いじりがいのある奴はどちらかと言えば好きだ。そう思う自分はどちらかと言うとSの部類の人間なのだろう。そう思っているのは不動明王という少年だった。
不動には好きな人がいる。いじっぱりで馬鹿正直。そんな好きな人。いいところを人前で聞かれたら不動はないねとすぐ答えるが数え切れないほどあることは誰にも内緒なのだ。
ポケットに手を突っ込みながらトコトコ歩く不動の後ろから日本代表のマネージャーである不動の好きな人苗字がやってきた。
「不動くん！ダメだよサボったら！サボったら久遠監督に言いつけちゃうよ！」
「あーあーピーピーうるさいやつがやってきた、これだからお前はモテねぇんだよ」
「そっそれとこれとは別でしょ！いいから一緒にみんなのとこ行くよ」


「不動遅かったな！トイレでも言ってたのか！？」
キャプテンである円堂守がそういうと後ろにいる豪炎寺が
「遅かった時にトイレだったのか聞くのはまずいぞ円堂。」
と冷静にツッコミらしきものを入れたがすぐ不動が
「どっちもちげぇよ！想像すんな！」
と本当のツッコミを入れた。
クスッと笑う苗字を見て不動はちっと舌打ちを打ち顔を赤らめた。

練習をしていると不動は少し足に痛みを感じた。少し足の方に様子を見ると鬼道が
「どうした、まさか今度は本当に…」
と言う前に
「ちげぇっていってんだろ！足少し痛めただけだ…それ以外なんともねえ、練習はじめっぞ」
と言った。
そんな言葉は無視し鬼道は
「おいだれか応急処置してくれ不動が足を痛めたらしい」
不動はたくっ…とつぶやいたが駆けつけたのが苗字だったため半分嬉しかった。

応急処置をする苗字の手つきは器用だった。それを見た不動は
「苗字チャンは器用だねぇ…」
と茶化すように言ったが苗字は
「だって不動くんがサッカー出来なくならないように毎日練習してたから」
とさらりと言った。
不動は驚きのあまり顔を真っ赤に染めた。
（たくっ…そういうのはサラッて言いやがる…）