バルチカ
おなまえをおしえてね
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「指揮官ノ両親ハ ドンナ人デシタカ?」
「へ?」
「地球人ハ 父ト母カラ 生マレル ト聞イタ」
「あ、うん、そうだね」
「我ガ家ハ 父ト呼ベル ノハ ハイト様ダケ、言ワバ シングルファーザー」
「確かに……」
「現在、一般的ナ『家族』ノ データ ガ 不足シテイマス」
「それで私から聞こうと」
「イエス」
あるお昼にバルチカが突然やってきた。サタンちゃんにもらったお花のサンドイッチを食べながら、午後の予定を考えていた時である。
バルチカは何を考えているのかわからない。表情が変わらないし、声色も変わらないし。アンドロイド、人工知能、AI、一応男性。地球にいた頃もアンドロイドは見かけたことがあるけれど、バルチカに比べればおもちゃみたいなものだ。
「家族かあ……」
うーん、と思い返してみる。
「でもなあ、多分私はあんまりいいモデルにはならないと思うんだよね」
「何故?」
「うちもねえ、シングルマザーでねえ」
「シングルマザー」
「ちっちゃい頃にお父さんいなくなってね、離婚したのかな?あたしを捨てたのよ!ってお母さんは言ってたけどね」
「ホウホウ」
「お母さん忙しかったから家にいなかったし、モテたから休みの日はどっか行っちゃってたし」
「フムフム」
「だからよくわかんない」
沈黙。宛が外れてがっかりしてるかな。ハイトさんの実家の話でも聞けばよかったのに。あ、でもあの人はあの人で家族と上手くいってなかったかもしれないよね。
「指揮官モ 苦労シテンダナ」
あれ?優しい。
「ていうか、なんで?そんなこと知りたいの?バルチカのとこはみんな仲良しじゃない」
バルチカは目をチカチカさせた。バルチカの目がチカチカ。あはは。……ごめんなさい。
「……………………」
沈黙。あ、これ、考えてるのか。考えるのにも時間かかるもんね。アンドロイドでも。人間の私はもっとかかるからよくカールスバーグさんに怒られる。
「家族かあ、いいなあ。家に帰るとご飯があってお風呂が沸いてて」
「食事モ風呂モ我ガ家ハ当番制」
「あっそうか!じゃあバルチカがやることもあるんだね」
「チナミニ 今日ハ 私ガ食事当番」
「わお、何作るの?」
「何ガイイ?」
「ん?」
「何ガイイ?」
なんで私にきくんだろう。晩御飯かあ。唐揚げ食べたいな。コロッケもいいな。あとカルボナーラ。ひとつひとつ挙げていく。混ぜご飯も食べたい。大根とか。とりとめがないな。お母さんが料理してた頃は里芋の煮っころがしが得意で、私はいつもぱくぱく食べてた。エルピダに里芋ってあるのかな?今度フィックスさんにきいてみよう。
「そんなとこ」
「多スギ」
「えー」
「唐揚ゲナラ 丁度トリ肉ガアル」
「じゃあそれでいいじゃない?」
「何時二来ル?」
「ん?」
ん?
「どこに?」
「ウチニ」
「誰が?」
「指揮官」
「あれ?」
「オオ?」
いつからそんな話に?あれ?まあいいか。えっと午後は、室内トレーニングの監修して、終わったら神官に報告して、終わりに書類整理して、カールスバーグさんが遠征中だからリングネスさんに代わりに出して、だからお説教がないから早く終わる、ので、
「7時くらい?」
「ジャストタイム」
「ほんと?やったあ」
「来ルカラニハ オ残シハ 許シマヘンデ」
「美味しいなら残さないよ」
「オ覚悟」
「はーい」
すたすたとバルチカは立ち去った。食べかけのお花のサンドイッチを再び口に運びながら、もう頭は晩御飯の唐揚げでいっぱいだった。
なんで誘ってくれたんだろうなあ、嬉しいなあ、お土産持ってった方がいいかなあ。またあのエプロン着てるのかなあ。色違いで揃えようかな、金ぴかとか。派手か。うん。
「そういえばなんの話してたんだっけ」
まあいいや。遠くから走ってくるサタンちゃんに手を振って、考えるのはやめた。
(胃袋から攻略していくタイプ)