本編
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次のシフト被りの日、途遥に元カノの話をした。
途遥は治が又聞きしたことに怒る素振りもなく、そうだよと肯定した。
「彼女に振った理由聞いたん?」
「……まぁ、うん。一応は」
いつもの朗らかな声色と違う、強ばった声だった。詳しく話さないあたり、その話題を広げたくないという気持ちが現れている。治はこの話がタブーであると察した。恐らく、マユは別れたことは聞けてもその理由までは突っ込んで聞けなかったのだろう。途遥の明確な拒絶は珍しい。
「ほぉん」
斜め下、窺った表情は変わらない。
察しの悪い人でなければここで切り上げるだろう。途遥も治がそこでやめるだろうと思って遠回しに断ったに違いない。だが、治はここでやめる気はない。マユより途遥のことを知っておきたいし、なにより忌々しい元カノが何を思って途遥を捨てたのか、途遥に何をしたのか知りたかった。
「それで、なんて言われたん? そもそもなにが原因やったん?」
続けられた質問に途遥は分かりやすく狼狽えた。悪いことをしている自覚はある。でも、言いたくないんなら言わんでええよ、とは言ってやらない。俺にやったら話してくれる、そういう確信めいた気持ちがあった。
夜風が吹いている。ぬるい風がしばらく頬を撫でていた。
途遥は観念したのか訥々と語った。
「えぇと……簡単に言うと、浮気、されてて、2人とも。なんでって聞いたら優しすぎてつまんない……って。その、話し合いの時に結構色々、言われちゃって。まぁ、同じこと言われるってことは僕が悪かったんだろうね」
は。なんやそれ。
治の想像を超える意味のわからない回答だった。眉を下げて無理やり作られた笑顔が弱々しい。
全身から沸騰するような激昂と殺意が込み上げてきた。
「あ゛ぁ!? 途遥くんが悪いわけないやろ!! 浮気した女が悪いんや! 途遥くんが彼氏で浮気するような豚は誰が彼氏になっても浮気するやろ!!」
怒りのままに叫んだ。憤懣を抑えられなかった。
「途遥くんは優しいのがええとこやろ。百歩譲って途遥くんとそいつが合わへんのやったら、ちゃんと別れてから他のやつと付き合うたらええ話やんか。それを浮気なんかして、途遥くん傷つけるようなこと言うて。その女がクソなだけや!」
ホンマに許せん。色々言われたって、何を言うたんや豚共は。話もしたくないほどってよっぽど酷いこと言うたんやろ。シバキ倒したい。
肩で息をする。こんなに怒鳴ったのは久しぶりだった。大声で吐き出したからか、さっきよりは冷静になった。
目の前の途遥は目を丸くしていた。
口を開けて固まっている様子に、頭が冷えるを通り越して血の気がひいた。途遥の前では可愛い子ぶって乱暴なところなど一切見せたことがなかったのだ。早く、言い訳をしないと。
「あんな、今のはちょっと怒りすぎただけやねん。やって浮気って最低やん? 想像したら腹立ってもうて……」
早口の弁解は笑い声に遮られた。
「……あははっ」
「途遥くん?」
「はは、あはは」
口元に手を当ててヒィヒィ爆笑している。ひとしきり笑い終わると笑いすぎて出た涙を拭った。
「はぁー、ごめん急に笑ったりして。治の言う通りだなって思ったら、引きずってた自分がおかしくて」
伏せたまつ毛の影が顔にかかっている。
「話し合いの時に、僕のどこがダメだったかまくし立てられて、浮気相手と散々比べられて、とにかくこっぴどく言われちゃってさ。それが頭から離れなくて、誰かに話しても僕のせいだって言われるのが怖くて、1人で考えてるうちに、やっぱり自分が悪いんだって思い込んでた」
微笑んだ途遥と目が合う。
「でも、治が怒ってくれて、スッキリした。1人で悩みすぎてたみたい。ありがとう」
からりとした笑顔に胸の奥がザワついた。直視出来ずに視線をずらす。
「浮気した挙句途遥くんが悪いって責任擦り付けるような女の言葉まで真面目に受け取るところは途遥くんらしいな」
「うぅん、褒められてない」
「嫌味や。元カノの逆ギレなんてさっさと忘れぇ」
「そうするよ」
伸びをして、そろそろ帰ろうと促される。
知りたかったことは知れた。途遥の悩みも晴れた。いい事づくめで今の気分はすこぶる爽快だ。
「治に話してよかった。僕のことで怒ってくれたの、嬉しかったから」
今度奢るよ、と手を振って分かれた。軽い足取りの後ろ姿に心からほっとする。
治は途遥に一歩近づいた気がした。
途遥は治が又聞きしたことに怒る素振りもなく、そうだよと肯定した。
「彼女に振った理由聞いたん?」
「……まぁ、うん。一応は」
いつもの朗らかな声色と違う、強ばった声だった。詳しく話さないあたり、その話題を広げたくないという気持ちが現れている。治はこの話がタブーであると察した。恐らく、マユは別れたことは聞けてもその理由までは突っ込んで聞けなかったのだろう。途遥の明確な拒絶は珍しい。
「ほぉん」
斜め下、窺った表情は変わらない。
察しの悪い人でなければここで切り上げるだろう。途遥も治がそこでやめるだろうと思って遠回しに断ったに違いない。だが、治はここでやめる気はない。マユより途遥のことを知っておきたいし、なにより忌々しい元カノが何を思って途遥を捨てたのか、途遥に何をしたのか知りたかった。
「それで、なんて言われたん? そもそもなにが原因やったん?」
続けられた質問に途遥は分かりやすく狼狽えた。悪いことをしている自覚はある。でも、言いたくないんなら言わんでええよ、とは言ってやらない。俺にやったら話してくれる、そういう確信めいた気持ちがあった。
夜風が吹いている。ぬるい風がしばらく頬を撫でていた。
途遥は観念したのか訥々と語った。
「えぇと……簡単に言うと、浮気、されてて、2人とも。なんでって聞いたら優しすぎてつまんない……って。その、話し合いの時に結構色々、言われちゃって。まぁ、同じこと言われるってことは僕が悪かったんだろうね」
は。なんやそれ。
治の想像を超える意味のわからない回答だった。眉を下げて無理やり作られた笑顔が弱々しい。
全身から沸騰するような激昂と殺意が込み上げてきた。
「あ゛ぁ!? 途遥くんが悪いわけないやろ!! 浮気した女が悪いんや! 途遥くんが彼氏で浮気するような豚は誰が彼氏になっても浮気するやろ!!」
怒りのままに叫んだ。憤懣を抑えられなかった。
「途遥くんは優しいのがええとこやろ。百歩譲って途遥くんとそいつが合わへんのやったら、ちゃんと別れてから他のやつと付き合うたらええ話やんか。それを浮気なんかして、途遥くん傷つけるようなこと言うて。その女がクソなだけや!」
ホンマに許せん。色々言われたって、何を言うたんや豚共は。話もしたくないほどってよっぽど酷いこと言うたんやろ。シバキ倒したい。
肩で息をする。こんなに怒鳴ったのは久しぶりだった。大声で吐き出したからか、さっきよりは冷静になった。
目の前の途遥は目を丸くしていた。
口を開けて固まっている様子に、頭が冷えるを通り越して血の気がひいた。途遥の前では可愛い子ぶって乱暴なところなど一切見せたことがなかったのだ。早く、言い訳をしないと。
「あんな、今のはちょっと怒りすぎただけやねん。やって浮気って最低やん? 想像したら腹立ってもうて……」
早口の弁解は笑い声に遮られた。
「……あははっ」
「途遥くん?」
「はは、あはは」
口元に手を当ててヒィヒィ爆笑している。ひとしきり笑い終わると笑いすぎて出た涙を拭った。
「はぁー、ごめん急に笑ったりして。治の言う通りだなって思ったら、引きずってた自分がおかしくて」
伏せたまつ毛の影が顔にかかっている。
「話し合いの時に、僕のどこがダメだったかまくし立てられて、浮気相手と散々比べられて、とにかくこっぴどく言われちゃってさ。それが頭から離れなくて、誰かに話しても僕のせいだって言われるのが怖くて、1人で考えてるうちに、やっぱり自分が悪いんだって思い込んでた」
微笑んだ途遥と目が合う。
「でも、治が怒ってくれて、スッキリした。1人で悩みすぎてたみたい。ありがとう」
からりとした笑顔に胸の奥がザワついた。直視出来ずに視線をずらす。
「浮気した挙句途遥くんが悪いって責任擦り付けるような女の言葉まで真面目に受け取るところは途遥くんらしいな」
「うぅん、褒められてない」
「嫌味や。元カノの逆ギレなんてさっさと忘れぇ」
「そうするよ」
伸びをして、そろそろ帰ろうと促される。
知りたかったことは知れた。途遥の悩みも晴れた。いい事づくめで今の気分はすこぶる爽快だ。
「治に話してよかった。僕のことで怒ってくれたの、嬉しかったから」
今度奢るよ、と手を振って分かれた。軽い足取りの後ろ姿に心からほっとする。
治は途遥に一歩近づいた気がした。
