体育祭
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選手宣誓で体育祭が始まったわけだけど……。
ちょっと怖かったな、爆豪くん。他のクラスの子たちからブーイング受けてたし。苦手なタイプかもしれない。
焦凍とぶつかってないといいけど。そんなことを考えたりしていた。
人が多い。
それは観客席もそうだが、生徒も同じだった。
なんでって、一年生全員がこの場にいるのだ。全員が、同じスタートラインに立とうとしているのだ。
第一種目は障害物競走。
運良く前につけたけど、始まったらこれ……まずいんじゃ……。
カウントダウンのランプが点灯する。みんなが静かになる。
これ、転ぶやつじゃない? 後ろの人に押されて転ぶやつじゃない?
3……。
いや、そんなことを考えている場合じゃない! 目の前のことに集中するんだ……。
2……。
「頑張れ」
そう言ってくれた焦凍の真剣な顔を思い出す。
1……。
一位にはなれないかもしれないけど、私だって……!
「スターーーート!!」
みんなが一斉に駆け出す。その流れに飲まれぬよう、私も必死に足を動かす。
行け! せっかく前につけたんだ、このチャンスを逃すな!
ゲートを抜けたその刹那、がくん、視界が揺れる。
「……あれ?」
足が動かない。どういうこと? と困っていると、見慣れた赤と白のツートンの頭が私の横を駆け抜けていくのが見えた。
足元を見る。氷が私の足を侵食していた。
「うわっ……!」
予想以上に冷たくて、春なのに私はぶるりと身震いをする。これ、もしかして焦凍の個性……?
そんなことを考えていると、ヒーロー科、いや、A組のみんなが個性を使って走って……否、飛び越えていく!
すごい、あれがA組……!
いやいや、感心している場合じゃない! 私は首を横に振る。
これでは遅れてしまう。
焦凍の応援の言葉も、無駄にしてしまう……!
後続の生徒たちが私の横を走っていく。動けないままの私を置いて。氷の低い温度がじくじくとふくらはぎを冷たくしていく。
あぁ、だからダメなんだ。どうせ何もできない。私なんて。私なんて……!
「諦めないで」
ふと、百ちゃんのあのときの瞳を思い出す。まっすぐな、私のことを考えてくれている純粋な瞳。
「コースさえ守れば『何をしたって』構わないわ!」
開始前のミッドナイト先生の言葉が蘇る。
そうだ! 個性を使えばいいじゃないか!
公共の場で無闇に個性を使うことは禁止されている。でも、この場ではそのルールは関係ない。
普段使ってないから気づかなかった、私の個性。
「私だって……!」
個性を発動させる。久々の、体の中から温まる感覚。
右足の氷がじわじわと溶けていく。右手を左足に当てて、氷を溶かしていく。
両足の氷が溶けた頃には、私は右半身に炎を纏っていた。めらめらと音がして、少し恥ずかしい。もちろん、プロヒーローの叔父ほどの派手さはないけれど。
よし、これでまた走れる!
前を向いたそのとき、声が耳に入った。
「助けてくれぇ!」
「動けないよー」
「寒いっ!」
振り返ると、焦凍に凍らされた人たちがいた。彼らはさっきの私同様、足や腕を凍らされてその場から動けず、苦しそうにしている。
彼らを見捨てて走れば、上位陣に追いつけるかもしれない。
助けてあげなくていいの?
一瞬だけ、迷った。
私はくるりと方向転換する。彼らの足に右手を当てて、氷を溶かしていく。
「ごめん、ありがとう」
「いいえ……」
私は個性の訓練をしていない。だから、範囲でまとめて炎を出すなんてことはできない。一人一人やるしかない。効率は悪いだろう。
「ヘイヘイ後続ゥ! 人助けのつもりかい? そんなんじゃ一位は取れないぞ!」
実況が私を煽る。
わかってます、マイク先生。それでも、私は……!
「ありがとな!」
「サンキュ!」
「アザッス!」
氷を溶かした彼らが先に進んでいく。その笑顔を見ることが、私はとても大切なんだ。
どうせ私は何もできない。それなら、できることをやるんだ!
ちょっと怖かったな、爆豪くん。他のクラスの子たちからブーイング受けてたし。苦手なタイプかもしれない。
焦凍とぶつかってないといいけど。そんなことを考えたりしていた。
人が多い。
それは観客席もそうだが、生徒も同じだった。
なんでって、一年生全員がこの場にいるのだ。全員が、同じスタートラインに立とうとしているのだ。
第一種目は障害物競走。
運良く前につけたけど、始まったらこれ……まずいんじゃ……。
カウントダウンのランプが点灯する。みんなが静かになる。
これ、転ぶやつじゃない? 後ろの人に押されて転ぶやつじゃない?
3……。
いや、そんなことを考えている場合じゃない! 目の前のことに集中するんだ……。
2……。
「頑張れ」
そう言ってくれた焦凍の真剣な顔を思い出す。
1……。
一位にはなれないかもしれないけど、私だって……!
「スターーーート!!」
みんなが一斉に駆け出す。その流れに飲まれぬよう、私も必死に足を動かす。
行け! せっかく前につけたんだ、このチャンスを逃すな!
ゲートを抜けたその刹那、がくん、視界が揺れる。
「……あれ?」
足が動かない。どういうこと? と困っていると、見慣れた赤と白のツートンの頭が私の横を駆け抜けていくのが見えた。
足元を見る。氷が私の足を侵食していた。
「うわっ……!」
予想以上に冷たくて、春なのに私はぶるりと身震いをする。これ、もしかして焦凍の個性……?
そんなことを考えていると、ヒーロー科、いや、A組のみんなが個性を使って走って……否、飛び越えていく!
すごい、あれがA組……!
いやいや、感心している場合じゃない! 私は首を横に振る。
これでは遅れてしまう。
焦凍の応援の言葉も、無駄にしてしまう……!
後続の生徒たちが私の横を走っていく。動けないままの私を置いて。氷の低い温度がじくじくとふくらはぎを冷たくしていく。
あぁ、だからダメなんだ。どうせ何もできない。私なんて。私なんて……!
「諦めないで」
ふと、百ちゃんのあのときの瞳を思い出す。まっすぐな、私のことを考えてくれている純粋な瞳。
「コースさえ守れば『何をしたって』構わないわ!」
開始前のミッドナイト先生の言葉が蘇る。
そうだ! 個性を使えばいいじゃないか!
公共の場で無闇に個性を使うことは禁止されている。でも、この場ではそのルールは関係ない。
普段使ってないから気づかなかった、私の個性。
「私だって……!」
個性を発動させる。久々の、体の中から温まる感覚。
右足の氷がじわじわと溶けていく。右手を左足に当てて、氷を溶かしていく。
両足の氷が溶けた頃には、私は右半身に炎を纏っていた。めらめらと音がして、少し恥ずかしい。もちろん、プロヒーローの叔父ほどの派手さはないけれど。
よし、これでまた走れる!
前を向いたそのとき、声が耳に入った。
「助けてくれぇ!」
「動けないよー」
「寒いっ!」
振り返ると、焦凍に凍らされた人たちがいた。彼らはさっきの私同様、足や腕を凍らされてその場から動けず、苦しそうにしている。
彼らを見捨てて走れば、上位陣に追いつけるかもしれない。
助けてあげなくていいの?
一瞬だけ、迷った。
私はくるりと方向転換する。彼らの足に右手を当てて、氷を溶かしていく。
「ごめん、ありがとう」
「いいえ……」
私は個性の訓練をしていない。だから、範囲でまとめて炎を出すなんてことはできない。一人一人やるしかない。効率は悪いだろう。
「ヘイヘイ後続ゥ! 人助けのつもりかい? そんなんじゃ一位は取れないぞ!」
実況が私を煽る。
わかってます、マイク先生。それでも、私は……!
「ありがとな!」
「サンキュ!」
「アザッス!」
氷を溶かした彼らが先に進んでいく。その笑顔を見ることが、私はとても大切なんだ。
どうせ私は何もできない。それなら、できることをやるんだ!