桜ノ色ハ血ノ色(アスラン)【全38P完結】
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「お互い成長したな」
抱きしめている腕をゆるめることのないまま、アスランは言った。すっぽりとくるまれたサラは、身じろぎすら出来ない。
「母が言った言葉の通り、想いを忘れなくて良かった。こうして……またサラに会えて良かった……」
触れたところから伝わってくる温もりが、目の前に大切な人がいるという事を実感させる。
アスランは、サラを。
サラは、アスランを。
「綺麗になったね、サラ」
アスランがサラの髪に優しくキスを落とした。
腕の中でびくりと震えた小さな体の熱が上がる。でもその熱は、幸せだけの物ではない。
「だ……めなの……」
現実と真実。今のサラの中では、完全に相反するその文字が浮かんでは消えていた。
誰かを想ってはいけない現実と、狂おしいほどに求めている真実が交錯してサラの心をかき乱す。どんな言い訳も通用しない今、出来ることなら全てをアスランに晒してしまいたかった。
何もかも話してしまえば、こんな苦しみを味わうこともない。だがそれは決して許されないのだ。これは、自らが選んだ道なのだから。
そんなサラの気持ちを知ってか知らずか、アスランは腕の力を緩めると、そのままサラの肩を掴んだ。
「サラ……」
ゆっくりと近付く顔。
「よく初恋は実らないって言うけれど、俺には関係ないよ。こうして再びサラが目の前にいる。……もう離さない」
吐息が触れる。
至近距離で見ても分かるアスランの端正な顔が、あと数センチでサラと重なろうとしたその時。
「……っ!」
乱れていた意識をハッと取り戻したサラは、勢いよくアスランを突き飛ばした。
「サラ!?」
予想していなかった行動に虚をつかれ、危うくしりもちをつきそうになってしまったアスランだが、咄嗟に踏みとどまる。
少し傷付いたような表情で自分を見るアスランに向け、サラは必死で言葉を紡いだ。
「迷惑だから」
「……っ!」
「貴方の心が何を思おうと勝手だけど、気持ちを押しつけられるのは迷惑よ。初恋云々なんて関係ないわ。今の私と貴方は上司と部下。ただそれだけの関係よ」
一息に言う。
偽りばかりを詰め込んだその言葉は、アスランだけでなくサラ自身をも傷つける物であるというのに。
「サラ! でも……」
「初恋の相手と思ってもらえたことは光栄だわ。でもその恋はあの日に終わっているはずでしょう。あの日から私たちは別々の道を歩んでる。目の前にいる私はもう、貴方の初恋の人間とは違うのよ」
「違わないよ! サラは……!」
「昔話に付き合う気もないし、勝手に美化されるのも迷惑だわ。これ以上言うなら……」
カシャン
握られているのが銃だと気付く方が一瞬遅かった。それほどに素早い動きで、銃口がアスランに向けられる。
「体で理解する? 全てが貴方の中にある物とは違うって事を。私は貴方を撃てるわよ?」
ドンッ!
反動がサラの手に伝わったときにはもう、アスランの白い頬に紅が浮かんでいた。
「これで分かったでしょう?」
「……」
硝煙が立ち上る。
まとわりつく火薬の臭いを軽く払いながら、サラは言った。
「私は先に戻るわ。貴方は頭を冷やしてから戻りなさい」
アスランの答えはない。ただじっとサラを見つめたまま、身じろぎ一つせず。
そんなアスランの視線を払いのけるかのように、サラは踵を返すと歩き出した。
離れていく距離が、サラとアスランの心を表しているようで、胸が痛む。
ぼんやりと視界を曇らせる物を気付かせないようにと、サラは振り返りもせずその場を立ち去った。
抱きしめている腕をゆるめることのないまま、アスランは言った。すっぽりとくるまれたサラは、身じろぎすら出来ない。
「母が言った言葉の通り、想いを忘れなくて良かった。こうして……またサラに会えて良かった……」
触れたところから伝わってくる温もりが、目の前に大切な人がいるという事を実感させる。
アスランは、サラを。
サラは、アスランを。
「綺麗になったね、サラ」
アスランがサラの髪に優しくキスを落とした。
腕の中でびくりと震えた小さな体の熱が上がる。でもその熱は、幸せだけの物ではない。
「だ……めなの……」
現実と真実。今のサラの中では、完全に相反するその文字が浮かんでは消えていた。
誰かを想ってはいけない現実と、狂おしいほどに求めている真実が交錯してサラの心をかき乱す。どんな言い訳も通用しない今、出来ることなら全てをアスランに晒してしまいたかった。
何もかも話してしまえば、こんな苦しみを味わうこともない。だがそれは決して許されないのだ。これは、自らが選んだ道なのだから。
そんなサラの気持ちを知ってか知らずか、アスランは腕の力を緩めると、そのままサラの肩を掴んだ。
「サラ……」
ゆっくりと近付く顔。
「よく初恋は実らないって言うけれど、俺には関係ないよ。こうして再びサラが目の前にいる。……もう離さない」
吐息が触れる。
至近距離で見ても分かるアスランの端正な顔が、あと数センチでサラと重なろうとしたその時。
「……っ!」
乱れていた意識をハッと取り戻したサラは、勢いよくアスランを突き飛ばした。
「サラ!?」
予想していなかった行動に虚をつかれ、危うくしりもちをつきそうになってしまったアスランだが、咄嗟に踏みとどまる。
少し傷付いたような表情で自分を見るアスランに向け、サラは必死で言葉を紡いだ。
「迷惑だから」
「……っ!」
「貴方の心が何を思おうと勝手だけど、気持ちを押しつけられるのは迷惑よ。初恋云々なんて関係ないわ。今の私と貴方は上司と部下。ただそれだけの関係よ」
一息に言う。
偽りばかりを詰め込んだその言葉は、アスランだけでなくサラ自身をも傷つける物であるというのに。
「サラ! でも……」
「初恋の相手と思ってもらえたことは光栄だわ。でもその恋はあの日に終わっているはずでしょう。あの日から私たちは別々の道を歩んでる。目の前にいる私はもう、貴方の初恋の人間とは違うのよ」
「違わないよ! サラは……!」
「昔話に付き合う気もないし、勝手に美化されるのも迷惑だわ。これ以上言うなら……」
カシャン
握られているのが銃だと気付く方が一瞬遅かった。それほどに素早い動きで、銃口がアスランに向けられる。
「体で理解する? 全てが貴方の中にある物とは違うって事を。私は貴方を撃てるわよ?」
ドンッ!
反動がサラの手に伝わったときにはもう、アスランの白い頬に紅が浮かんでいた。
「これで分かったでしょう?」
「……」
硝煙が立ち上る。
まとわりつく火薬の臭いを軽く払いながら、サラは言った。
「私は先に戻るわ。貴方は頭を冷やしてから戻りなさい」
アスランの答えはない。ただじっとサラを見つめたまま、身じろぎ一つせず。
そんなアスランの視線を払いのけるかのように、サラは踵を返すと歩き出した。
離れていく距離が、サラとアスランの心を表しているようで、胸が痛む。
ぼんやりと視界を曇らせる物を気付かせないようにと、サラは振り返りもせずその場を立ち去った。