桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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「さて、クルーゼ隊の諸君。出撃命令が下った」
運命の日の前夜、アスラン達はクルーゼの部屋に呼ばれた。いつものように命令をくだすクルーゼは、やけに嬉しそうな声でそう言うと、モニターの電源をオンにする。
「とうとうこの日が来たのだよ。連合軍がひた隠しにしてきた新型起動兵器の居場所が分かった。我々はそのMSを奪取するという栄えある任務を与えられたのだ」
画面に映っているのは装甲の一部。ノイズは激しいものの、人型をしているそれは明らかにMSだと言うことが見て取れた。それはつまり、ザフトにすら未だ存在しない機体があると言うことを如実に表している。
以前サラが入隊試験の一環として奪取した情報は、MSのプログラムと聖自身が目で見た情報。画像の類は一切存在していなかった。だからこそ今回手に入れたこの画像は、今まで以上にコーディネイター達に生々しい危機感を与える。
「ヘリオポリスには、5機のMSが存在するという情報がある。これらを明日、我々が奪取するのだ。心してかかれ」
「はっ!」
その場にいた全員が敬礼する。
もちろんアスランも例外ではない。切れの良い敬礼で、クルーゼの言葉に答えた。
「隊長。少々伺っても宜しいでしょうか?」
敬礼したまま突如そう言ったのは、ニコル。手を下ろし、一体どうしたのかと皆の視線が集まる。
「何だね? 作戦の詳細はこれから伝えるつもりなのだが」
「作戦はもちろんですが、サラさんは……グレン副隊長はこの作戦には参加なさらないのでしょうか」
この言葉に、はっと息を飲んだのは多分、クルーゼとニコル以外の全ての者だろう。皆口にはしなかったが、心の中で引っかかっていたことだから。
「ふむ……関わっていると言えばいるな。関わっていないと言えなくもないが……」
「それは一体どういうことでしょうか」
今度はイザークが言う。何とも理解し難いクルーゼの言葉に引っかかったからだ。少し身を乗り出すようにして同意するディアッカの表情も、真剣そのものだった。
「彼女は既にヘリオポリスに潜入している。今頃は我々がMS奪取をスムーズに行えるよう、連合軍に潜り込んで手はずを整えているはずだ」
「サラ一人でですか!?」
ざわりと部屋が揺らいだ。
驚いて思わず声をあげたのはミゲル。普通敵地に潜入する際は、現場での行動こそ単独ではあっても、何らかのチームを組んで動くのが主流だ。だがサラは団体行動を好まず、彼女に命令が下ると、必ずと言っていいほど一人で任務を遂行している。今まではそれでも何とかなる任務がほとんどだったが、今回の任務はどう考えても一人では辛い。
「手引きをする者もおらずに連合軍に潜り込むなんて、自殺行為じゃないですか!」
「ほう、彼女がそんなに心配かね?」
仮面から出ている、唯一表情を語る口の端が少し上がる。今まで黙っていたアスランの突然の叫びに、クルーゼが笑ったのだ。
「そ、それは……やはり上官ですから!」
「ふむ、そうか。」
本当の所は分かったものではないが、とりあえず納得したらしい。手を顎に当てて小さく頷いたクルーゼは言った。
「明朝0800時に出発する。ヘリオポリス潜入後、この地図にあるFポイントにて待機。艦に残った我々が上空に姿を現し、奴らの巣をつつけばMSは自ら姿を現すだろう。そこで君たちにMSを奪取してもらう。良いな?」
「はっ!」
再び力強い返事と敬礼。だがその表情は皆どこかしら浮かない。
「奪取の際は誰でもかまわん。サラ・グレンと接触し、彼女も連れて戻ってきたまえ」
少年達の表情から気持ちを察したのか、楽しそうにクルーゼは言った。
「作戦前に連絡は取れないのですか?」
すかさず問うミゲルに返ってきた答えは複雑だったが。
「少しでもリスクをなくすために、作戦終了まで軍の通信機器は一切使わない。あとは現地での事だ。臨機応変に動いてくれたまえ。なに、彼女のことだ。接触するのは容易いだろう」
今夜はゆっくりと休んでおきたまえ、と言い残し、クルーゼは用があるからと立ち去った。残された少年達はというと、釈然としない思いを抱きながら、視線を交わし合うことしかできない。
「サラさん……会えますよね。きっと」
「当たり前だ!」
ニコルの不安そうな言葉に、イザークが間髪入れずに答えた。
「彼女なら大丈夫さ。案外今頃は、俺達がちゃんと任務を遂行できるか、そっちの方にやきもきしてるかもしれないぜ?」
暗い影が射す中に、少しでも光を灯そうとラスティが明るく声をかける。思いの形は違えど、彼らにとってサラという存在は大きかった。この数ヶ月で、かけがえのない存在となっていたのだ。
「絶対に成功させよう。MSも、サラも。必ず一緒に戻ってこよう」
ぐっと拳を握りしめながら、小さくアスランが言った。それはまるで、自分に言い聞かせているようで。だがその言葉は、その場にいた少年達の心に染み込んでいく。
「俺達クルーゼ隊が失敗するはずないっしょ」
「ああ、そうだな」
ディアッカとミゲルが力強く言う。もしかしたらこれが初めてかもしれない、少年達の心が完全に一つになった瞬間だった。
運命の日の前夜、アスラン達はクルーゼの部屋に呼ばれた。いつものように命令をくだすクルーゼは、やけに嬉しそうな声でそう言うと、モニターの電源をオンにする。
「とうとうこの日が来たのだよ。連合軍がひた隠しにしてきた新型起動兵器の居場所が分かった。我々はそのMSを奪取するという栄えある任務を与えられたのだ」
画面に映っているのは装甲の一部。ノイズは激しいものの、人型をしているそれは明らかにMSだと言うことが見て取れた。それはつまり、ザフトにすら未だ存在しない機体があると言うことを如実に表している。
以前サラが入隊試験の一環として奪取した情報は、MSのプログラムと聖自身が目で見た情報。画像の類は一切存在していなかった。だからこそ今回手に入れたこの画像は、今まで以上にコーディネイター達に生々しい危機感を与える。
「ヘリオポリスには、5機のMSが存在するという情報がある。これらを明日、我々が奪取するのだ。心してかかれ」
「はっ!」
その場にいた全員が敬礼する。
もちろんアスランも例外ではない。切れの良い敬礼で、クルーゼの言葉に答えた。
「隊長。少々伺っても宜しいでしょうか?」
敬礼したまま突如そう言ったのは、ニコル。手を下ろし、一体どうしたのかと皆の視線が集まる。
「何だね? 作戦の詳細はこれから伝えるつもりなのだが」
「作戦はもちろんですが、サラさんは……グレン副隊長はこの作戦には参加なさらないのでしょうか」
この言葉に、はっと息を飲んだのは多分、クルーゼとニコル以外の全ての者だろう。皆口にはしなかったが、心の中で引っかかっていたことだから。
「ふむ……関わっていると言えばいるな。関わっていないと言えなくもないが……」
「それは一体どういうことでしょうか」
今度はイザークが言う。何とも理解し難いクルーゼの言葉に引っかかったからだ。少し身を乗り出すようにして同意するディアッカの表情も、真剣そのものだった。
「彼女は既にヘリオポリスに潜入している。今頃は我々がMS奪取をスムーズに行えるよう、連合軍に潜り込んで手はずを整えているはずだ」
「サラ一人でですか!?」
ざわりと部屋が揺らいだ。
驚いて思わず声をあげたのはミゲル。普通敵地に潜入する際は、現場での行動こそ単独ではあっても、何らかのチームを組んで動くのが主流だ。だがサラは団体行動を好まず、彼女に命令が下ると、必ずと言っていいほど一人で任務を遂行している。今まではそれでも何とかなる任務がほとんどだったが、今回の任務はどう考えても一人では辛い。
「手引きをする者もおらずに連合軍に潜り込むなんて、自殺行為じゃないですか!」
「ほう、彼女がそんなに心配かね?」
仮面から出ている、唯一表情を語る口の端が少し上がる。今まで黙っていたアスランの突然の叫びに、クルーゼが笑ったのだ。
「そ、それは……やはり上官ですから!」
「ふむ、そうか。」
本当の所は分かったものではないが、とりあえず納得したらしい。手を顎に当てて小さく頷いたクルーゼは言った。
「明朝0800時に出発する。ヘリオポリス潜入後、この地図にあるFポイントにて待機。艦に残った我々が上空に姿を現し、奴らの巣をつつけばMSは自ら姿を現すだろう。そこで君たちにMSを奪取してもらう。良いな?」
「はっ!」
再び力強い返事と敬礼。だがその表情は皆どこかしら浮かない。
「奪取の際は誰でもかまわん。サラ・グレンと接触し、彼女も連れて戻ってきたまえ」
少年達の表情から気持ちを察したのか、楽しそうにクルーゼは言った。
「作戦前に連絡は取れないのですか?」
すかさず問うミゲルに返ってきた答えは複雑だったが。
「少しでもリスクをなくすために、作戦終了まで軍の通信機器は一切使わない。あとは現地での事だ。臨機応変に動いてくれたまえ。なに、彼女のことだ。接触するのは容易いだろう」
今夜はゆっくりと休んでおきたまえ、と言い残し、クルーゼは用があるからと立ち去った。残された少年達はというと、釈然としない思いを抱きながら、視線を交わし合うことしかできない。
「サラさん……会えますよね。きっと」
「当たり前だ!」
ニコルの不安そうな言葉に、イザークが間髪入れずに答えた。
「彼女なら大丈夫さ。案外今頃は、俺達がちゃんと任務を遂行できるか、そっちの方にやきもきしてるかもしれないぜ?」
暗い影が射す中に、少しでも光を灯そうとラスティが明るく声をかける。思いの形は違えど、彼らにとってサラという存在は大きかった。この数ヶ月で、かけがえのない存在となっていたのだ。
「絶対に成功させよう。MSも、サラも。必ず一緒に戻ってこよう」
ぐっと拳を握りしめながら、小さくアスランが言った。それはまるで、自分に言い聞かせているようで。だがその言葉は、その場にいた少年達の心に染み込んでいく。
「俺達クルーゼ隊が失敗するはずないっしょ」
「ああ、そうだな」
ディアッカとミゲルが力強く言う。もしかしたらこれが初めてかもしれない、少年達の心が完全に一つになった瞬間だった。