夏休み
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しばらく涙を流したのち、泣き止んだ私は深呼吸をする。ふー、と息を吐くと、涙で歪んだ視界に二人が映って、また涙を拭いた。
「あ、そうだ。水火ちゃん、高校生活うまくやってる?」
「まぁ、何とか……」
あはは、と苦笑い混じりに伝えると、焦凍が冬美さんの方を向いた。
「冬姉。水火は頑張ってる。期末、総合得点一位なんだ。中間も」
「おおー!」
冬美さんが目を見開く。
「理系科目も全部満点だし」
「焦凍! は、恥ずかしいよ……!」
曖昧に握った両手をあわあわと震わせながら、顔が熱くなるのを感じる。
「将来の夢、お医者さんだっけ? すぐ叶いそうだね!」
私の顔を覗き込んで、にこっと微笑む冬美さん。
ふと、あの先生の言葉がよぎって、私は髪をいじりながら答える。
「そう、ですね……」
苦笑いをする。
医師になる。その夢はあのときからずっと大事に抱えてきたものだ。だが、彼の言葉でその夢はゆらぎ始めている。
私は……どちらを選べばよいのだろう。
「水火?」
視線を下に向けたままでいると、焦凍が尋ねてくる。不安そうな顔だ。
「大丈夫! なんでもない!」
笑顔を作ると、彼は「……そうか」と無表情のまま私を見た。
「そういえば、寮の話って水火のところにも来たか?」
「あー、あれね! うん、来たよ。プリントが」
「炎也さん、泣いてなかった?」
冬美さんが尋ねる。
「あー……めっちゃ泣いてましたね……」
「……やっぱり」
くす、と冬美さんが笑う。
「炎也さんのすぐ泣くところ、変わってないんだな……」
焦凍は懐かしむように、お茶を一口飲んだ。
そう、私のお父さんはちょっとしたことですぐ泣くのだ。
兄の炎司さんとは真逆で、涙腺が脆いみたいだ。幼稚園のお遊戯会でも、小学校の調理実習でも、中学校の運動会でも、いつでもどこでも泣いている。
それは寮制度開始のお知らせでも変わらなかった。プリントを見せると「一人で大丈夫か? 本当に大丈夫なのか?」と目に涙をためていた。
「今回は少し違って、普段から家事をしている姿を見ているせいか、『水火なら大丈夫か!』って泣き止んでましたけど」
あは、と苦笑いしながら伝える。二人がよかった、とうなずいてくれる。
お父さんも、この場に来れたらいいのに。でもそれは、叶わない夢だ。炎司さんとの仲が悪いからだ。
気弱なお父さんは、この家に足を踏み入れることを、もうずいぶん前にやめてしまった。大人の確執は、よくわからない。
二人の関係が変わることは、あまり期待していない。けれど、私が焦凍や冬美さんと交流することで、彼らの感情が少しでも和らぐといいな、と思う。
「あ、そうだ。水火ちゃん、高校生活うまくやってる?」
「まぁ、何とか……」
あはは、と苦笑い混じりに伝えると、焦凍が冬美さんの方を向いた。
「冬姉。水火は頑張ってる。期末、総合得点一位なんだ。中間も」
「おおー!」
冬美さんが目を見開く。
「理系科目も全部満点だし」
「焦凍! は、恥ずかしいよ……!」
曖昧に握った両手をあわあわと震わせながら、顔が熱くなるのを感じる。
「将来の夢、お医者さんだっけ? すぐ叶いそうだね!」
私の顔を覗き込んで、にこっと微笑む冬美さん。
ふと、あの先生の言葉がよぎって、私は髪をいじりながら答える。
「そう、ですね……」
苦笑いをする。
医師になる。その夢はあのときからずっと大事に抱えてきたものだ。だが、彼の言葉でその夢はゆらぎ始めている。
私は……どちらを選べばよいのだろう。
「水火?」
視線を下に向けたままでいると、焦凍が尋ねてくる。不安そうな顔だ。
「大丈夫! なんでもない!」
笑顔を作ると、彼は「……そうか」と無表情のまま私を見た。
「そういえば、寮の話って水火のところにも来たか?」
「あー、あれね! うん、来たよ。プリントが」
「炎也さん、泣いてなかった?」
冬美さんが尋ねる。
「あー……めっちゃ泣いてましたね……」
「……やっぱり」
くす、と冬美さんが笑う。
「炎也さんのすぐ泣くところ、変わってないんだな……」
焦凍は懐かしむように、お茶を一口飲んだ。
そう、私のお父さんはちょっとしたことですぐ泣くのだ。
兄の炎司さんとは真逆で、涙腺が脆いみたいだ。幼稚園のお遊戯会でも、小学校の調理実習でも、中学校の運動会でも、いつでもどこでも泣いている。
それは寮制度開始のお知らせでも変わらなかった。プリントを見せると「一人で大丈夫か? 本当に大丈夫なのか?」と目に涙をためていた。
「今回は少し違って、普段から家事をしている姿を見ているせいか、『水火なら大丈夫か!』って泣き止んでましたけど」
あは、と苦笑いしながら伝える。二人がよかった、とうなずいてくれる。
お父さんも、この場に来れたらいいのに。でもそれは、叶わない夢だ。炎司さんとの仲が悪いからだ。
気弱なお父さんは、この家に足を踏み入れることを、もうずいぶん前にやめてしまった。大人の確執は、よくわからない。
二人の関係が変わることは、あまり期待していない。けれど、私が焦凍や冬美さんと交流することで、彼らの感情が少しでも和らぐといいな、と思う。