルーゼだけ。電話の前を通り過ぎながら再生ボタンを押すと、そのまま冷蔵庫へと向う。中からペットボトルを出し、口に含みながらメッセージに耳を傾けた。
ピーッ
『私だ。報告が無いと言うことは問題が無いと言うことだと判断し、明日は予定通り決行する。ところで、だ。君の父上が血のバレンタインに深く関わっているという情報を入手したのだが……君から聞いていた話と食い違いが出ているので聞いておきたい。連絡を待つ』
ピーッ
「……え?」
ボトリ、と鈍い音を立ててペットボトルが床に落ちた。中の液体をぶちまけながら、ごろごろと部屋の隅へと転がっていく。
「何?」
大きくなる水たまりに視線が向けられることはない。驚きで目を見開いた聖が見ているのは、たった今メッセージを再生し終えた電話の姿。
「血のバレンタイン? どういうこと?」
ゆっくりと電話に近づき、震える手でボタンを押す。取り付けておいた盗聴防止装置をオンにするのを忘れかけるほどに、サラは動揺していた。
「隊長……」
『サラか。留守録は聞いたんだな』
何の挨拶もなく、すぐに本題に入る。いつもの少し人を小馬鹿にしたような雰囲気を、全く感じられないクルーゼが恐かった。万が一を考えて、テレビ電話のモニターをオフにしていたことは幸いだったかもしれない。
「はい、聞きました。あれは一体……」
『地球側で諜報活動に当たっていた兵士からの情報だ。ユニウスセブンを破壊せよと発言し、核を発射させたのは、君のお父上であるケイジ・フユツキだということでね』
「そんな……! 父は被害者なんですよ!?」
淡々と告げられた言葉は聖の言葉をかき乱し、思わず声をあげさせた。
「だって父は現盟主のアズラエルと血のつながりがあるというのに、ブルーコスモスのやり方に反対して追われてたんですよ!? コーディネイターの母と結婚したために更に立場が悪くなって、何度も殺されそうになって……」
『もしそれが全て計画の一部だったとしたらどうかな?』
「計画?」
『今現在、君のお父上は何をしている?』
「父は――」
頭を強く殴られたような衝撃だった。
父が血のバレンタインを引き起こした張本人。そんな事などあるはずがないと必死に否定する心とは裏腹に、今まで考えようとしなかった過去の出来事が頭に浮かぶ。
「父は……ブルーコスモスの情報を掴むために、地球に行ってて……」
『一体何のために?』
「もう二度とあんな……血のバレンタインのような悲劇を起こさないため。連合やブルーコスモスが核を使うのを止めようと……」
『どうやって?』
「ブルーコスモスの一員として……」
今自分が行っている、潜入先の集団に入り込んでの諜報活動。それと同じ事をサラの父は、地球で行っているはずだった。
だがずっと本当は気になっていたのだ。
ケイジ・フユツキはムルタ・アズラエルの叔父。
そして裏切り者。
いくら組織が大きくとも、末端の人間にまでその顔は知れ渡っているはずだった。
それなのにケイジは掴まることなく潜入し、アズラエルの行動を把握している。それはつまり――。
『逆スパイ』
それでも信じたかったのだ。狙われるたびに母の後ろに隠れてしまう、情けない所は大嫌いだったけれど、母が愛した人だから。戦う術を持たないからと、知識の面では精一杯の愛情を注いでくれた父を。
大嫌いで大好きなあの人を。
だが――。
クルーゼの言葉が、必死にサラが縋り付こうとする父への思いを打ち砕く。
『君のお母上が、君の保護を理由に地球軍に命じられてユニウスセブンに調査に行ったのも、君の父上のシナリオだ』
もう、驚くことすら出来ない。立っていられるのが不思議なほどに、聖の頭の中は真っ白になっていた。
「なんで……そんなの嘘……嘘よ……私の保護? そんなの聞いてない……だって母さんはレノアおばさまに会いに行くんだと嬉しそうに出かけて……」
放心状態で呟くサラ。だがそんな彼女に向けられた言葉は、同情心の欠片も感じられないもの。
『気をしっかり持ちたまえ。……と言ってもさすがに無理な話か。だが明日は大事な任務が待っている。君が動揺すれば、多くの兵達の命が失われることになるぞ。アスラン達の命運は、君にかかっていることを忘れるな』
では検討を祈る、と一言残し、サラの返事を待たずして回線は切られた。話を聞きたいと言っていたはずが、一方的に告げられるだけで終わってしまった電話は、サラの心を抉る。
「MSを奪って、連合側が持っている核の廃棄を促す。それを目的として動いてきたけど……」
ゆっくりと受話器を置きながら呟くサラの瞳は揺れていた。
「分からない……分からないよ……っ」
軍人である以上、迷いがあってはいけない。
ましてや自分には部下がいる。上に立つ者に迷いがあれば、下の者の命の保証は無い。クルーゼの最後の言葉の意味は重々分かっていた。
アスランの名前を聞いて、心も動いた。でも――。
「本当に父さんがユニウスセブンを破壊したの?」
大きすぎるショックが、愛しい者への想いすら覆い隠す。
「母さんを……レノアおばさまを……コーディネイターの人たちを殺したの……?」
震えている拳は、血がにじむほどに強い力で握られていて。
「私は……っ!!」
ぱたりとサラの眦から落ちた水滴は、電話のラインをなぞるように流れ、床に小さな染みを作った。
部屋に入って真っ先に目に入ったのは、留守録にメッセージがあることを示す赤いランプ。ザフトの回線を使えば探知される確率が高いため、敢えて一般回線を使っている。
連合軍の中ではクルーゼや父との連絡を取るわけにはいかず、いつも所持している腕時計の使用も許されていないサラにとって、この電話が現在唯一の連絡手段だった。
もちろんここの番号を知っているのは、父とクルーゼだけ。電話の前を通り過ぎながら再生ボタンを押すと、そのまま冷蔵庫へと向う。中からペットボトルを出し、口に含みながらメッセージに耳を傾けた。
ピーッ
『私だ。報告が無いと言うことは問題が無いと言うことだと判断し、明日は予定通り決行する。ところで、だ。君の父上が血のバレンタインに深く関わっているという情報を入手したのだが……君から聞いていた話と食い違いが出ているので聞いておきたい。連絡を待つ』
ピーッ
「……え?」
ボトリ、と鈍い音を立ててペットボトルが床に落ちた。中の液体をぶちまけながら、ごろごろと部屋の隅へと転がっていく。
「何?」
大きくなる水たまりに視線が向けられることはない。驚きで目を見開いた聖が見ているのは、たった今メッセージを再生し終えた電話の姿。
「血のバレンタイン? どういうこと?」
ゆっくりと電話に近づき、震える手でボタンを押す。取り付けておいた盗聴防止装置をオンにするのを忘れかけるほどに、サラは動揺していた。
「隊長……」
『サラか。留守録は聞いたんだな』
何の挨拶もなく、すぐに本題に入る。いつもの少し人を小馬鹿にしたような雰囲気を、全く感じられないクルーゼが恐かった。万が一を考えて、テレビ電話のモニターをオフにしていたことは幸いだったかもしれない。
「はい、聞きました。あれは一体……」
『地球側で諜報活動に当たっていた兵士からの情報だ。ユニウスセブンを破壊せよと発言し、核を発射させたのは、君のお父上であるケイジ・フユツキだということでね』
「そんな……! 父は被害者なんですよ!?」
淡々と告げられた言葉は聖の言葉をかき乱し、思わず声をあげさせた。
「だって父は現盟主のアズラエルと血のつながりがあるというのに、ブルーコスモスのやり方に反対して追われてたんですよ!? コーディネイターの母と結婚したために更に立場が悪くなって、何度も殺されそうになって……」
『もしそれが全て計画の一部だったとしたらどうかな?』
「計画?」
『今現在、君のお父上は何をしている?』
「父は――」
頭を強く殴られたような衝撃だった。
父が血のバレンタインを引き起こした張本人。そんな事などあるはずがないと必死に否定する心とは裏腹に、今まで考えようとしなかった過去の出来事が頭に浮かぶ。
「父は……ブルーコスモスの情報を掴むために、地球に行ってて……」
『一体何のために?』
「もう二度とあんな……血のバレンタインのような悲劇を起こさないため。連合やブルーコスモスが核を使うのを止めようと……」
『どうやって?』
「ブルーコスモスの一員として……」
今自分が行っている、潜入先の集団に入り込んでの諜報活動。それと同じ事をサラの父は、地球で行っているはずだった。
だがずっと本当は気になっていたのだ。
ケイジ・フユツキはムルタ・アズラエルの叔父。
そして裏切り者。
いくら組織が大きくとも、末端の人間にまでその顔は知れ渡っているはずだった。
それなのにケイジは掴まることなく潜入し、アズラエルの行動を把握している。それはつまり――。
『逆スパイ』
それでも信じたかったのだ。狙われるたびに母の後ろに隠れてしまう、情けない所は大嫌いだったけれど、母が愛した人だから。戦う術を持たないからと、知識の面では精一杯の愛情を注いでくれた父を。
大嫌いで大好きなあの人を。
だが――。
クルーゼの言葉が、必死にサラが縋り付こうとする父への思いを打ち砕く。
『君のお母上が、君の保護を理由に地球軍に命じられてユニウスセブンに調査に行ったのも、君の父上のシナリオだ』
もう、驚くことすら出来ない。立っていられるのが不思議なほどに、聖の頭の中は真っ白になっていた。
「なんで……そんなの嘘……嘘よ……私の保護? そんなの聞いてない……だって母さんはレノアおばさまに会いに行くんだと嬉しそうに出かけて……」
放心状態で呟くサラ。だがそんな彼女に向けられた言葉は、同情心の欠片も感じられないもの。
『気をしっかり持ちたまえ。……と言ってもさすがに無理な話か。だが明日は大事な任務が待っている。君が動揺すれば、多くの兵達の命が失われることになるぞ。アスラン達の命運は、君にかかっていることを忘れるな』
では検討を祈る、と一言残し、サラの返事を待たずして回線は切られた。話を聞きたいと言っていたはずが、一方的に告げられるだけで終わってしまった電話は、サラの心を抉る。
「MSを奪って、連合側が持っている核の廃棄を促す。それを目的として動いてきたけど……」
ゆっくりと受話器を置きながら呟くサラの瞳は揺れていた。
「分からない……分からないよ……っ」
軍人である以上、迷いがあってはいけない。
ましてや自分には部下がいる。上に立つ者に迷いがあれば、下の者の命の保証は無い。クルーゼの最後の言葉の意味は重々分かっていた。
アスランの名前を聞いて、心も動いた。でも――。
「本当に父さんがユニウスセブンを破壊したの?」
大きすぎるショックが、愛しい者への想いすら覆い隠す。
「母さんを……レノアおばさまを……コーディネイターの人たちを殺したの……?」
震えている拳は、血がにじむほどに強い力で握られていて。
「私は……っ!!」
ぱたりとサラの眦から落ちた水滴は、電話のラインをなぞるように流れ、床に小さな染みを作った。
