体育祭
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体育着に腕を通す。深い青色の生地に「UA」とデザインされた白いラインの入ったそれは、着るたびに雄英生であることを自覚させられる。
「……」
髪を結い上げる。今日はきっとよく動く日になるから。
体育祭。それは、小学校も中学校も嫌いだった行事。
だって、私全然動けないんだもの。クラスだけじゃなく学年でもいつもビリ。いらないもの扱いされて、もう嫌だった。
でも、今回は違う。
「水火ちゃん」
クラスの子から声をかけられる。
「頑張ろうね!」
私は「うん」と頷く。
友達がいるから。
それに、きっと活躍してくれるであろういとこも。焦凍はヒーロー志望だし、もしかしたら一位とか取っちゃうかもしれない。そんな期待を抱く。
「……頑張る」
昨日、彼は緊張した面持ちで私にそう言った。
彼の活躍が見られるなら、別に体育祭も悪いものではないかな。
「だから、水火も頑張れ」
「……」
言葉を返せなかった。
私たち普通科はただの引き立て役だし、私は運動神経がよくない。体育の授業の体力測定でも、相変わらず最下位だった。
でも。
引き立て役だって言われても、それでもいい。楽しめるかが問題だと、思う。
「楽しんでいこ!」
友達が言う。二人でおー! と声を合わせる。
それに、少しだけ期待していることだってあるんだ。間にあるレク。そこでもしかしたら、もしかしたら……!
「水火ちゃん、よだれ出てるよ」
「はっ! ごめん、パンのこと考えてた」
「お昼が楽しみなの?」
私は首を横に振る。
「パン食い競争があるかもしれないでしょ!」
「……あー」
呆れた顔で私の笑顔を眺める友達。私のパンへの愛情は、それはもうえぐいことになっていた。
クリームパンかな。いや、食パンかも。チョコパンもあんパンもいい、もうなんでもいい……。
「パン食べたい……」
朝にバタートーストを頬張ってきたというのに私の口からは欲望がこぼれる。
「……水火ちゃん、遅れちゃうから行こうよ」
「はい……」
暴走している私を止めてくれる友達。本当に、いい友達ができたなぁ……!
心の中で感謝しながら、私たちは更衣室を出て、生徒控室へ向かった。
ドキドキしながらみんなに続いて会場に入場する。
大きなグラウンド、それをぐるりと囲むようにして設置された観客席には所狭しと座った人、人、人。一般の人も、カラフルなコスチュームを着たヒーローもいる。歓声がものすごく大きくて、耳が少し痛いほどだ。
老若男女問わず、彼らは私たち生徒に注目している。いや、正確にはC組なんて見ている人はあまりいなくて、A組やB組、つまりヒーロー科を見ている人が多いけど。
周りを見渡して、私は人の多さにびっくりしていた。
いや、この視線の中で体育祭やるの……? いつもテレビ中継見てたけどさ……!
緊張で肩が上がってしまう。
ただ見ているのと、実際その中に入って体験するのは全然違う。百聞は一見にしかず、そんなことわざを思い浮かべた。
所定の位置につく。
A組の方を見ると、なんとなく見知った顔がそこにはあった。百ちゃんもいる!
その中で、一人とばっちり目が合ってしまった。
小さく手を振ると、彼も小さく手を振り返す。
「ふふ」
口がゆるむ。笑わないところが、逆にいつもの焦凍らしくて安心した。
「選手宣誓!」
ミッドナイト先生の声。私ははっとなって前を見る。
「……」
髪を結い上げる。今日はきっとよく動く日になるから。
体育祭。それは、小学校も中学校も嫌いだった行事。
だって、私全然動けないんだもの。クラスだけじゃなく学年でもいつもビリ。いらないもの扱いされて、もう嫌だった。
でも、今回は違う。
「水火ちゃん」
クラスの子から声をかけられる。
「頑張ろうね!」
私は「うん」と頷く。
友達がいるから。
それに、きっと活躍してくれるであろういとこも。焦凍はヒーロー志望だし、もしかしたら一位とか取っちゃうかもしれない。そんな期待を抱く。
「……頑張る」
昨日、彼は緊張した面持ちで私にそう言った。
彼の活躍が見られるなら、別に体育祭も悪いものではないかな。
「だから、水火も頑張れ」
「……」
言葉を返せなかった。
私たち普通科はただの引き立て役だし、私は運動神経がよくない。体育の授業の体力測定でも、相変わらず最下位だった。
でも。
引き立て役だって言われても、それでもいい。楽しめるかが問題だと、思う。
「楽しんでいこ!」
友達が言う。二人でおー! と声を合わせる。
それに、少しだけ期待していることだってあるんだ。間にあるレク。そこでもしかしたら、もしかしたら……!
「水火ちゃん、よだれ出てるよ」
「はっ! ごめん、パンのこと考えてた」
「お昼が楽しみなの?」
私は首を横に振る。
「パン食い競争があるかもしれないでしょ!」
「……あー」
呆れた顔で私の笑顔を眺める友達。私のパンへの愛情は、それはもうえぐいことになっていた。
クリームパンかな。いや、食パンかも。チョコパンもあんパンもいい、もうなんでもいい……。
「パン食べたい……」
朝にバタートーストを頬張ってきたというのに私の口からは欲望がこぼれる。
「……水火ちゃん、遅れちゃうから行こうよ」
「はい……」
暴走している私を止めてくれる友達。本当に、いい友達ができたなぁ……!
心の中で感謝しながら、私たちは更衣室を出て、生徒控室へ向かった。
ドキドキしながらみんなに続いて会場に入場する。
大きなグラウンド、それをぐるりと囲むようにして設置された観客席には所狭しと座った人、人、人。一般の人も、カラフルなコスチュームを着たヒーローもいる。歓声がものすごく大きくて、耳が少し痛いほどだ。
老若男女問わず、彼らは私たち生徒に注目している。いや、正確にはC組なんて見ている人はあまりいなくて、A組やB組、つまりヒーロー科を見ている人が多いけど。
周りを見渡して、私は人の多さにびっくりしていた。
いや、この視線の中で体育祭やるの……? いつもテレビ中継見てたけどさ……!
緊張で肩が上がってしまう。
ただ見ているのと、実際その中に入って体験するのは全然違う。百聞は一見にしかず、そんなことわざを思い浮かべた。
所定の位置につく。
A組の方を見ると、なんとなく見知った顔がそこにはあった。百ちゃんもいる!
その中で、一人とばっちり目が合ってしまった。
小さく手を振ると、彼も小さく手を振り返す。
「ふふ」
口がゆるむ。笑わないところが、逆にいつもの焦凍らしくて安心した。
「選手宣誓!」
ミッドナイト先生の声。私ははっとなって前を見る。