期末試験
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勉強道具を片して、机の上にソーサー付きの紅茶のカップとクッキーの乗ったお皿が置かれる。そのティーカップとお皿はセットになっている食器のようだ。
春のパン祭りでもれなくもらえるものや、家でよく見るようなシンプルなものとは違い、豪華な装飾が施されている。かわいらしい花のプリントは明らかに今まで触ったことのないもので、その美しさに私は見惚れた。
「ハロッズかウエッジウッドで迷ったのですが、ハロッズにしましたわ!」
百ちゃんは嬉しそうだ。みんなはクッキーや紅茶に手を伸ばしている。言葉の意味がよくわからなくて、私は机の下でこっそりとスマホで調べてみる。
検索欄に「はろっず」と入れると、どうやらイギリスの百貨店の名前だということがわかった。さらに「ハロッズ 紅茶」で検索をかけて商品を見てみる。
ティーバック10個で1200円するらしい。
ってことは一杯120円?
「えっ」
いつも飲んでるスーパーのは50個で400円のだから……? 一個あたりはち……8円……?
「15倍……!?」
出てしまった声に周りを見渡すと、みんなはおやつに夢中のようで気づいていないようだった。「おいし~」とか「うめ~」とか幸せそうな声が聞こえる。しかし、静かに漏れた驚きは百ちゃんの耳に届いてしまっていたらしい。
「なにかありましたか? ほら、水火さんもお召し上がりになって」
「う、うん……」
百ちゃんは微笑んでいる。微笑みは純粋なもので、ケチくさい私の思考に気づいてはいなさそうだった。
一回深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、手つかずのおやつに目を向ける。おそらくこれも高価なのだろう、ティーカップの細い持ち手を落とさぬようしっかりと持ち、恐る恐る口に運ぶ。
飲む前にまず、香りがいいことに気づく。フレーバーティーではなく、シンプルに茶葉の香りがいい。ほっと体から力が抜ける。温かい液体を一口飲むと、ふんわりと優しさに包まれた気持ちになった。
「おいしい……百ちゃん、これ、すごくおいしい!」
「あら! それはよかったですわ! クッキーもぜひいただいてくださいな」
言われた通りにクッキーを一口かじる。サクサクとした食感に、おそらく外国のものだというのにきつすぎない甘さ。シンプルでおいしいバタークッキーだ。きっと百ちゃんが食べやすいものを選んでくれたのだろう。その気遣いに嬉しくなった。
「あー、もうなくなっちゃった!」
上鳴くんが私のお皿を見て「一枚くれよー」と言ってくる。「食べたいからだめー」と返すと彼は「ちぇー」と残念がった。
みんなは楽しそうに喋ったり、おやつを食べたりしている。談笑に、私の頬もゆるんでいく。
ティーカップを手に持つ。
もし、この場に焦凍がいたら。
笑っていたかな。大きな家だから、驚くかな。いや、焦凍の家もテイストは違えど大きいし、もしかしたらあまり驚かないのかもしれない。このティーカップも、高そうな紅茶も……。
私ははっとなる。
今、焦凍のこと考えてた? なんで?
赤茶色の水面が動揺に揺れている。
「皆さん! そろそろお勉強を再開いたしませんこと? 後半戦も頑張りましょう!」
百ちゃんの声に紅茶を飲み干して、私は片づけを手伝おうと提案する。食器の重なる音に、さっきの疑問はかき消されていく。
春のパン祭りでもれなくもらえるものや、家でよく見るようなシンプルなものとは違い、豪華な装飾が施されている。かわいらしい花のプリントは明らかに今まで触ったことのないもので、その美しさに私は見惚れた。
「ハロッズかウエッジウッドで迷ったのですが、ハロッズにしましたわ!」
百ちゃんは嬉しそうだ。みんなはクッキーや紅茶に手を伸ばしている。言葉の意味がよくわからなくて、私は机の下でこっそりとスマホで調べてみる。
検索欄に「はろっず」と入れると、どうやらイギリスの百貨店の名前だということがわかった。さらに「ハロッズ 紅茶」で検索をかけて商品を見てみる。
ティーバック10個で1200円するらしい。
ってことは一杯120円?
「えっ」
いつも飲んでるスーパーのは50個で400円のだから……? 一個あたりはち……8円……?
「15倍……!?」
出てしまった声に周りを見渡すと、みんなはおやつに夢中のようで気づいていないようだった。「おいし~」とか「うめ~」とか幸せそうな声が聞こえる。しかし、静かに漏れた驚きは百ちゃんの耳に届いてしまっていたらしい。
「なにかありましたか? ほら、水火さんもお召し上がりになって」
「う、うん……」
百ちゃんは微笑んでいる。微笑みは純粋なもので、ケチくさい私の思考に気づいてはいなさそうだった。
一回深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、手つかずのおやつに目を向ける。おそらくこれも高価なのだろう、ティーカップの細い持ち手を落とさぬようしっかりと持ち、恐る恐る口に運ぶ。
飲む前にまず、香りがいいことに気づく。フレーバーティーではなく、シンプルに茶葉の香りがいい。ほっと体から力が抜ける。温かい液体を一口飲むと、ふんわりと優しさに包まれた気持ちになった。
「おいしい……百ちゃん、これ、すごくおいしい!」
「あら! それはよかったですわ! クッキーもぜひいただいてくださいな」
言われた通りにクッキーを一口かじる。サクサクとした食感に、おそらく外国のものだというのにきつすぎない甘さ。シンプルでおいしいバタークッキーだ。きっと百ちゃんが食べやすいものを選んでくれたのだろう。その気遣いに嬉しくなった。
「あー、もうなくなっちゃった!」
上鳴くんが私のお皿を見て「一枚くれよー」と言ってくる。「食べたいからだめー」と返すと彼は「ちぇー」と残念がった。
みんなは楽しそうに喋ったり、おやつを食べたりしている。談笑に、私の頬もゆるんでいく。
ティーカップを手に持つ。
もし、この場に焦凍がいたら。
笑っていたかな。大きな家だから、驚くかな。いや、焦凍の家もテイストは違えど大きいし、もしかしたらあまり驚かないのかもしれない。このティーカップも、高そうな紅茶も……。
私ははっとなる。
今、焦凍のこと考えてた? なんで?
赤茶色の水面が動揺に揺れている。
「皆さん! そろそろお勉強を再開いたしませんこと? 後半戦も頑張りましょう!」
百ちゃんの声に紅茶を飲み干して、私は片づけを手伝おうと提案する。食器の重なる音に、さっきの疑問はかき消されていく。