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千景受け


カタカタとキーボードを叩く音だけが部屋に響いている。
普段と同じ日常に穴が空いたように痛む胸の痛みはなんなのだろうか。
何かを忘れてしまっているような気がする。
だが、それを思い出そうとすると起こる頭痛で全く思い出せない。
時折ザザッとなるノイズの合間に「千景さん」と甘ったるく、けれど安心する声で自分の名前を呼んでくる声が聞こえる。
不快感など全く起こらなかった。
確かに自分が大切にしていたものなのに。
あんなに大事にしていたものなのに。
けれどその正体が分からなくて、この胸に走る痛みが分からなくて。
いっそ思い出せたらこんな思いを感じなくて済むのに。
思い出せない自分に腹が立って、不安を覚えてはささくれだった唇またゆっくりと噛んだ。
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