きらきらのおくりもの
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夕焼けのオレンジを映した川に、しゃがんだ僕の姿が映る。紫のとんぼ玉は、僕の頭の上で夕日を受けて、橙色にきらきらと輝いている。
「すごいね、金狼……! このお箸一本で髪の毛まとめられるんだね!」
「『かんざし』だ、メノウ……ああ、本当にすごいな」
金狼に訂正され、そうだったと思い出す。
かんざしにそっと触れる。どういう原理なのかはわからないが、しっかりと固定されていて少しの力じゃ動かない。
「よく一回でできたね。難しくなかった?」
立ち上がって振り返ると、金狼は顎に手を当てて首を傾げていた。
「かんざしも槍も、一本の長物というところは同じだからな。そこがうまくはまったのだろうな」
「長物て……」
うんうん、とうなずく金狼の首元には、緑色のとんぼ玉が輝いている。
「金狼、似合ってるよ」
「……うむ」
少し照れながらそれに触れる彼は、まんざらでもなさそうだ。
僕は再び座り込んで、川を見つめる。紫に咲いた桃色の花に、つい視線が向いてしまう。
すみれ色の空の下、いっぱいに広がる桃色の花畑。そんな幻想的なところがあったら、と僕は妄想してしまう。そんな光景も、ガラスの中では表現できる。
川に反射する確かなきらきらの美しさに、僕はうっとりする。ずっと、ずっと見ていられる。そんな魔力が、このとんぼ玉にはある。
「かんざしなら、ものづくりの邪魔にはならんだろう」
金狼の言葉に、陶酔していた頭が覚める。
「気に入って、くれたか……?」
少しの不安を帯びた声が、僕にかけられる。立ち上がり、振り返って彼に向き直る。
「もちろん! 長い髪もまとめられてとっても楽だよ、ありがとう!」
相手の不安を上書きするように感謝を伝えると、金狼は「……よかった」と口元をゆるませていた。
「……なぁ、メノウ。かんざしをおくる意味は知っているか?」
「かんざしをおくる、意味?」
問いかけにうなずく金狼。頭をひねってみたが、まったく思いつかない。
「んー……知らないかも。かんざし自体、今日知ったからね」
ごめんね、と両手を合わせて苦笑いで答える。すると、なにか言おうとしたのか、彼の口が少しだけ開き、次の瞬間には閉じられていた。
金狼は河原の石に視線を落として、口を動かす。
「なら……知らなくていい」
真面目な彼らしくない返答だ。答えたくないほど、かんざしを贈ることは重要な意味を持つのだろうか。
「そうやって言われると、気になるよ。金狼、どういう意味があるの?」
「……」
疑問をそのまま伝えると、金狼は下を向いたまま黙ってしまった。
「……金狼?」
名前を呼ぶと、「そろそろ夕飯の時間だな。帰ろう」と歩いていってしまう。その後ろ姿に慌ててついていく。
足を踏み出すと、河原の小石がこすれてからころと音が鳴る。金狼の隣に並んで、遠慮がちに訊いてみる。
「金狼、ごめん……僕、なにか悪いことしたかな」
「……いや、メノウはなにも悪くない。俺の問題だからな、メノウは知らなくていいことだ」
村に戻るまで数回尋ねてみたが、彼ははぐらかすだけだった。金狼がなにを伝えようとしていたのか、真意はわからなくなってしまった。
「すごいね、金狼……! このお箸一本で髪の毛まとめられるんだね!」
「『かんざし』だ、メノウ……ああ、本当にすごいな」
金狼に訂正され、そうだったと思い出す。
かんざしにそっと触れる。どういう原理なのかはわからないが、しっかりと固定されていて少しの力じゃ動かない。
「よく一回でできたね。難しくなかった?」
立ち上がって振り返ると、金狼は顎に手を当てて首を傾げていた。
「かんざしも槍も、一本の長物というところは同じだからな。そこがうまくはまったのだろうな」
「長物て……」
うんうん、とうなずく金狼の首元には、緑色のとんぼ玉が輝いている。
「金狼、似合ってるよ」
「……うむ」
少し照れながらそれに触れる彼は、まんざらでもなさそうだ。
僕は再び座り込んで、川を見つめる。紫に咲いた桃色の花に、つい視線が向いてしまう。
すみれ色の空の下、いっぱいに広がる桃色の花畑。そんな幻想的なところがあったら、と僕は妄想してしまう。そんな光景も、ガラスの中では表現できる。
川に反射する確かなきらきらの美しさに、僕はうっとりする。ずっと、ずっと見ていられる。そんな魔力が、このとんぼ玉にはある。
「かんざしなら、ものづくりの邪魔にはならんだろう」
金狼の言葉に、陶酔していた頭が覚める。
「気に入って、くれたか……?」
少しの不安を帯びた声が、僕にかけられる。立ち上がり、振り返って彼に向き直る。
「もちろん! 長い髪もまとめられてとっても楽だよ、ありがとう!」
相手の不安を上書きするように感謝を伝えると、金狼は「……よかった」と口元をゆるませていた。
「……なぁ、メノウ。かんざしをおくる意味は知っているか?」
「かんざしをおくる、意味?」
問いかけにうなずく金狼。頭をひねってみたが、まったく思いつかない。
「んー……知らないかも。かんざし自体、今日知ったからね」
ごめんね、と両手を合わせて苦笑いで答える。すると、なにか言おうとしたのか、彼の口が少しだけ開き、次の瞬間には閉じられていた。
金狼は河原の石に視線を落として、口を動かす。
「なら……知らなくていい」
真面目な彼らしくない返答だ。答えたくないほど、かんざしを贈ることは重要な意味を持つのだろうか。
「そうやって言われると、気になるよ。金狼、どういう意味があるの?」
「……」
疑問をそのまま伝えると、金狼は下を向いたまま黙ってしまった。
「……金狼?」
名前を呼ぶと、「そろそろ夕飯の時間だな。帰ろう」と歩いていってしまう。その後ろ姿に慌ててついていく。
足を踏み出すと、河原の小石がこすれてからころと音が鳴る。金狼の隣に並んで、遠慮がちに訊いてみる。
「金狼、ごめん……僕、なにか悪いことしたかな」
「……いや、メノウはなにも悪くない。俺の問題だからな、メノウは知らなくていいことだ」
村に戻るまで数回尋ねてみたが、彼ははぐらかすだけだった。金狼がなにを伝えようとしていたのか、真意はわからなくなってしまった。