夏休み
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「水火、渡したいものがあるんだ」
焦凍は「取りに行ってくる」と部屋に行ってしまう。
「渡したいものって、なんですかね?」
「うーん……聞いてないなぁ」
冬美さんにもわからないもの。一体なんなんだろう。
少しののち、彼が返ってきた。その手には、白く四角い、薄いものがあった。
「お母さんから、手紙を預かってるんだ」
「冷さんから……?」
「ああ。面会のときにな。渡してほしいって」
差し出される封筒の宛名の字は、確かに見覚えのある冷さんの字で、私は懐かしさを覚えた。
裏返すと、封をするために青いお花のシールが貼られている。朝顔だ。夏らしいチョイスに冷さんのセンスを感じて、口がゆるむ。
シールをそっとはがすと、中には二枚の便箋が入っていた。そーっと優しく扱う。
冷さんからの手紙なんて初めてだ。想いを取りこぼさぬよう、ゆっくりと文字を追う。
久しぶりだね、との挨拶から始まった手紙には、面会で焦凍から私の話を聞いていること、元気そうでよかった、という安堵の気持ち、学校生活楽しんでね、陰ながら応援してるよ、といったことが書いてあった。
そして、最後にこんなことが書いてあった。
『あの子があなたのことを話しているとき、とっても楽しそうなの。本当に少しなんだけど、声のトーンが一つ上がるんだ。きっと、水火ちゃんと会ったり、話したり、そういうことが楽しいんだろうね。
水火ちゃんさえよければ、また焦凍と仲良くしてくれると嬉しいな。いつもありがとうね』
焦凍が私のことを冷さんに話しているという事実に、ちょっと顔が赤くなるのを感じつつも、私と焦凍の仲を気にかけてくれている冷さんのやさしさに、目が潤んでしまった。
「水火、なにが書いてあったんだ?」
焦凍がそわそわしながら私に尋ねる。伝えるか迷って「二人の内緒」と返すと、彼は「それは残念」と口元をゆるめた。
そのまま三人で話をしたり、おやつを食べたりしていると、四時になった。
「ごめんね、二人とも。ごはんの支度しなくちゃだから、今日はここら辺で解散でもいい?」
「もちろんです」
「水火」
冬美さんに指でオッケーサインを作ると、焦凍が私の名前を呼んだ。
「今日はありがとう。楽しかった」
純粋な喜びを伝えられ、私は胸のあたりがじんわりと温かくなるのを感じた。
「こちらこそありがとう。私も同じ気持ちだよ」
冬美さんがふふ、と笑っている。
「今日のお夕飯、なんですか」
「麻婆豆腐のつもり! 今度よかったら食べてってよ」
「いいんですか? やったー!」
冬美さんの手料理なんて、気になるに決まっているじゃないか。手を煩わせないように、私は「お邪魔しました」と轟家をあとにした。姿が見えなくなるまで、焦凍が見送ってくれた。
焦凍は「取りに行ってくる」と部屋に行ってしまう。
「渡したいものって、なんですかね?」
「うーん……聞いてないなぁ」
冬美さんにもわからないもの。一体なんなんだろう。
少しののち、彼が返ってきた。その手には、白く四角い、薄いものがあった。
「お母さんから、手紙を預かってるんだ」
「冷さんから……?」
「ああ。面会のときにな。渡してほしいって」
差し出される封筒の宛名の字は、確かに見覚えのある冷さんの字で、私は懐かしさを覚えた。
裏返すと、封をするために青いお花のシールが貼られている。朝顔だ。夏らしいチョイスに冷さんのセンスを感じて、口がゆるむ。
シールをそっとはがすと、中には二枚の便箋が入っていた。そーっと優しく扱う。
冷さんからの手紙なんて初めてだ。想いを取りこぼさぬよう、ゆっくりと文字を追う。
久しぶりだね、との挨拶から始まった手紙には、面会で焦凍から私の話を聞いていること、元気そうでよかった、という安堵の気持ち、学校生活楽しんでね、陰ながら応援してるよ、といったことが書いてあった。
そして、最後にこんなことが書いてあった。
『あの子があなたのことを話しているとき、とっても楽しそうなの。本当に少しなんだけど、声のトーンが一つ上がるんだ。きっと、水火ちゃんと会ったり、話したり、そういうことが楽しいんだろうね。
水火ちゃんさえよければ、また焦凍と仲良くしてくれると嬉しいな。いつもありがとうね』
焦凍が私のことを冷さんに話しているという事実に、ちょっと顔が赤くなるのを感じつつも、私と焦凍の仲を気にかけてくれている冷さんのやさしさに、目が潤んでしまった。
「水火、なにが書いてあったんだ?」
焦凍がそわそわしながら私に尋ねる。伝えるか迷って「二人の内緒」と返すと、彼は「それは残念」と口元をゆるめた。
そのまま三人で話をしたり、おやつを食べたりしていると、四時になった。
「ごめんね、二人とも。ごはんの支度しなくちゃだから、今日はここら辺で解散でもいい?」
「もちろんです」
「水火」
冬美さんに指でオッケーサインを作ると、焦凍が私の名前を呼んだ。
「今日はありがとう。楽しかった」
純粋な喜びを伝えられ、私は胸のあたりがじんわりと温かくなるのを感じた。
「こちらこそありがとう。私も同じ気持ちだよ」
冬美さんがふふ、と笑っている。
「今日のお夕飯、なんですか」
「麻婆豆腐のつもり! 今度よかったら食べてってよ」
「いいんですか? やったー!」
冬美さんの手料理なんて、気になるに決まっているじゃないか。手を煩わせないように、私は「お邪魔しました」と轟家をあとにした。姿が見えなくなるまで、焦凍が見送ってくれた。