期末試験
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返却された紙の束。印刷された文字や数字に、シャーペンの解答。その上から赤いペンで結果が書かれている。
三桁の数字。三桁の数字。三桁の数字……花丸。
将来使うであろう理系科目もどれも満点で、私は安堵のため息をついた。
努力、したからかな。百ちゃんたちと一緒に勉強したおかげで、学びに対するモチベーションを取り戻せたというのも大きい。みんなと勉強するのって、あんなに楽しいんだ。
口角が自然と上がっていた。いや、こんなところで満足していてはいけない。私は、もっともっと頑張らなくちゃいけないんだ。
チャイムが鳴る。お昼の時間だ。
私はカバンのファイルに慎重にテストをしまい、食堂へ向かおうとする。
「轟、何点だった?」
立ち上がったところでクラスの男子生徒に聞かれた。ニヤニヤした目つきに、私は嫌な予感がした。
「教えてくれよ~」
彼は私の前から動きそうにない。言わないとどいてくれないだろう。私は視線をそらしながら渋々口を開く。
「……満点、だけど」
「すっげー! さっすが座学の……」
「やめろ」
制止の声。その主は心操くんだった。その瞳はからかいの主をじっと見つめている。
「困ってるだろ。冷やかすくらいなら褒めておけ」
「……すいませんでした」
「謝るなら轟に」
心操くんの視線がちらっと私に向けられる。
「ごめん、轟。お前の点数がうらやましかったんだ……」
「……い、いいよ。私も毎回満点取ってる人いたら同じ考えになると思うから」
私があはは、と苦笑いしてみせると、彼はもう一度「ごめん」と謝った。
「もう、いいよ。次からやめてほしいな」
できるだけ優しく伝えると、彼は「バケモノじゃなくて天使でしたか……!」と謎の言葉を残して去っていった。
「心操くん、ありがとう」
感謝を伝えると、彼はニヤッと笑った。私も微笑みを返す。
「水火ちゃん! お昼一緒に行かない?」
C組の友達が声をかけてくれていた。
「うん!」
「ねぇ、テストどうだった?」
「まー、いい感じ、かな」
「さっすが水火ちゃん!」
一緒に同じ方向に歩く。廊下には、テストの結果で喜んだり落ち込んだりしている生徒の姿が見えた。悲喜こもごも。そんな言葉が合っていた。
食堂に着く。どのメニューにも列ができていて、席は結構埋まっている。いつもここから空いている場所を探すのだ。
「なに食べようかな」
「水火ちゃんはいつもパンでしょー?」
「あ……言われてみれば確かに。今日の焼きたてパンはなにかな……」
「水火」
低い声に振り返ると、見知った顔が後ろにいた。
「焦凍!」
「あぁ……」
彼は友達に視線を一瞬移してから言う。
「見かけたから声をかけただけだ。邪魔して悪かったな」
焦凍はいつもの無表情で、その場を去ろうとする。
「轟くん! ちょっと待って!」
友達の声かけが彼の動きを止めた。彼女が彼に声をかけるところは初めて見た。焦凍が振り返って尋ねる。
「何か用か」
「せっかくなら二人で食べてよ」
「えっ」
「だが……」
「いいじゃん! 私とはまた明日も会えるから! ね、たまにはいとこ同士で食べてもいいんじゃない? 最近一緒にいなかったみたいだし」
そうなのだ。最初のうちは話題も尽きなかったが、何日か一緒に帰っていくうちに無言になってしまう日が続き、私の方から切り出したのだ。「私だけじゃなくて、A組の友達と話した方がいいんじゃないかな」って。
今思えば、なんだか突き放してしまったかもしれない。気まずさから生じた独りよがりな行動で、相手のことを考えていなかった。私は下を向く。
「確かにな。水火さえよければ、そうさせてほしい」
顔を上げる。焦凍はまだ、私と、話したいんだ。
「水火」
焦凍がこちらに向き直る。
「よかったら、最近のことでも話さないか?」
相変わらずの無表情に、一体どんな感情が込められているのか、私にはわからない。でも、彼が私と話したがっていることは確かだ。友達だって譲ってくれてるし、断るわけにもいかない。
「うん」
頷くと、友達は「じゃ、楽しんでね!」と列に並んでいった。
三桁の数字。三桁の数字。三桁の数字……花丸。
将来使うであろう理系科目もどれも満点で、私は安堵のため息をついた。
努力、したからかな。百ちゃんたちと一緒に勉強したおかげで、学びに対するモチベーションを取り戻せたというのも大きい。みんなと勉強するのって、あんなに楽しいんだ。
口角が自然と上がっていた。いや、こんなところで満足していてはいけない。私は、もっともっと頑張らなくちゃいけないんだ。
チャイムが鳴る。お昼の時間だ。
私はカバンのファイルに慎重にテストをしまい、食堂へ向かおうとする。
「轟、何点だった?」
立ち上がったところでクラスの男子生徒に聞かれた。ニヤニヤした目つきに、私は嫌な予感がした。
「教えてくれよ~」
彼は私の前から動きそうにない。言わないとどいてくれないだろう。私は視線をそらしながら渋々口を開く。
「……満点、だけど」
「すっげー! さっすが座学の……」
「やめろ」
制止の声。その主は心操くんだった。その瞳はからかいの主をじっと見つめている。
「困ってるだろ。冷やかすくらいなら褒めておけ」
「……すいませんでした」
「謝るなら轟に」
心操くんの視線がちらっと私に向けられる。
「ごめん、轟。お前の点数がうらやましかったんだ……」
「……い、いいよ。私も毎回満点取ってる人いたら同じ考えになると思うから」
私があはは、と苦笑いしてみせると、彼はもう一度「ごめん」と謝った。
「もう、いいよ。次からやめてほしいな」
できるだけ優しく伝えると、彼は「バケモノじゃなくて天使でしたか……!」と謎の言葉を残して去っていった。
「心操くん、ありがとう」
感謝を伝えると、彼はニヤッと笑った。私も微笑みを返す。
「水火ちゃん! お昼一緒に行かない?」
C組の友達が声をかけてくれていた。
「うん!」
「ねぇ、テストどうだった?」
「まー、いい感じ、かな」
「さっすが水火ちゃん!」
一緒に同じ方向に歩く。廊下には、テストの結果で喜んだり落ち込んだりしている生徒の姿が見えた。悲喜こもごも。そんな言葉が合っていた。
食堂に着く。どのメニューにも列ができていて、席は結構埋まっている。いつもここから空いている場所を探すのだ。
「なに食べようかな」
「水火ちゃんはいつもパンでしょー?」
「あ……言われてみれば確かに。今日の焼きたてパンはなにかな……」
「水火」
低い声に振り返ると、見知った顔が後ろにいた。
「焦凍!」
「あぁ……」
彼は友達に視線を一瞬移してから言う。
「見かけたから声をかけただけだ。邪魔して悪かったな」
焦凍はいつもの無表情で、その場を去ろうとする。
「轟くん! ちょっと待って!」
友達の声かけが彼の動きを止めた。彼女が彼に声をかけるところは初めて見た。焦凍が振り返って尋ねる。
「何か用か」
「せっかくなら二人で食べてよ」
「えっ」
「だが……」
「いいじゃん! 私とはまた明日も会えるから! ね、たまにはいとこ同士で食べてもいいんじゃない? 最近一緒にいなかったみたいだし」
そうなのだ。最初のうちは話題も尽きなかったが、何日か一緒に帰っていくうちに無言になってしまう日が続き、私の方から切り出したのだ。「私だけじゃなくて、A組の友達と話した方がいいんじゃないかな」って。
今思えば、なんだか突き放してしまったかもしれない。気まずさから生じた独りよがりな行動で、相手のことを考えていなかった。私は下を向く。
「確かにな。水火さえよければ、そうさせてほしい」
顔を上げる。焦凍はまだ、私と、話したいんだ。
「水火」
焦凍がこちらに向き直る。
「よかったら、最近のことでも話さないか?」
相変わらずの無表情に、一体どんな感情が込められているのか、私にはわからない。でも、彼が私と話したがっていることは確かだ。友達だって譲ってくれてるし、断るわけにもいかない。
「うん」
頷くと、友達は「じゃ、楽しんでね!」と列に並んでいった。