夏休み
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ドアを開けると、見慣れた玄関が私を出迎える。手を洗い、リビングに向かうと、休みのお父さんが少し驚いた顔をして私を見ていた。
「おかえり。今日は早かったな」
「報道の人に捕まって大変だったよ……」
「……報道?」
私は説明をする。なぜか雄英の前に報道関係者がたくさんいたこと。彼らのせいで質問に行けなかったこと。思い出して少し恐怖を感じる。あれだけたくさんの人に注目されるのは、あまりにも非日常的体験すぎる。
「お疲れ、水火……」
話し終わると、お父さんはそう言って苦笑いした。
「暑かっただろうし、ゆっくり涼んでいきな。アイスも買ってきたから」
「わかった。ありがとう」
冷凍庫に向かい、ミルクのアイスバーを見つける。透明な包装を破り、口にくわえる。キンと冷えた氷塊は、ほてった体を冷ましてくれる。
ダイニングチェアに座りながら英単語のアプリを開いていると、そういえば渦中の彼と連絡を取っていなかったことを思い出した。
「お父さん、ちょっと電話してもいい?」
「いいよ」
お気に入りに登録しているトーク画面から、発信する。すぐに相手が出た。
『水火、なにか用か』
「あ、その……」
なんと聞けばよいのだろう。私は少し迷って、しかし見聞きしたことを尋ねることにした。
「あのね。さっき、雄英の前に報道の人がたくさんいてさ。そこで聞いちゃったんだよね、ヒーロー科一年の合宿で襲撃があったって……」
お父さんがちら、と私を心配そうに見る。少しの間ののち、『そうだな』と声が返ってきた。
「それで、大丈夫なのかなって」
『ああ、俺は大丈夫だ。気にしないでくれ』
「俺は」という言い方に、私は若干の不安を覚えた。ということは、もしかしたら。
「……みんなは?」
『みんな……』
「ヒーロー科の、みんなは?」
『……』
問いただしてみると、焦凍は少し黙った。
『怪我してるやつもいる。だが、病院で治療を受けているから、大丈夫だ』
「……」
合宿先の病院の方が、適切な処置を行ってくださっているのだろう。それなら安心だ。
もしも、と考えがよぎる。もしも、私がその治療に参加できたなら。少しでも、彼らを早く快方に向かわせるお手伝いができたなら。
遠くの場所にいて、一人のうのうと報道関係者に捕まり、なにもできない自分に無力感を感じる。
『水火? 大丈夫か?』
黙ったままだった私に焦凍が心配の声をかけてくれる。
「大丈夫。ごめんね、忙しいところ」
『こっちこそ心配かけてすまない。また、今度会おう』
「うん」
通話の切れたスマホの画面を見つめる。なんてことのない普通のトーク画面。しかし、相手は今襲撃を受けて、友達は怪我をしている。穏やかな日常に、魔の手が忍び寄ってきている。そんな予感さえ感じさせた。
「おかえり。今日は早かったな」
「報道の人に捕まって大変だったよ……」
「……報道?」
私は説明をする。なぜか雄英の前に報道関係者がたくさんいたこと。彼らのせいで質問に行けなかったこと。思い出して少し恐怖を感じる。あれだけたくさんの人に注目されるのは、あまりにも非日常的体験すぎる。
「お疲れ、水火……」
話し終わると、お父さんはそう言って苦笑いした。
「暑かっただろうし、ゆっくり涼んでいきな。アイスも買ってきたから」
「わかった。ありがとう」
冷凍庫に向かい、ミルクのアイスバーを見つける。透明な包装を破り、口にくわえる。キンと冷えた氷塊は、ほてった体を冷ましてくれる。
ダイニングチェアに座りながら英単語のアプリを開いていると、そういえば渦中の彼と連絡を取っていなかったことを思い出した。
「お父さん、ちょっと電話してもいい?」
「いいよ」
お気に入りに登録しているトーク画面から、発信する。すぐに相手が出た。
『水火、なにか用か』
「あ、その……」
なんと聞けばよいのだろう。私は少し迷って、しかし見聞きしたことを尋ねることにした。
「あのね。さっき、雄英の前に報道の人がたくさんいてさ。そこで聞いちゃったんだよね、ヒーロー科一年の合宿で襲撃があったって……」
お父さんがちら、と私を心配そうに見る。少しの間ののち、『そうだな』と声が返ってきた。
「それで、大丈夫なのかなって」
『ああ、俺は大丈夫だ。気にしないでくれ』
「俺は」という言い方に、私は若干の不安を覚えた。ということは、もしかしたら。
「……みんなは?」
『みんな……』
「ヒーロー科の、みんなは?」
『……』
問いただしてみると、焦凍は少し黙った。
『怪我してるやつもいる。だが、病院で治療を受けているから、大丈夫だ』
「……」
合宿先の病院の方が、適切な処置を行ってくださっているのだろう。それなら安心だ。
もしも、と考えがよぎる。もしも、私がその治療に参加できたなら。少しでも、彼らを早く快方に向かわせるお手伝いができたなら。
遠くの場所にいて、一人のうのうと報道関係者に捕まり、なにもできない自分に無力感を感じる。
『水火? 大丈夫か?』
黙ったままだった私に焦凍が心配の声をかけてくれる。
「大丈夫。ごめんね、忙しいところ」
『こっちこそ心配かけてすまない。また、今度会おう』
「うん」
通話の切れたスマホの画面を見つめる。なんてことのない普通のトーク画面。しかし、相手は今襲撃を受けて、友達は怪我をしている。穏やかな日常に、魔の手が忍び寄ってきている。そんな予感さえ感じさせた。