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「うおっ、めずらし……」
俺は思わず声を上げてしまった。がやがや騒がしい食堂の中で、その発見は本当に珍しいことだった。
「なんだ、上鳴」
椅子に座った轟は俺の顔を見て、いつもの無表情で返事をする。
「蕎麦以外のもの食べてるとこ、初めて見たかも……」
「……ああ、珍しいかもな」
そう言って彼は、その昼食のうちの一つを手に取り、二つに割る。中から覗くのは黄金色のカスタードクリーム。
「クリームパン、好きなのか?」
尋ねながら彼の隣に座る。昼食のトレーが机にあたって軽い音を立てる。
「……別に」
「じゃあ、なんでだ?」
俺の素朴な質問に、轟はパンに視線を落としながら答える。
「……いとこが、おすすめだって言っていたから」
いとこ。あの二色のミディアムヘア―は、四月のうちはよく見ていた。最近見ないが、勉強にでも励んでいるのだろうか。確か学年一位だとか、なんとか聞いた気がするし。
轟と交流が続いているのならよいことだと、俺の口角は自然と上がる。
「……おいしい」
彼は味わうように一口一口、大事そうに食べていく。俺も自分の昼飯を食べる。
「あの子とは、うまくやってんのか」
「ああ。いろんな話をしている」
轟は話題の一例を教えてくれた。勉強のこと、ごはんのこと、ニュースのこと……意外と庶民的な話をしているようだ。積極的に話をする方ではない彼にとって、あの子は口を気楽に開けるくらい安心できる存在なのだろうか。
彼女の話をしているときの轟は、少しだけ声の調子が上がっていた。それはめったに見られないことで、俺は彼の喜びようを微笑ましく思った。
「なぁ、上鳴」
食事の手を止めて、尋ねられる。
「勉強の邪魔にならない程度ってどのくらいなんだろうな……」
「それは難しいな……俺は勉強時間の確保とか考えたことないし、質問相手を間違ってるかもな……はは」
「……すまなかった」
苦笑いに謝罪で返された。
「でも、そこが轟のやさしさってやつだよな!」
「やさしさ?」
「おう。そうやって相手のこと、考えてあげてるってことはさ、すごくいいところだと思うんだよなー」
純粋な褒め言葉だ。俺なら多分下心全開にしてしまうところを、彼はそんなことをせず相手のことを大切に思いやっている。そこが、すごいと思うのだ。
「……そう思ってくれてるなら、いいんだがな」
クリームパンの最後の一口を食べて、クロワッサンに手を伸ばす。その目が、少し寂しさを宿しているように見えた。
「轟?」
「……なんでもない。話、付き合ってくれてありがとうな」
話を切り上げられてしまった。少し違和感を感じたが、俺は特に深堀りするようなことはしなかった。
「なんかあったら、いつでも言えよ」
「ああ」
触れられたくない悩みに、赤の他人である俺が介入したところで余計にこじれてしまうかもしれない。いつか彼から相談が来たら、対応しよう。
彼の食べている様子を見ていたら、いとこのおすすめだというパンが、少し気になってきた。ふかふかもふもふ、時にはさくさくのパンを味わいたくなる。
「今度、俺もパンにしよっかな」
「……そうしてほしい。いとこからのおすすめのバトンを繋げたい」
「おいしかったらそのバトン、他のやつにも繋げるわ」
「ああ」
数日後、A組の間で食堂のパンがプチブームになったそうだ。
俺は思わず声を上げてしまった。がやがや騒がしい食堂の中で、その発見は本当に珍しいことだった。
「なんだ、上鳴」
椅子に座った轟は俺の顔を見て、いつもの無表情で返事をする。
「蕎麦以外のもの食べてるとこ、初めて見たかも……」
「……ああ、珍しいかもな」
そう言って彼は、その昼食のうちの一つを手に取り、二つに割る。中から覗くのは黄金色のカスタードクリーム。
「クリームパン、好きなのか?」
尋ねながら彼の隣に座る。昼食のトレーが机にあたって軽い音を立てる。
「……別に」
「じゃあ、なんでだ?」
俺の素朴な質問に、轟はパンに視線を落としながら答える。
「……いとこが、おすすめだって言っていたから」
いとこ。あの二色のミディアムヘア―は、四月のうちはよく見ていた。最近見ないが、勉強にでも励んでいるのだろうか。確か学年一位だとか、なんとか聞いた気がするし。
轟と交流が続いているのならよいことだと、俺の口角は自然と上がる。
「……おいしい」
彼は味わうように一口一口、大事そうに食べていく。俺も自分の昼飯を食べる。
「あの子とは、うまくやってんのか」
「ああ。いろんな話をしている」
轟は話題の一例を教えてくれた。勉強のこと、ごはんのこと、ニュースのこと……意外と庶民的な話をしているようだ。積極的に話をする方ではない彼にとって、あの子は口を気楽に開けるくらい安心できる存在なのだろうか。
彼女の話をしているときの轟は、少しだけ声の調子が上がっていた。それはめったに見られないことで、俺は彼の喜びようを微笑ましく思った。
「なぁ、上鳴」
食事の手を止めて、尋ねられる。
「勉強の邪魔にならない程度ってどのくらいなんだろうな……」
「それは難しいな……俺は勉強時間の確保とか考えたことないし、質問相手を間違ってるかもな……はは」
「……すまなかった」
苦笑いに謝罪で返された。
「でも、そこが轟のやさしさってやつだよな!」
「やさしさ?」
「おう。そうやって相手のこと、考えてあげてるってことはさ、すごくいいところだと思うんだよなー」
純粋な褒め言葉だ。俺なら多分下心全開にしてしまうところを、彼はそんなことをせず相手のことを大切に思いやっている。そこが、すごいと思うのだ。
「……そう思ってくれてるなら、いいんだがな」
クリームパンの最後の一口を食べて、クロワッサンに手を伸ばす。その目が、少し寂しさを宿しているように見えた。
「轟?」
「……なんでもない。話、付き合ってくれてありがとうな」
話を切り上げられてしまった。少し違和感を感じたが、俺は特に深堀りするようなことはしなかった。
「なんかあったら、いつでも言えよ」
「ああ」
触れられたくない悩みに、赤の他人である俺が介入したところで余計にこじれてしまうかもしれない。いつか彼から相談が来たら、対応しよう。
彼の食べている様子を見ていたら、いとこのおすすめだというパンが、少し気になってきた。ふかふかもふもふ、時にはさくさくのパンを味わいたくなる。
「今度、俺もパンにしよっかな」
「……そうしてほしい。いとこからのおすすめのバトンを繋げたい」
「おいしかったらそのバトン、他のやつにも繋げるわ」
「ああ」
数日後、A組の間で食堂のパンがプチブームになったそうだ。
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