体育祭
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「嘘——! 嘘だよ、こんなことって……!」
私は液晶の前で絶望した。
いくつか並んだレクの種目。その中に、私が一番期待していた「パン食い競争」の文字は欠片も存在していなかった。なんなら「パン」の字もなかった。
視線を落とす。地面はどこまでも地面で、無機物が私を見つめ返している。
パンは一体どこにいってしまったのだろう。私を置いて宇宙のどこかへ家出してしまったのだろうか。先ほど食べたクロワッサンはパンではあるが、家出しているのならパンではないのか? もしかしてご飯だったのか? いや、あれは確かにクロワッサンであってご飯のはずは……。
「まぁまぁ、水火ちゃん落ち着いて。うちらの思い出ってきっとここだからさ、一緒に頑張っていこうよ!」
「うん……」
友達に励まされて、私は前を向く。
くるり、周りの様子を見てみるといろんな科の一年生が集まっていた。なぜかA組の女子はチアガールの格好してたけど……楽しそう。
しかし、その中に彼の姿はない。何度見渡しても見つからない。
「どうしたの?」
「いや、その」
「いとこの子のこと?」
「あ……!」
バレてた。「あー……」と目を逸らしながら声を出すと友達はふふ、と微笑んだ。
「最後の種目に出る生徒は参加自由なんだって。どこかで休んでるかもね」
「そうだったね。そっか……」
どうしよう。
きっと私たちの出番はレクだ。出たら思い出になる。
彼を置いていいのか? もしぐるぐると悩んでいたら?
「心配なら、ミッドナイト先生に聞いてみたら?」
鶴の一声。私は友達に感謝を伝えて先生の元へ歩いていく。
「あの、ミッドナイト先生」
「何かしら」
「あの、レクなんですけど、棄権したくて」
先生は「えっ?」と驚いた顔をした。
「どうして?」
「あー、その……いとこが、心配で」
「思い出はいいの?」
聞かれて、私は返答に困る。思い出。それは今まで体育祭や運動会で楽しい記憶がない私には甘美な響きだった。
「普通科の子たちの目玉ってレクだと思うの」
確かに、そうだろう。先生の言うことは正しい。
「それでも本当に……」
心配そうな顔をするミッドナイト先生。私は彼女の目を見てはっきりと答える。
「いいんです! それよりも彼を、助けてあげたいんです! きっと、悩んでるはずだから……!」
先生は少し考えて、
「優しくていいねぇ! 採用!」
と言って、鞭をピシャアン! としならせた。
私は液晶の前で絶望した。
いくつか並んだレクの種目。その中に、私が一番期待していた「パン食い競争」の文字は欠片も存在していなかった。なんなら「パン」の字もなかった。
視線を落とす。地面はどこまでも地面で、無機物が私を見つめ返している。
パンは一体どこにいってしまったのだろう。私を置いて宇宙のどこかへ家出してしまったのだろうか。先ほど食べたクロワッサンはパンではあるが、家出しているのならパンではないのか? もしかしてご飯だったのか? いや、あれは確かにクロワッサンであってご飯のはずは……。
「まぁまぁ、水火ちゃん落ち着いて。うちらの思い出ってきっとここだからさ、一緒に頑張っていこうよ!」
「うん……」
友達に励まされて、私は前を向く。
くるり、周りの様子を見てみるといろんな科の一年生が集まっていた。なぜかA組の女子はチアガールの格好してたけど……楽しそう。
しかし、その中に彼の姿はない。何度見渡しても見つからない。
「どうしたの?」
「いや、その」
「いとこの子のこと?」
「あ……!」
バレてた。「あー……」と目を逸らしながら声を出すと友達はふふ、と微笑んだ。
「最後の種目に出る生徒は参加自由なんだって。どこかで休んでるかもね」
「そうだったね。そっか……」
どうしよう。
きっと私たちの出番はレクだ。出たら思い出になる。
彼を置いていいのか? もしぐるぐると悩んでいたら?
「心配なら、ミッドナイト先生に聞いてみたら?」
鶴の一声。私は友達に感謝を伝えて先生の元へ歩いていく。
「あの、ミッドナイト先生」
「何かしら」
「あの、レクなんですけど、棄権したくて」
先生は「えっ?」と驚いた顔をした。
「どうして?」
「あー、その……いとこが、心配で」
「思い出はいいの?」
聞かれて、私は返答に困る。思い出。それは今まで体育祭や運動会で楽しい記憶がない私には甘美な響きだった。
「普通科の子たちの目玉ってレクだと思うの」
確かに、そうだろう。先生の言うことは正しい。
「それでも本当に……」
心配そうな顔をするミッドナイト先生。私は彼女の目を見てはっきりと答える。
「いいんです! それよりも彼を、助けてあげたいんです! きっと、悩んでるはずだから……!」
先生は少し考えて、
「優しくていいねぇ! 採用!」
と言って、鞭をピシャアン! としならせた。