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 順路の最後には例にたがわずお土産コーナーがあった。海の生き物たちを鑑賞した余韻に浸りながら二人で歩いていると、まりながふと足を止めた。
 ぬいぐるみのコーナーだった。イルカやクラゲなどの定番のものから、ダイオウグソクムシなんていう変わったものまで取り揃えている。ふーん、とざっと見渡し、まりなの様子を見る。
 まりなは手のひらサイズの丸いぬいぐるみを手に持っていた。やさしい桃色のメンダコだ。キーチェーン付きで、一緒にお出かけができそうだ。
 つぶらな黒い瞳と目を合わせるその表情は、きらきらと輝いている。普段のまりなとは似合わない、まるで子供のような純粋な顔。
「まりな」
「……なに」
 不機嫌そうに返事をして、俺の方を見る。
「欲しいのか?」
「別に。欲しくなんてない」
 少しの間ののち、視線をぬいぐるみに落としながら静かに口を開く。
「小さいころ、ぬいぐるみをたくさん集めてたの。誰も構ってくれなくて、さみしくて」
 昔を懐かしむような、少し憂いを帯びた顔をする。そののち、顔を上げた。
「でも、今は平気。あんたがいるから。だから、これはいいの」
「……そうか」
 微笑みを浮かべたまりなは、ぬいぐるみを棚に戻そうとする。しかし、戻す直前で手が止まった。
「本当は、欲しいんだな?」
「……別に」
「メンダコの水槽、食い入るように見つめてたもんな。メンダコが好きなのか?」
「そんなことないし! 私が何を見ようと勝手でしょ!」
 口では否定しながら、両手でメンダコを握りしめている。強い力でぎゅうっと変形させられたメンダコに申し訳なく思いながら、俺はぬいぐるみの棚に近寄り、その一つを手に取る。
「じゃあ、俺はこれ買うから。一緒に買おう」
「……あんたとおそろいとか、嫌なんだけど」
「この黄色いメンダコ、まりなみたいで可愛いなって」
「はぁ!?」
「いいだろ? 恋人らしくて」
 に、と笑ってみせると、まりなは顔を真っ赤にして俺をにらみつけた。
「勝手にすれば!」
 ぷい、とそっぽを向いてしまう。まりなの感情が落ち着くのを待っていると、顔の赤みは徐々に引いていき、小さく「たまには」と口に出す。
「……たまには、おそろいも悪くないか」
 ぼそっとつぶやき、レジの方へ歩く後ろ姿はどこか嬉しそうだ。その隣に歩き、声をかける。
「ありがとう」
「……ん」
 まりなの手元にあるピンクのメンダコに、俺の持つ黄色のメンダコを近づける。ピンクのメンダコが、黄色いメンダコに触れる。そして、ゆるゆると頬ずりをした。
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