夏休み
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お茶を飲みながら、私はそういえば冬美さんに伝えなくちゃいけないことがあった、と思い出す。
「あの、冬美さん」
「なに?」
「プレゼントのハンカチ渡してくれて、ありがとうございます」
頭を下げる。冬美さんの顔を見ると、一瞬ぽかんとして、あー、あれね、と微笑んだ。
「私が二人のためにできることはそれしかなかったからね。ほんのちょっとだけど、二人の仲を繋ぎ止められていたのならうれしいな」
焦凍に渡したハンカチのことだ。あのときは、最後のプレゼント。今では、最初のプレゼント。体育祭で大切に扱ってくれているところを見て、とても嬉しかった。
「焦凍、渡したときすごく泣いてたよね……」
冬美さんが彼を見る。焦凍は少しの間ののち、口を開く。
「水火に会いたいと話したら、『お前の歩む道にあの小娘はいらん』と怒鳴った親父の顔は……覚えている。それから、水火の話を俺からすることはなくなった」
そう言って、机に視線を落とした。
あの人にとっては、理想の道。言われた側は、その道を歩む側は、どんな気持ちを抱いていたのだろう。
私がいなかった十年間、彼は、どういった感情で日々を過ごしていたのだろう。空き教室で抱きしめられたあの日の体温を、力の強さを、震えた声を、未だに覚えている。
「ずっと会えないと思っていた。一生だな……だから」
私を見つめる彼の目は、安堵にうるんでいる。
「こうして会えて、話せて、本当に嬉しい」
焦凍は鼻をすすって、涙をぬぐった。
「……私も、嬉しいよ。もう、だめなんじゃないかって思ってたの」
伝えると、彼は私を見て、目を赤くしたままゆっくりと口元をゆるませた。しんみりした沈黙が漂う。
「あー! 焦凍が泣いてたら私も泣きたくなっちゃうなー!」
場の空気に耐えられなくて、底抜けに明るい声を出す。
「すまない……」
「あはは、冗談冗談!」
口ではそう言いながら、目元が熱いのはなぜなのだろう。ぽろぽろとあふれる涙を手の甲でぬぐう。
「水火……」
「……ごめんね。二人の前では笑っていたいのに」
うつむくと、背中に感触を覚えた。冬美さんが、背中をさすってくれていた。
「いいんだよ。いっぱい泣いて、つらかった気持ちを消化していこう」
「はい……」
焦凍がティッシュを差し出してくれる。涙を拭くと、それがさらに涙を呼び、私は嗚咽交じりに泣いていた。
「あの、冬美さん」
「なに?」
「プレゼントのハンカチ渡してくれて、ありがとうございます」
頭を下げる。冬美さんの顔を見ると、一瞬ぽかんとして、あー、あれね、と微笑んだ。
「私が二人のためにできることはそれしかなかったからね。ほんのちょっとだけど、二人の仲を繋ぎ止められていたのならうれしいな」
焦凍に渡したハンカチのことだ。あのときは、最後のプレゼント。今では、最初のプレゼント。体育祭で大切に扱ってくれているところを見て、とても嬉しかった。
「焦凍、渡したときすごく泣いてたよね……」
冬美さんが彼を見る。焦凍は少しの間ののち、口を開く。
「水火に会いたいと話したら、『お前の歩む道にあの小娘はいらん』と怒鳴った親父の顔は……覚えている。それから、水火の話を俺からすることはなくなった」
そう言って、机に視線を落とした。
あの人にとっては、理想の道。言われた側は、その道を歩む側は、どんな気持ちを抱いていたのだろう。
私がいなかった十年間、彼は、どういった感情で日々を過ごしていたのだろう。空き教室で抱きしめられたあの日の体温を、力の強さを、震えた声を、未だに覚えている。
「ずっと会えないと思っていた。一生だな……だから」
私を見つめる彼の目は、安堵にうるんでいる。
「こうして会えて、話せて、本当に嬉しい」
焦凍は鼻をすすって、涙をぬぐった。
「……私も、嬉しいよ。もう、だめなんじゃないかって思ってたの」
伝えると、彼は私を見て、目を赤くしたままゆっくりと口元をゆるませた。しんみりした沈黙が漂う。
「あー! 焦凍が泣いてたら私も泣きたくなっちゃうなー!」
場の空気に耐えられなくて、底抜けに明るい声を出す。
「すまない……」
「あはは、冗談冗談!」
口ではそう言いながら、目元が熱いのはなぜなのだろう。ぽろぽろとあふれる涙を手の甲でぬぐう。
「水火……」
「……ごめんね。二人の前では笑っていたいのに」
うつむくと、背中に感触を覚えた。冬美さんが、背中をさすってくれていた。
「いいんだよ。いっぱい泣いて、つらかった気持ちを消化していこう」
「はい……」
焦凍がティッシュを差し出してくれる。涙を拭くと、それがさらに涙を呼び、私は嗚咽交じりに泣いていた。