私の知ってるわらしべじゃない!
先日のわらしべ事件からまあ色々あったが平和な日常が戻ってきた陽はそりゃあもうテンションが高かった。マイキーくんからたい焼き食べに行こ~やら遊ぼうと連絡はくるが先日の鮪の事件から中々返事を返せないでいる。それ以外は特に何もなく、にやける顔も隠さずに学校を後にし、貰ったアイスの袋を開封する。
元々物々交換のようなものは日常的にしており色々貰ってはいたがこの間のがおかしかったのだ。何で最終的にマイキーくんの連絡先になったのかは今でも謎だけどたい焼きを一緒に食べに行くのは楽しいからいいとする、まあ過去に一番ヤバイものをお礼で貰ったがそれよりかはましだよな、と自分の中で勝手に解決しうんうんと頷く。頷いた拍子に溢れ落ちるアイスを慌てて舐めとる。じりじりと茹だるような暑さに参りながらもアイスを無事食べきり見るとあたりと書いてあった
「おっ」
今日はついてる~とるんるんで歩きだすとスカートを引っ張られる感覚に気づき、後ろを見ると小さい女の子がキラキラした目で此方を、というよりアイスの棒をみていた。すかさず同じ目線にしゃがみこんで話しかける。
「お姉ちゃんのこれいる?」
「うん」
元気よく頷いた女の子の頭を撫でてちょっと洗ってくるねといい離れる。小さい女の子が喜んでくれるのはこちらも嬉しいものだ、足早に戻ると横にお母さんらしき人が立っていて思わず足をとめる。待て待てさっきまでいなかったじゃんか。スタンドみたいに立ってるのやめよ??
いかにも金持ってますオーラがあり、一瞬この間の流れがよぎるが大丈夫だろうと切り替え近寄る。人はそれをフラグという。
「はい、これを駄菓子屋さんに持っていってね」
「ありがとうお姉ちゃん!」
「ありがとうございます、あの此方を受け取ってください」
「あ、受け取れないです、エッ押し強ッッ」
私は当たったけど行かないので、とぐいぐいと白い封筒を押し付けられ断れる訳もなく受けとる。ばいば~い!と元気な声で手を振る女の子に力なく振り返した後恐る恐る封筒の中を見る
「ヒェ…ライブチケット???」
え、これ有名なやつでは?バンドに無知な私でも知っている名前に手が震える。しかも来週??待って?どうすればいいのか分からず周りを見渡すと落ち込んだ顔を隠しもしないお兄さん達を見つけた。他にも集団が蹲っているがあのお兄さん達が何か、こうやばいオーラが出ている。口からはライブゥ…アハァ…と何やら呟いており少し怖い気もするがこの手に持っているのをどうにかしたい。一際目立つ二人組に恐る恐る近寄り声をかける
「あの…」
「ライブゥ…俺達のヘヴン…ゥゥ」
「あの!!」
大きめの声で呼び掛けると肩を揺らしたと同時に此方をみる。あまりの迫力にヒィンと情けない声がでるが震える手を隠しもせず白い封筒を渡す
「これ」
「何だ嬢ちゃん」
チケットですと言いかけて慌てて口を閉じる。周りにも落選してる人達がいそうな中チケットです~!と言い出す勇気なんてこれっぽっちもない、でも刺すような視線を感じ何か言わなければ…とあの、その、としどろもどろになりながらも咄嗟に口に出てたときには後の祭りだった。
「ブツです」
「え?」
「これは!例のブツです!」
「待って!?例のブツって何!?どういうこと!?」
イヤアアア!!!と男にしては甲高い声をあげるのを無視し受け取ってください!と顔に投げ捨てるように叩きつける。
泣きながらも受け取ったお兄さん達は恐る恐る封筒の中身を見た後此方を二度凝視する。やめろ、なんだよそのいかにもお礼させてっていう顔をするな。じりじりと後退りをするとあちらもじりじりと詰め寄ってくる
「「例のブツ!!!ありがとうございましたァァッッ!!!」」
これはお礼です、よかったらどうぞ!!!と問答無用でポケットに何かを捩じ込んでくるお兄さん達と必死に避ける私。だが俊敏さはあちらの方が上だったらしく隙をついて入れた後叫びながら去っていった。2対1は卑怯だろ、と思いながらも入れられたものを手に取る。あのお兄さん達はやばいものをわたしてはこないだろう
「まあゲーム機とかだったら嬉しい~な!??エッッッッド、ドドドバイ!!?」
ゴッホゴホッ
思わず噎せて咳がでる。あのお兄さん達何者!?ドバイの宿泊券とか待って??気管に入ったのか中々収まらず胸を叩いていると若い夫婦が慌ててかけよって摩ってくれた。旦那さんは未開封のペットボトルを渡してくれ、有り難く受け取り飲む。ありがとうございます、と答えつつ立ち上がる。本当に大丈夫?と聞かれはい…と掠れた声で答えつつ二人が持ってるパンフレットを見て目を見開く。
「ドバイ…」
「え?」
「ドバイ行くんですか!!?」
「あ、あぁ行こうと思ったんだけど予定の日がもう満席と言われてね」
はは、と苦笑いをしている夫婦を横に今日は最高だ、、と呟く。神は味方をした。人前というのも気にせず両手を突き上げる。
チケットを二人の前に渡しセールスマンのように捲し立てる。
「こちら先程お兄さん達にライブチケットを譲ったらお礼で貰った物なんですけどなんとこれ、、行先…ドバイなんです。宿泊券、ツアーもセットでついてるので私がいくより是非お二人に…」
とそのまま奥さんに握らせる。二人は紙を覗き込み驚愕の顔をしたあと此方に詰め寄る
「いいの?」
「本望です」
「ほんとに?」
「はい、宝の持ち腐れにしたくないので」
「お、お礼を」
「アッッそれは一番いらないやつですね!!いらないので近寄ってくるのやめましょう??」
「そんなこと言わずに!!俺会社経営しててこれあげるよ」
「会社経営してるからこれあげるよ???待って?ねえほんとに待って?待って下さい!!奥さん止めてぇえ!!」
「あら~!いいじゃない!将来使うかもしれないわよ」
何にもよくない!前門の旦那さん後門の奥さん、今日2対1多すぎないか??違う意味で涙が出そうになる。旦那さんは私の名前を聞いた後その場で電話をかけ始める。聞きたくない言葉がめちゃくちゃ聞こえる、、
「あぁあ…」
「あら嬉しいの?」
心底嬉しくない、とも言えずハイ、ウレシイデスと答える。
「俺の部下に保管しておくように言ったからいつか取りにおいで、名刺も渡しておく」
「部下??名刺??」
「本当にありがとね、じゃあまた」
嬉しそうに去る夫婦を見送った後手の中のブツを見る
「ンエエエ!!?車と船とバイク!!??」
三種の神器みたいに連なる名前に冷や汗が止まらない。慌てて名刺を見ると某自動車メーカーの社長と書かれており、思わずマイキーくん助けて…と呟くが悲しいことかな、呟きは夜の喧騒に書き消された。
「ううぅ、、どうしよう…」
デパートのベンチに座り項垂れる。今回は名前も聞かれ私ので取り押さえられているから詰みである。車はまだにしろ船とバイク???免許とるつもりもないんですが??
やけくそになり先程買ったどら焼きをもそもそと食べる。ふと前に影がかかり誰?まさかマイキーくん?と思いつつ見上げると白銀の髪に褐色の肌の男の子がいた。耳の花札ピアスがカランと音を立てる。
え、誰…??と顔に出ていたのだろう。私が持ってる袋に手を伸ばし、どら焼きを頬張る
「オレは黒川イザナ、イザナって呼んで。あとどら焼き頂戴」
いやもう食べてんじゃん…と言いつつ自分の名前を告げた。
「それで?陽は何であんなに落ち込んでた?」
あの後イザナくんと二人でベンチに座る。間を開けるのかと思ったら普通に0距離で横に座ってきてパーソナルスペースどうなってるの?と思わずにはいられない。マイキーくんにしろ最近の男の子フレンドリーすぎない??どら焼きで喉が渇いたのか私の飲みかけのペットボトルを普通に取り飲む。食べ終えたイザナくんは指を舐めつつげぼ…と言いかけた後友達のカクチョーくんを待っていて暇だったところ項垂れている私を見つけて興味本位で近づいたらしい。げぼってなんだよ…気になるじゃんか?でもそりゃああんなに落ち込んでたら気になるよな、とどこか他人事のように思う。
「チケットのお礼に貰ったものがドバイの宿泊券で夫婦にあげたらお礼でこれ貰ったの」
「何て??」
何貰ったのと言われ現実逃避しつつポケットにいれてたのを取り出す
「…なあ」
「やめて、言わないで」
「いやこれ」
「やめて」
「現実みろよ……」
「ああぁあ…やっぱり本物だよねぇえ」
アイスの当たり棒をあげてからここまでになるって誰が思う??誰も思わないじゃん??ライブチケットもドバイもやばかったけど、これ一番おかしいじゃん??私免許まだとってないんだってば…私の感覚が可笑しいの??頭を抱える私に心底同情したような顔を見せるイザナくん。やめてよ、そんな目で見ないで。
いやでもまずはこれをどうにかしたい。車はもう諦めるとしよう。ふと横にいるイザナくんを見つめる
「バイクいります?」
「いや持ってる」
「ゥゥ船、船は!?」
「乗らねえよ」
「私も乗りませんけど???」
二人でぎゃいぎゃい言っているとイザナくんを呼ぶ声が聞こえそちらを向く。顔に傷がある彼がカクチョーくんなのだろうか?
此方に来、私とイザナくんを交互にみる
「鶴蝶、こいつ陽。わらしべみたいなのしてて今車と船とバイク持ってる」
「陽です、こんばんは。ドバイの宿泊券をあげたお礼で車と船とバイクを貰ってイザナくんに船とバイクあげると言ったら断られました。カクチョーくんは船とバイク要りませんか?」
「待て待て、情報が多すぎる。ドバイから意味が分からないし船とバイクはいらない」
「皆貰ってくれないじゃん」
顔を覆い泣くとむしろ何で貰ってくれると思った?と呟かれる
あまりに悲壮感を出していたからか少しイザナくんが考えこんだかと思うと徐に手を出す
「金の要求??」
「違う。取りあえずオレが預かっといてやる」
だから鍵と紙を渡せと言われハワワと言いながら渡す
「神か?」
「いや人間だけど」
「そのまま使ってもいいんだよ?」
「使わねえよ?」
あ、お礼と呟くといいと言われるがこちらも引く気はない。これがいつもお礼をする側の気持ちかとなりながらも渡せるものを探すがこれといったものがなく落ち込む
「なら陽の連絡先でいい」
「え、そんなものでいいの??」
「ああ。たまに連絡するからその時はでろ」
「わかった!!ありがとう!!!アッッカクチョーくんも交換しよ!!」
「分かったから落ち着け。あと何で片言なんだ?」
その言葉は敢えて無視をし、嬉々と電話番号を交換し二人に別れを告げる。帰り際大通りを変えれよと言われ首を傾げながらも見送った。
「大変だったけどイザナくんとカクチョーくん優しかった「おいお嬢ちゃん」な?」
振り向くとぞろぞろと厳ついお兄さん達が周りを囲む。前もこの展開あったんですけど?となりつつ何のようですか?と聞く
「お前天竺と知り合いか?誰かの女か?」
「てんじく??」
てんじくって何??宗教団体??札も数珠も持ってないけど?意味もわからず突っ立っている私に苛立ったのか一人が腕を掴む。痛いと言うが聞いてくれる様子もなく引きずられる。折角いい気持ちで1日を終えると思ったのにこんなのはあんまりだ。マイキーくんに連絡したくてもこの状況で連絡したらもっと酷くなるだろう。どうしようと焦りがでると上から影が降ってきた。降ってきた???
「陽、伏せとけ」
ドォンと土煙をあげながらも目の前にいたのは先程見送ったイザナくん達だった。
ヒッッエという私の変な声に笑ったかと思うとそのまま集団に突っ込んでいく。そこからは空を舞うお兄さん達を呆然とみるしかなかった。
「悪いな巻き込んで」
「カクチョーくん…」
いつの間にか横にきていたカクチョーくんが腕大丈夫か?と聞いてくる。大丈夫と言うと同時に最後の一人を伸したのだろう、イザナくんが緩やかな足取りでこちらにくる
「鶴蝶、陽大丈夫だったか?」
「あぁちょっと跡がついてるが」
「ねえ」
「「?」」
「てんじくって何?」
私の呟きに二人顔を見合わせたかと思うとにんまりと笑って同じ目線に屈みこむ。
「天竺は横浜に拠点を置く暴走族だ」
「で、オレが総長で鶴蝶がNo2」
「は??そうちょう…??なんばーつー???」
「「仲良くしような、陽」」
「ううぅう…!!!」
また総長かよ!!てことはマイキーくんとも知り合いか!?って叫び膝をつく私に男二人の笑い声が響き渡った。
次回予告(嘘)
やめて!12年経っても亜紀の貢ぎ癖が収まらずむしろヒートアップして遂には島を買っちゃった!!ヤクをまだ決めてもないのにスクラップしそうになっちゃう!!
お願い、死なないで三途!!
あんたが今ここで倒れたら次のターゲットが灰谷兄弟になっちゃう!!
陽との連絡手段はまだ残っている。早く飼育員(陽)を連れ戻して!!
次回「三途死す」
元々物々交換のようなものは日常的にしており色々貰ってはいたがこの間のがおかしかったのだ。何で最終的にマイキーくんの連絡先になったのかは今でも謎だけどたい焼きを一緒に食べに行くのは楽しいからいいとする、まあ過去に一番ヤバイものをお礼で貰ったがそれよりかはましだよな、と自分の中で勝手に解決しうんうんと頷く。頷いた拍子に溢れ落ちるアイスを慌てて舐めとる。じりじりと茹だるような暑さに参りながらもアイスを無事食べきり見るとあたりと書いてあった
「おっ」
今日はついてる~とるんるんで歩きだすとスカートを引っ張られる感覚に気づき、後ろを見ると小さい女の子がキラキラした目で此方を、というよりアイスの棒をみていた。すかさず同じ目線にしゃがみこんで話しかける。
「お姉ちゃんのこれいる?」
「うん」
元気よく頷いた女の子の頭を撫でてちょっと洗ってくるねといい離れる。小さい女の子が喜んでくれるのはこちらも嬉しいものだ、足早に戻ると横にお母さんらしき人が立っていて思わず足をとめる。待て待てさっきまでいなかったじゃんか。スタンドみたいに立ってるのやめよ??
いかにも金持ってますオーラがあり、一瞬この間の流れがよぎるが大丈夫だろうと切り替え近寄る。人はそれをフラグという。
「はい、これを駄菓子屋さんに持っていってね」
「ありがとうお姉ちゃん!」
「ありがとうございます、あの此方を受け取ってください」
「あ、受け取れないです、エッ押し強ッッ」
私は当たったけど行かないので、とぐいぐいと白い封筒を押し付けられ断れる訳もなく受けとる。ばいば~い!と元気な声で手を振る女の子に力なく振り返した後恐る恐る封筒の中を見る
「ヒェ…ライブチケット???」
え、これ有名なやつでは?バンドに無知な私でも知っている名前に手が震える。しかも来週??待って?どうすればいいのか分からず周りを見渡すと落ち込んだ顔を隠しもしないお兄さん達を見つけた。他にも集団が蹲っているがあのお兄さん達が何か、こうやばいオーラが出ている。口からはライブゥ…アハァ…と何やら呟いており少し怖い気もするがこの手に持っているのをどうにかしたい。一際目立つ二人組に恐る恐る近寄り声をかける
「あの…」
「ライブゥ…俺達のヘヴン…ゥゥ」
「あの!!」
大きめの声で呼び掛けると肩を揺らしたと同時に此方をみる。あまりの迫力にヒィンと情けない声がでるが震える手を隠しもせず白い封筒を渡す
「これ」
「何だ嬢ちゃん」
チケットですと言いかけて慌てて口を閉じる。周りにも落選してる人達がいそうな中チケットです~!と言い出す勇気なんてこれっぽっちもない、でも刺すような視線を感じ何か言わなければ…とあの、その、としどろもどろになりながらも咄嗟に口に出てたときには後の祭りだった。
「ブツです」
「え?」
「これは!例のブツです!」
「待って!?例のブツって何!?どういうこと!?」
イヤアアア!!!と男にしては甲高い声をあげるのを無視し受け取ってください!と顔に投げ捨てるように叩きつける。
泣きながらも受け取ったお兄さん達は恐る恐る封筒の中身を見た後此方を二度凝視する。やめろ、なんだよそのいかにもお礼させてっていう顔をするな。じりじりと後退りをするとあちらもじりじりと詰め寄ってくる
「「例のブツ!!!ありがとうございましたァァッッ!!!」」
これはお礼です、よかったらどうぞ!!!と問答無用でポケットに何かを捩じ込んでくるお兄さん達と必死に避ける私。だが俊敏さはあちらの方が上だったらしく隙をついて入れた後叫びながら去っていった。2対1は卑怯だろ、と思いながらも入れられたものを手に取る。あのお兄さん達はやばいものをわたしてはこないだろう
「まあゲーム機とかだったら嬉しい~な!??エッッッッド、ドドドバイ!!?」
ゴッホゴホッ
思わず噎せて咳がでる。あのお兄さん達何者!?ドバイの宿泊券とか待って??気管に入ったのか中々収まらず胸を叩いていると若い夫婦が慌ててかけよって摩ってくれた。旦那さんは未開封のペットボトルを渡してくれ、有り難く受け取り飲む。ありがとうございます、と答えつつ立ち上がる。本当に大丈夫?と聞かれはい…と掠れた声で答えつつ二人が持ってるパンフレットを見て目を見開く。
「ドバイ…」
「え?」
「ドバイ行くんですか!!?」
「あ、あぁ行こうと思ったんだけど予定の日がもう満席と言われてね」
はは、と苦笑いをしている夫婦を横に今日は最高だ、、と呟く。神は味方をした。人前というのも気にせず両手を突き上げる。
チケットを二人の前に渡しセールスマンのように捲し立てる。
「こちら先程お兄さん達にライブチケットを譲ったらお礼で貰った物なんですけどなんとこれ、、行先…ドバイなんです。宿泊券、ツアーもセットでついてるので私がいくより是非お二人に…」
とそのまま奥さんに握らせる。二人は紙を覗き込み驚愕の顔をしたあと此方に詰め寄る
「いいの?」
「本望です」
「ほんとに?」
「はい、宝の持ち腐れにしたくないので」
「お、お礼を」
「アッッそれは一番いらないやつですね!!いらないので近寄ってくるのやめましょう??」
「そんなこと言わずに!!俺会社経営しててこれあげるよ」
「会社経営してるからこれあげるよ???待って?ねえほんとに待って?待って下さい!!奥さん止めてぇえ!!」
「あら~!いいじゃない!将来使うかもしれないわよ」
何にもよくない!前門の旦那さん後門の奥さん、今日2対1多すぎないか??違う意味で涙が出そうになる。旦那さんは私の名前を聞いた後その場で電話をかけ始める。聞きたくない言葉がめちゃくちゃ聞こえる、、
「あぁあ…」
「あら嬉しいの?」
心底嬉しくない、とも言えずハイ、ウレシイデスと答える。
「俺の部下に保管しておくように言ったからいつか取りにおいで、名刺も渡しておく」
「部下??名刺??」
「本当にありがとね、じゃあまた」
嬉しそうに去る夫婦を見送った後手の中のブツを見る
「ンエエエ!!?車と船とバイク!!??」
三種の神器みたいに連なる名前に冷や汗が止まらない。慌てて名刺を見ると某自動車メーカーの社長と書かれており、思わずマイキーくん助けて…と呟くが悲しいことかな、呟きは夜の喧騒に書き消された。
「ううぅ、、どうしよう…」
デパートのベンチに座り項垂れる。今回は名前も聞かれ私ので取り押さえられているから詰みである。車はまだにしろ船とバイク???免許とるつもりもないんですが??
やけくそになり先程買ったどら焼きをもそもそと食べる。ふと前に影がかかり誰?まさかマイキーくん?と思いつつ見上げると白銀の髪に褐色の肌の男の子がいた。耳の花札ピアスがカランと音を立てる。
え、誰…??と顔に出ていたのだろう。私が持ってる袋に手を伸ばし、どら焼きを頬張る
「オレは黒川イザナ、イザナって呼んで。あとどら焼き頂戴」
いやもう食べてんじゃん…と言いつつ自分の名前を告げた。
「それで?陽は何であんなに落ち込んでた?」
あの後イザナくんと二人でベンチに座る。間を開けるのかと思ったら普通に0距離で横に座ってきてパーソナルスペースどうなってるの?と思わずにはいられない。マイキーくんにしろ最近の男の子フレンドリーすぎない??どら焼きで喉が渇いたのか私の飲みかけのペットボトルを普通に取り飲む。食べ終えたイザナくんは指を舐めつつげぼ…と言いかけた後友達のカクチョーくんを待っていて暇だったところ項垂れている私を見つけて興味本位で近づいたらしい。げぼってなんだよ…気になるじゃんか?でもそりゃああんなに落ち込んでたら気になるよな、とどこか他人事のように思う。
「チケットのお礼に貰ったものがドバイの宿泊券で夫婦にあげたらお礼でこれ貰ったの」
「何て??」
何貰ったのと言われ現実逃避しつつポケットにいれてたのを取り出す
「…なあ」
「やめて、言わないで」
「いやこれ」
「やめて」
「現実みろよ……」
「ああぁあ…やっぱり本物だよねぇえ」
アイスの当たり棒をあげてからここまでになるって誰が思う??誰も思わないじゃん??ライブチケットもドバイもやばかったけど、これ一番おかしいじゃん??私免許まだとってないんだってば…私の感覚が可笑しいの??頭を抱える私に心底同情したような顔を見せるイザナくん。やめてよ、そんな目で見ないで。
いやでもまずはこれをどうにかしたい。車はもう諦めるとしよう。ふと横にいるイザナくんを見つめる
「バイクいります?」
「いや持ってる」
「ゥゥ船、船は!?」
「乗らねえよ」
「私も乗りませんけど???」
二人でぎゃいぎゃい言っているとイザナくんを呼ぶ声が聞こえそちらを向く。顔に傷がある彼がカクチョーくんなのだろうか?
此方に来、私とイザナくんを交互にみる
「鶴蝶、こいつ陽。わらしべみたいなのしてて今車と船とバイク持ってる」
「陽です、こんばんは。ドバイの宿泊券をあげたお礼で車と船とバイクを貰ってイザナくんに船とバイクあげると言ったら断られました。カクチョーくんは船とバイク要りませんか?」
「待て待て、情報が多すぎる。ドバイから意味が分からないし船とバイクはいらない」
「皆貰ってくれないじゃん」
顔を覆い泣くとむしろ何で貰ってくれると思った?と呟かれる
あまりに悲壮感を出していたからか少しイザナくんが考えこんだかと思うと徐に手を出す
「金の要求??」
「違う。取りあえずオレが預かっといてやる」
だから鍵と紙を渡せと言われハワワと言いながら渡す
「神か?」
「いや人間だけど」
「そのまま使ってもいいんだよ?」
「使わねえよ?」
あ、お礼と呟くといいと言われるがこちらも引く気はない。これがいつもお礼をする側の気持ちかとなりながらも渡せるものを探すがこれといったものがなく落ち込む
「なら陽の連絡先でいい」
「え、そんなものでいいの??」
「ああ。たまに連絡するからその時はでろ」
「わかった!!ありがとう!!!アッッカクチョーくんも交換しよ!!」
「分かったから落ち着け。あと何で片言なんだ?」
その言葉は敢えて無視をし、嬉々と電話番号を交換し二人に別れを告げる。帰り際大通りを変えれよと言われ首を傾げながらも見送った。
「大変だったけどイザナくんとカクチョーくん優しかった「おいお嬢ちゃん」な?」
振り向くとぞろぞろと厳ついお兄さん達が周りを囲む。前もこの展開あったんですけど?となりつつ何のようですか?と聞く
「お前天竺と知り合いか?誰かの女か?」
「てんじく??」
てんじくって何??宗教団体??札も数珠も持ってないけど?意味もわからず突っ立っている私に苛立ったのか一人が腕を掴む。痛いと言うが聞いてくれる様子もなく引きずられる。折角いい気持ちで1日を終えると思ったのにこんなのはあんまりだ。マイキーくんに連絡したくてもこの状況で連絡したらもっと酷くなるだろう。どうしようと焦りがでると上から影が降ってきた。降ってきた???
「陽、伏せとけ」
ドォンと土煙をあげながらも目の前にいたのは先程見送ったイザナくん達だった。
ヒッッエという私の変な声に笑ったかと思うとそのまま集団に突っ込んでいく。そこからは空を舞うお兄さん達を呆然とみるしかなかった。
「悪いな巻き込んで」
「カクチョーくん…」
いつの間にか横にきていたカクチョーくんが腕大丈夫か?と聞いてくる。大丈夫と言うと同時に最後の一人を伸したのだろう、イザナくんが緩やかな足取りでこちらにくる
「鶴蝶、陽大丈夫だったか?」
「あぁちょっと跡がついてるが」
「ねえ」
「「?」」
「てんじくって何?」
私の呟きに二人顔を見合わせたかと思うとにんまりと笑って同じ目線に屈みこむ。
「天竺は横浜に拠点を置く暴走族だ」
「で、オレが総長で鶴蝶がNo2」
「は??そうちょう…??なんばーつー???」
「「仲良くしような、陽」」
「ううぅう…!!!」
また総長かよ!!てことはマイキーくんとも知り合いか!?って叫び膝をつく私に男二人の笑い声が響き渡った。
次回予告(嘘)
やめて!12年経っても亜紀の貢ぎ癖が収まらずむしろヒートアップして遂には島を買っちゃった!!ヤクをまだ決めてもないのにスクラップしそうになっちゃう!!
お願い、死なないで三途!!
あんたが今ここで倒れたら次のターゲットが灰谷兄弟になっちゃう!!
陽との連絡手段はまだ残っている。早く飼育員(陽)を連れ戻して!!
次回「三途死す」
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