そのほか
おなまえをおしえてね
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
週末のお昼過ぎ、噴水広場で待ち合わせ。水面を見下ろして最後のチェックにとりかかる。やっぱり髪はもう少し巻いた方がよかったかな。2人で並んでも違和感のないように、できるだけ目元のメイクは頑張ったけど、やりすぎただろうか。お揃いにしたくてグリーンのワンピースを着たけど、ピンクか赤の方がバランスがよかったかな?
「やあ、 あさひ。待たせてしまったようだね」
待ちわびた声が聞こえて振り返る。いつものシンプルな姿じゃない、彼の「本気」の姿がそこにあった。
「あっ、いえ、そんなに待ってないです」
「ハハハ! 気を遣う必要はないさ。さて、それでは行こうか」
「はい!」
グリーンの体に真っ赤なベストが目を引く。ひとつ目仕様のグラスと相まって、そのエネルギーとセンスに腰が引けた。それに比べて自分はどうだろう。合わせることばかり考えてしまった。今すぐ着替えたい。やっぱり赤いワンピースにするべきだったんだ。
すると彼はこう言うのだ。
「そのグリーンは若葉の色だ、今の季節に相応しく、フレッシュな君によく似合う」
私はとても単純で、だからすぐに魔法にかかる。彼の言葉は魔法なのだ。だってほら、今はもうこのグリーンのワンピースが、最高にお気に入りになってしまったんだもの。
「同じ緑がいいな、と思って」
「Wow! 今のうちからそんなことを言わないでおくれ、俺のゲルが滾ってしまう」
流し目で言われて心臓が跳ね上がる。大きな瞳は今はレンズの向こうだけれど、それでも余りあるきらめきなの。
まずはショッピングに向かった。彼のホーン飾りであるとか、私の靴とか、お互いに選んで、お互いに似合うものを買う。
「ビーズの色がいいですね! エネルギッシュ」
「ふむ、こちらはどうかな?」
「ボタニカル柄? かわいい!」
「君のそのブーツも良いじゃないか、ワイルドアンドクールだ」
「こっちのヒールも捨て難くて……」
「ほう、セクシーとキュートが溶け合っているよ、まるで君のようだな」
ただそれだけなのに、流れる時間はずっとずっときらきらしていて、空気はずっとずっと熱くて、そうしてあっという間にディナータイムになった。
今日何したんだっけ? 覚えてない。ただただ、この大きな瞳だけが頭いっぱいに残っている。
「君の瞳に、乾杯」
「乾杯」
かちん、とシャンパンの入ったグラスが鳴った。ちょっとだけいいお店だ。見慣れない店内、知らない料理、初めて見る顔。前菜のテリーヌを口の中でとろかせていたら、ウルケルさんはくるりと一回転、グラスの中のシャンパンを回した。
「今日一日どうだったかな? 満足させられたならいいんだが」
「とっても楽しかったです。欲しい靴も買えたし」
「それはよかった、実を言うと自信が無くてね」
「えっ!?」
「 あさひ……君はコスモだ。未知数の魅力と輝きがある。見る度に違う煌めき……俺がこんなに惑わされるなんて」
「そ、そんな」
「フッ、ワイルドな男が形無しだな」
運ばれてきたポタージュをすくう。手が震えてそれどころじゃない。まともにスプーンにおさまらない。当然味もわからない。
何か言わなきゃ。
褒めてもらってばかりだもの。魔法にかけられてばかりなの。これじゃいけないのよ。
私だって魔法をかけたい。
「わ、わたしも」
「うん?」
「わたしも今日いちにちずっとドキドキしていて、いつもよりウルケルさんが素敵に見えました」
「 ……」
「また、」
また会えますか?
大きな瞳に私が映っている。ケミカルグリーンのゲルボディが、ぷるんと震えた。
「勿論! 次の休みはいつかな?」
「あっ、えっと、」
私の瞳に力は無いけれど、それでもね、お互いに恋の魔法にかかって、きらきらした世界の中で生きていけたら、とっても素敵なことだと思うの。だからもっともっと呪文を言いましょう。みつめあいましょう。
私はもうとっくに抜け出せないの。あなたは、どう?
(magic in your eyes)