期末試験

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 先を行く百ちゃんの足が止まる。どうやら着いた……らしい。

「こちらですわ!」

 百ちゃんが手で指し示す先には、豪華な家があった。装飾の施された門、広そうな庭、教科書で見た建築様式で建てられた大きな家。うちの一軒家とは似ても似つかないサイズだった。

 焦凍の家も大きいけど、百ちゃんの家は洋風でまた違う雰囲気がある。中も広いのかな。天井が高かったりするのかな。他人の家って冒険してるみたいでおもしろいから好きだ。わくわくしながらみんなの足あとを追いかける。

 百ちゃんは門の鍵を開けて中へ入っていく。

「まずは講堂にご案内いたします」

「講堂……?」

 私の疑問に、百ちゃんは「勉強スペースにちょうどいいと思って、使用許可をいただいていますわ!」とにこにこ笑顔で話す。

 講堂がある家に住んでる百ちゃんスゴイ。うちには講堂どころか応接室もない。あるのは玄関とリビングと……悲しくなるからやめよう。

 家のドアまで辿り着く。これまた大きく、重たそうなものだ。百ちゃんに続いて家の中に入ると、空気がすでに違うような気がした。他人の家の空気だ。わくわくの気持ちが引っ込んで、少し緊張してしまう。

 広い玄関から少し歩くと、そこには大きな部屋があった。百ちゃんがその部屋に入っていく。ここが講堂らしい。確かに複数人で勉強できそうな大きなテーブルと椅子がある。天井が高く、私はつい見上げてしまう。そこにはキラキラのシャンデリア。――シャンデリア?

水火さん」

 百ちゃんが話しかける。私は普段見ない豪華なものについ向け続けてしまっていた視線を、彼女に向ける。

「わたくし、文系の科目をメインで教えますわ。ですので理系科目を担当してくださらない?」

「いいよ! 私、むしろ理系目指してて勉強中だから……頑張るよ」

「あら、いいんですの? ありがとうございますわ!」

 感謝されて、口角が少し上がったのがわかった。やる気がじわじわと湧いてくる。

 各自席につく。百ちゃんの合図で、勉強会が始まった。



 理系科目をみんなに教える。今授業で学んでいるところがわからない、と困っている子が多かった。

 よく話を聞いてみると、基礎の部分が抜けていることがわかった。応用を捨てて公式の理解や練習問題の解説など、広く浅く教える形にした。

「ここに公式が当てはまるわけね? なるほど……ウチじゃ思いつかない発想だわ」

「そうそう! いい感じだよ、響香ちゃん! そんな感じで進めてみて」

「えへへ……ありがとう」

 たくさん褒めてあげると、彼らは嬉しそうに笑う。その笑顔が見れることが、嬉しかった。

 教えるって、こんなに楽しいんだ。

 そのかたわら、百ちゃんにも逆に教えてもらった。古文の助動詞ってよくわからなくなる。

「そういうときは、前後の文脈で考えてみるといいですわ。ただ形を見て判別するだけじゃなくって、全体の意味を考えてみるんですのよ」

 百ちゃんの解説はわかりやすく、さすがだなぁと感心した。その通りにすれば、すらすらと問題を解くことができた。
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