夏休み
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十年ぶりに轟家に入ると、家の造りは変わっていなかった。相変わらず玄関がとても広い。スニーカーをそろえて、家に上がる。慣れ親しんだようで、慣れていない、他人の家。
「あの、夏雄さんは……」
「夏兄は……その」
焦凍が靴を脱ぎながら答える。
「一応、水火が来ると連絡はしたんだが、返信がなかったんだ。だから今日は来ない」
焦凍は申し訳なさそうに下を向いた。
「そっか。夏雄さんも、いろいろあるもんね」
言葉をかけると、焦凍は顔を上げて「……そうだな」と小さくつぶやいた。
いつもの部屋に通してもらう。畳の部屋は家にないから、新鮮だ。床に座ると、体から力が抜けていく感じがして、クーラーで冷えた畳に体を預けたくなる。
「お茶持ってくるね」
「俺がやる。冬姉はもっと水火と話した方がいい」
腰を上げた冬美さんに言うやいなや、焦凍はキッチンへ足早に向かっていった。
「三人分よろしくねー」
弟の背中に声をかける冬美さん。
「ありがとうございます、その、わざわざ……」
「まぁまぁ! いっぱいお話しようよ」
微笑みかけてくれる冬美さんは、いつもの冬美さんで。私は安堵のため息をつく。
「水火ちゃん」
「はい」
「焦凍とは、どうなの?」
「どう、って……」
「ふふ」
にやけるその顔に、彼女がなにを言わんとしているかを察した私は、ものすごい勢いで顔に熱が上るのを感じた。
「あ、あ、その……! えっと! うあ、うああ……」
「あっはっは! その調子は当たりだね! なんとなくそんな気がしたんだよね」
「うー……でも、私。焦凍にはもっといい人がいるんじゃないかって、思うんです」
「そうなの? でもね水火ちゃん、私が思うに、焦凍は……」
その言葉の先を聞こうと、耳を澄ませる。
「持ってきたぞ」
「ぎゃー!」
両手で顔を覆う。
「な、なんだ……どうした、水火」
「あはは、ごめんごめん。今、ちょっとね。ねー?」
顔が真っ赤になっていることを隠したまま、動けなくなってしまった。冬美さんに返答できない。
両手をそーっとそーっと外すと、急須と湯のみの乗ったお盆を置いた焦凍が目を丸くした。
「熱か?」
「デジャヴ!」
顔が赤くなっていたようだ。頬に手を添えると、確かに熱を持っていた。
冬美さんが急須からお茶を注いでくれる。
「まぁまぁ、二人ともー。お茶飲んで落ち着いて!」
「話題提供は冬美さんじゃないですかー!」
むぅ、と小さく拗ねながら、湯呑を手にする。なんだか香りがいい。一口飲むと、日本茶のほっこりとした温かさが、熱くなった体をリラックスさせてくれるようだった。
「とてもおいしいです。焦凍、どこのお店のなの?」
尋ねると、焦凍はあるお茶専門店の名前を口にした。そのお店は老舗で、かなり高級なお茶の商品を展開していることで有名なところだった。つい最近、アイスのメーカーとコラボがあったほどである。
私の家では手が出ないお茶だ。高級なものを出してくれたということに、言葉が出てこなくなる。
「いいのいいの。大切ないとこなんだから」
にこやかな冬美さん。
「気にしなくていいぞ、水火」
「焦凍……」
「お中元でたくさんもらってるから、余ってるんだ」
さすがだ。炎司さん宛に届いたものなのだろう。
「帰りに渡そうか?」
「い、いや……申し訳ないです」
「本当に飲み切れないからさ、もらってってよ。水火ちゃんお願い!」
「わ、わかりました」
冬美さんのお願いに頷くと、「あとで持ってくる」と焦凍。ラッキー。帰ったらお父さんと飲もう。
「あの、夏雄さんは……」
「夏兄は……その」
焦凍が靴を脱ぎながら答える。
「一応、水火が来ると連絡はしたんだが、返信がなかったんだ。だから今日は来ない」
焦凍は申し訳なさそうに下を向いた。
「そっか。夏雄さんも、いろいろあるもんね」
言葉をかけると、焦凍は顔を上げて「……そうだな」と小さくつぶやいた。
いつもの部屋に通してもらう。畳の部屋は家にないから、新鮮だ。床に座ると、体から力が抜けていく感じがして、クーラーで冷えた畳に体を預けたくなる。
「お茶持ってくるね」
「俺がやる。冬姉はもっと水火と話した方がいい」
腰を上げた冬美さんに言うやいなや、焦凍はキッチンへ足早に向かっていった。
「三人分よろしくねー」
弟の背中に声をかける冬美さん。
「ありがとうございます、その、わざわざ……」
「まぁまぁ! いっぱいお話しようよ」
微笑みかけてくれる冬美さんは、いつもの冬美さんで。私は安堵のため息をつく。
「水火ちゃん」
「はい」
「焦凍とは、どうなの?」
「どう、って……」
「ふふ」
にやけるその顔に、彼女がなにを言わんとしているかを察した私は、ものすごい勢いで顔に熱が上るのを感じた。
「あ、あ、その……! えっと! うあ、うああ……」
「あっはっは! その調子は当たりだね! なんとなくそんな気がしたんだよね」
「うー……でも、私。焦凍にはもっといい人がいるんじゃないかって、思うんです」
「そうなの? でもね水火ちゃん、私が思うに、焦凍は……」
その言葉の先を聞こうと、耳を澄ませる。
「持ってきたぞ」
「ぎゃー!」
両手で顔を覆う。
「な、なんだ……どうした、水火」
「あはは、ごめんごめん。今、ちょっとね。ねー?」
顔が真っ赤になっていることを隠したまま、動けなくなってしまった。冬美さんに返答できない。
両手をそーっとそーっと外すと、急須と湯のみの乗ったお盆を置いた焦凍が目を丸くした。
「熱か?」
「デジャヴ!」
顔が赤くなっていたようだ。頬に手を添えると、確かに熱を持っていた。
冬美さんが急須からお茶を注いでくれる。
「まぁまぁ、二人ともー。お茶飲んで落ち着いて!」
「話題提供は冬美さんじゃないですかー!」
むぅ、と小さく拗ねながら、湯呑を手にする。なんだか香りがいい。一口飲むと、日本茶のほっこりとした温かさが、熱くなった体をリラックスさせてくれるようだった。
「とてもおいしいです。焦凍、どこのお店のなの?」
尋ねると、焦凍はあるお茶専門店の名前を口にした。そのお店は老舗で、かなり高級なお茶の商品を展開していることで有名なところだった。つい最近、アイスのメーカーとコラボがあったほどである。
私の家では手が出ないお茶だ。高級なものを出してくれたということに、言葉が出てこなくなる。
「いいのいいの。大切ないとこなんだから」
にこやかな冬美さん。
「気にしなくていいぞ、水火」
「焦凍……」
「お中元でたくさんもらってるから、余ってるんだ」
さすがだ。炎司さん宛に届いたものなのだろう。
「帰りに渡そうか?」
「い、いや……申し訳ないです」
「本当に飲み切れないからさ、もらってってよ。水火ちゃんお願い!」
「わ、わかりました」
冬美さんのお願いに頷くと、「あとで持ってくる」と焦凍。ラッキー。帰ったらお父さんと飲もう。