きらきらのおくりもの
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このきらきらを、なにかに使えないかな。
手の中の丸いフラスコが昼の光を受けて輝くのを、静かに観察していた。
お昼ごはんを早めに済ませて、一人工房でアイデアを練る。新しい発明のきっかけにならないかと、並んだ午前中の成果物の周りを歩く。
ずらっと整理されたそれらのうち、三分の一は僕が作った。残りは師匠であるカセキじいちゃんの作ったもの。
僕はカセキじいちゃんに比べたらまだまだだ。若者の僕では、何十年も技術を磨いてきた先人の腕にはかなわない。
でも、そんな彼に一番弟子だと認められているくらいには、ものづくりに自信がある。将来は職人じゃな、なんて褒められて、僕はその道を進もうと決めている。
科学の道の途中で作られた、ガラスというもの。きらきらしていて、つるつるしていて、なんだかおもしろい。もろくて割れやすいけど、その儚さに惹かれていた。
フラスコからひんやりとした感覚が指先に伝わる。太陽にかざすと、またきらきらと輝いている。その中に美しさを見出せてしまうほどだ。
「メノウ、ガラスが気になるのか?」
声に振り返ると、千空がすぐ近くに来ていた。僕は予想以上にガラスに夢中になっていたらしく、千空が来ていたことに気づけなかった。
この村に科学を教えてくれた彼の問いかけに、僕はうなずく。
「このきらきら、なにかに使えないかなって思ってさ。今考えているところなんだ」
「お、発明家様のお出ましってところか? なにかできたら教えてくれ」
千空は僕に期待しているかのように、口角を上げた。
話題は広大な科学のロードマップの中の、今歩んでいるところに移る。これがあといくつ欲しいから作ってくれ、そうしたら次はこれを作ってほしい。
あとでカセキじいちゃんと共有するために、千空の話にしっかりと耳を傾ける。
「以上だ、よろしく頼むぜ。メノウ、頑張りすぎは体に毒だ、ちゃんと休憩も取るんだな。じゃ、またあとで」
「千空!」
こちらに背を向けてその場を離れかけた彼を、呼び止める。
「あ?」
「ガラスに……色はつけられる?」
千空は振り返って「おー、できるぞ」といつもの調子で答える。
「なにを作るんだ? ひょっとして、もうアイデアが頭の中にあるのか?」
「な、内緒!」
「ふーん?」
僕は右手の人差し指を口元に当てる。それを見た千空はにやっと笑い、僕の手の中にある透明なフラスコを見つめた。
「色付きガラスってのは、溶けたガラスに金属化合物を混ぜればできる。青ならコバルト、黄色なら銀やニッケル……」
「緑は?」
「緑? あー、鉄とか銅だな」
目を閉じて、まだ目にしたことのない緑色のガラスを想像する。
透き通るきらきらの緑は、誠実でまっすぐな緑色の瞳と、似ているのだろうか。純粋な好奇心と淡い恋心が、心の海の中でゆらゆらと漂う。
僕の名前を呼ぶ声と、向けられたやさしいまなざしを思い出して、胸のあたりがきゅっとなるのを感じた。
「バレバレだな、メノウ」
千空の声が、夢見心地だった意識を現実に引き戻す。
僕はぱっと目を開けて、焦る気持ちを悟られないように返事する。
「な、なにがっ?」
声が裏返ってしまった。相当動揺していることに自分でも驚く。
視線を右に左にと動かす僕に、彼は腕組みをして指摘する。
「それ、作って金狼にあげるんだろ?」
図星だった。顔に一気に熱がのぼり、冷や汗が吹き出る。両手を頬に当てると、熱された鉄のように熱くなっていた。
「なんでっ……なんでわかったの! 隠してたつもりだったのに!」
恥ずかしさのあまり、つい大きな声が出てしまう。むう、とにらみつけても、千空はにやにやした表情を崩さない。
「そりゃーな、見てりゃ誰だってわかる。アイツのこと、いつも目で追ってるだろ」
「う……!」
まったくもってその通りだ。
二人きりのときも、村のみんなといるときも、なぜか彼のことを見てしまう。それが恋だと気づいたのは、二つ前の季節のときだった。
「応援してるぜ、メノウ。できたら見せてくれ」
りんごのように真っ赤な顔の僕を残して、千空はひらひらと手を振りながらその場を去る。
手の中の丸いフラスコが昼の光を受けて輝くのを、静かに観察していた。
お昼ごはんを早めに済ませて、一人工房でアイデアを練る。新しい発明のきっかけにならないかと、並んだ午前中の成果物の周りを歩く。
ずらっと整理されたそれらのうち、三分の一は僕が作った。残りは師匠であるカセキじいちゃんの作ったもの。
僕はカセキじいちゃんに比べたらまだまだだ。若者の僕では、何十年も技術を磨いてきた先人の腕にはかなわない。
でも、そんな彼に一番弟子だと認められているくらいには、ものづくりに自信がある。将来は職人じゃな、なんて褒められて、僕はその道を進もうと決めている。
科学の道の途中で作られた、ガラスというもの。きらきらしていて、つるつるしていて、なんだかおもしろい。もろくて割れやすいけど、その儚さに惹かれていた。
フラスコからひんやりとした感覚が指先に伝わる。太陽にかざすと、またきらきらと輝いている。その中に美しさを見出せてしまうほどだ。
「メノウ、ガラスが気になるのか?」
声に振り返ると、千空がすぐ近くに来ていた。僕は予想以上にガラスに夢中になっていたらしく、千空が来ていたことに気づけなかった。
この村に科学を教えてくれた彼の問いかけに、僕はうなずく。
「このきらきら、なにかに使えないかなって思ってさ。今考えているところなんだ」
「お、発明家様のお出ましってところか? なにかできたら教えてくれ」
千空は僕に期待しているかのように、口角を上げた。
話題は広大な科学のロードマップの中の、今歩んでいるところに移る。これがあといくつ欲しいから作ってくれ、そうしたら次はこれを作ってほしい。
あとでカセキじいちゃんと共有するために、千空の話にしっかりと耳を傾ける。
「以上だ、よろしく頼むぜ。メノウ、頑張りすぎは体に毒だ、ちゃんと休憩も取るんだな。じゃ、またあとで」
「千空!」
こちらに背を向けてその場を離れかけた彼を、呼び止める。
「あ?」
「ガラスに……色はつけられる?」
千空は振り返って「おー、できるぞ」といつもの調子で答える。
「なにを作るんだ? ひょっとして、もうアイデアが頭の中にあるのか?」
「な、内緒!」
「ふーん?」
僕は右手の人差し指を口元に当てる。それを見た千空はにやっと笑い、僕の手の中にある透明なフラスコを見つめた。
「色付きガラスってのは、溶けたガラスに金属化合物を混ぜればできる。青ならコバルト、黄色なら銀やニッケル……」
「緑は?」
「緑? あー、鉄とか銅だな」
目を閉じて、まだ目にしたことのない緑色のガラスを想像する。
透き通るきらきらの緑は、誠実でまっすぐな緑色の瞳と、似ているのだろうか。純粋な好奇心と淡い恋心が、心の海の中でゆらゆらと漂う。
僕の名前を呼ぶ声と、向けられたやさしいまなざしを思い出して、胸のあたりがきゅっとなるのを感じた。
「バレバレだな、メノウ」
千空の声が、夢見心地だった意識を現実に引き戻す。
僕はぱっと目を開けて、焦る気持ちを悟られないように返事する。
「な、なにがっ?」
声が裏返ってしまった。相当動揺していることに自分でも驚く。
視線を右に左にと動かす僕に、彼は腕組みをして指摘する。
「それ、作って金狼にあげるんだろ?」
図星だった。顔に一気に熱がのぼり、冷や汗が吹き出る。両手を頬に当てると、熱された鉄のように熱くなっていた。
「なんでっ……なんでわかったの! 隠してたつもりだったのに!」
恥ずかしさのあまり、つい大きな声が出てしまう。むう、とにらみつけても、千空はにやにやした表情を崩さない。
「そりゃーな、見てりゃ誰だってわかる。アイツのこと、いつも目で追ってるだろ」
「う……!」
まったくもってその通りだ。
二人きりのときも、村のみんなといるときも、なぜか彼のことを見てしまう。それが恋だと気づいたのは、二つ前の季節のときだった。
「応援してるぜ、メノウ。できたら見せてくれ」
りんごのように真っ赤な顔の僕を残して、千空はひらひらと手を振りながらその場を去る。
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