再会
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昼休み。私はなんとA組の前に来ていた。
今日のお昼に食べたパンは大好きなふわっふわの塩パンだったのに、味がしなかった。ひどく緊張していたからだ。
百ちゃんに「昼休みに来てはどうですか?」と提案されたのだ。放課後すぐに帰ってしまうのなら、帰る前、昼休みに会いにくれば良いのだ。
そして、私はこんなことも決めていた。
今日でやめよう。今日会えなかったらやめよう。これ以上やると、迷惑になるから。
だってもう一ヶ月経ちそうなんだもん。A組のみんなにも顔覚えられちゃったし……。
ラストチャンス。私は深呼吸して、いつもよりほんの少しだけ大きな声で言う。
「轟くんいます、かっ……!」
声が上擦ってしまった。ドアの近くで談笑していた女子たちがこちらを振り向く。じっと見つめられて、私は気まずくてつい他所を見つめてしまう。
「水火さん!」
その中から、百ちゃんが笑って答えた。
「呼んできますわね」
百ちゃんは教室の奥の方へ歩いていく。
いるんだ! 私はほっと胸を撫で下ろす。でも、すぐにまた緊張する。
……本当に会いにきてくれるの?
ここで拒否することもできる。百ちゃんに「会いたくない」と言って私と会わないこともできる。
どうせ私のことなんて……。
私は下を向く。そこには私の足、茶色いローファーがあって、緊張で足先が少しだけ上がっている。
いやいや、と私は首を振る。
それならそれでいいじゃないか。雄英に来てるんだって、存在が少し確認できただけでも喜ぼう。
きっともう世界が違うんだ。ヒーローを目指す者と、一般人とでは。
思考にふけっていると、ふと耳に入る足音。百ちゃんのものではないとなんとなくわかった。わかってしまった。
昼休みなのに教室は静かで、足音がいやでも耳を刺激する。
どくんどくん、心臓が鳴る。
その足音は私の目の前で止まった。水色の、ハイカットスニーカー。私よりも大きな足。
歯をぐっと食いしばって顔を上げる。
彼がいた。
幼かったあの頃の髪色はそのままだった。まっすぐな瞳も、その輝きも。
驚きで口がゆるんでいく。
「しょう、と」
背が高くなっている。私の背は、いつの間に追い越されたんだろう。
「……」
左目のあたりには、私の知らないアザがある。火傷だろうか。一体どうしてこんなところに……。
考えていると、相手が私をじっと見つめていることに気づいた。
「あ、ごめんなさい……!」
私はつい彼から視線を外す。
第一声が謝罪になってしまった。すぐに後悔がぶわっと私の頭に広がる。
あぁ、失敗した。これだから私は。
ぐちゃぐちゃ、ぐるぐる。黒い思考がまた私を乗っ取りにかかる。
でも、こんなところで立ち去るわけにはいかない。
言うんだ。何しに来たのか。
言うんだ!
「ひ、久しぶり、だね」
話しながら彼を見る。絞り出した声は震えていた。苦笑いでどうにか誤魔化す。
「覚えてるかな? ……十年前だから、もう、覚えてないよね」
落ち着け落ち着け、と言い聞かせても震えは止まらない。心臓がばくんばくんうるさい。
「顔が見たかっただけなんだ。ごめんね、邪魔しちゃって」
無表情の彼は何も言わない。緊張している変な女子生徒を、ただ眺めているだけだ。
「じゃあ、し、失礼します」
お辞儀をする。
細々と紡いだ言葉は、彼にしっかりと届いたかわからない。
でも、言いたいことは言えた。これでいいんだ。一方的だけど、少し話せただけでも。
帰ろう。C組へ。
振り返りかけた、そのときだった。
左手首を掴まれた。
「えっ」
誰、と思って振り返ると焦凍だった。
そのまま彼は歩き出す。教室の外、どこかに向かって。
「待って」
私の声に振り返りもせず、焦凍は廊下をずんずんと歩いていく。私は手首を引っ張られながら彼の後ろをついていくしかなかった。
今日のお昼に食べたパンは大好きなふわっふわの塩パンだったのに、味がしなかった。ひどく緊張していたからだ。
百ちゃんに「昼休みに来てはどうですか?」と提案されたのだ。放課後すぐに帰ってしまうのなら、帰る前、昼休みに会いにくれば良いのだ。
そして、私はこんなことも決めていた。
今日でやめよう。今日会えなかったらやめよう。これ以上やると、迷惑になるから。
だってもう一ヶ月経ちそうなんだもん。A組のみんなにも顔覚えられちゃったし……。
ラストチャンス。私は深呼吸して、いつもよりほんの少しだけ大きな声で言う。
「轟くんいます、かっ……!」
声が上擦ってしまった。ドアの近くで談笑していた女子たちがこちらを振り向く。じっと見つめられて、私は気まずくてつい他所を見つめてしまう。
「水火さん!」
その中から、百ちゃんが笑って答えた。
「呼んできますわね」
百ちゃんは教室の奥の方へ歩いていく。
いるんだ! 私はほっと胸を撫で下ろす。でも、すぐにまた緊張する。
……本当に会いにきてくれるの?
ここで拒否することもできる。百ちゃんに「会いたくない」と言って私と会わないこともできる。
どうせ私のことなんて……。
私は下を向く。そこには私の足、茶色いローファーがあって、緊張で足先が少しだけ上がっている。
いやいや、と私は首を振る。
それならそれでいいじゃないか。雄英に来てるんだって、存在が少し確認できただけでも喜ぼう。
きっともう世界が違うんだ。ヒーローを目指す者と、一般人とでは。
思考にふけっていると、ふと耳に入る足音。百ちゃんのものではないとなんとなくわかった。わかってしまった。
昼休みなのに教室は静かで、足音がいやでも耳を刺激する。
どくんどくん、心臓が鳴る。
その足音は私の目の前で止まった。水色の、ハイカットスニーカー。私よりも大きな足。
歯をぐっと食いしばって顔を上げる。
彼がいた。
幼かったあの頃の髪色はそのままだった。まっすぐな瞳も、その輝きも。
驚きで口がゆるんでいく。
「しょう、と」
背が高くなっている。私の背は、いつの間に追い越されたんだろう。
「……」
左目のあたりには、私の知らないアザがある。火傷だろうか。一体どうしてこんなところに……。
考えていると、相手が私をじっと見つめていることに気づいた。
「あ、ごめんなさい……!」
私はつい彼から視線を外す。
第一声が謝罪になってしまった。すぐに後悔がぶわっと私の頭に広がる。
あぁ、失敗した。これだから私は。
ぐちゃぐちゃ、ぐるぐる。黒い思考がまた私を乗っ取りにかかる。
でも、こんなところで立ち去るわけにはいかない。
言うんだ。何しに来たのか。
言うんだ!
「ひ、久しぶり、だね」
話しながら彼を見る。絞り出した声は震えていた。苦笑いでどうにか誤魔化す。
「覚えてるかな? ……十年前だから、もう、覚えてないよね」
落ち着け落ち着け、と言い聞かせても震えは止まらない。心臓がばくんばくんうるさい。
「顔が見たかっただけなんだ。ごめんね、邪魔しちゃって」
無表情の彼は何も言わない。緊張している変な女子生徒を、ただ眺めているだけだ。
「じゃあ、し、失礼します」
お辞儀をする。
細々と紡いだ言葉は、彼にしっかりと届いたかわからない。
でも、言いたいことは言えた。これでいいんだ。一方的だけど、少し話せただけでも。
帰ろう。C組へ。
振り返りかけた、そのときだった。
左手首を掴まれた。
「えっ」
誰、と思って振り返ると焦凍だった。
そのまま彼は歩き出す。教室の外、どこかに向かって。
「待って」
私の声に振り返りもせず、焦凍は廊下をずんずんと歩いていく。私は手首を引っ張られながら彼の後ろをついていくしかなかった。